北海道林業試験場研究報告-第33号-

(平成8年3月 発行)

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森林の景観施業に関する基礎的研究
-コンピュ-タグラフィックスによる樹形生成モデル-
(PDF,23.9MB)
p.1~43
鈴木悌司
本研究は,コンピュータグラフィックス技術を用いて樹木の成長や森林景観をリアルにしかも経時的立体的に画像化するシステムを開発し,森林の景観施業および線化計画の立案における視覚的評価にもとづく新しい計画手法に発展させることを考究した。針葉樹の樹形生成モデルについては,トドマツを事例にこれまでの報吉例や実測値を補完データとして,樹形を支配する枝の数と角度,樹高および直径成良,枝寿命等の形状要素を時間(樹齢)の関数として樹形生成モデルを考察した。各種のパラメータを時間(樹齢)により変化させることにより,樹齢増加に伴う形状変化をはじめ,多様な樹形が表現できることを示した。
また,広葉樹の樹形表現としてはホオノキを対象樹種として,成長部伐における光環境のシミュレーションモデルを考察し,受光量に応じた枝の伸長と枯死および直径成長など,光条件に対応した樹形生成のためのモデリングと単木形状の3次元表示を試みた。その結果,自然な技振りをもつ広葉樹の樹形表示が可能なことを示した。
一定の広がりをもつ森林景観表示として,多様な個体の生成とそれらを集合表示させた人工林の景観表示,針広混交比率を変えた天然林の表示,さらに季節変化などの森林景観のシミュレーションが可能であることを示した。また,街路および建造物への樹木の配置による植栽景観のシミュレーションを試み、いずれも自然的な画像が表現可能をことを示した。
数値情報に加えコンピュータグラフィックス技術を用いることにより,樹種や成長にともなう景観変化等が画像上で時間的・空間的に予測することができ,視覚情報を必要とする森林の景観施業や緑化計画の立案や閲発の手段を見いだすための大きな手がかりを得ることができた。

北海道南部山地渓流における流下昆虫の動態とサクラマス幼魚
(Oncorhynchus masou BREVOORT)の摂餌生態
(PDF,992KB)
p.44~59
柳井清治・寺沢和彦・永田光博
河川環境がサクラマス(Oncorhynchus masou BREVOORT)の生態に及ぼす影響を明らかにするため,主要な食糧源である流下昆虫の季節・時間的変化とサクラマス幼魚の胃内容物の関係を調べた。流下昆虫の季節的変化に関しては,5月,7月とも陸生昆虫の占める割合が80%と極めて高く,10月では水生昆虫が多かった。流下昆虫の内容は5月はハエ目(Diptera),アリ目(Hymenoptera),7月ではカメムシ目(Hemiptera)が大きな割合を占めた。流下密度は7月(1~3mg/m3)が最も多く,最も低い10月(0.04mg/m3)の25~75倍の量が流下した。サクラマスの摂餌内容は流下昆虫の組成をほぼ反映し,5,7月には陸生昆虫が80%近くを占め,その中でカメムシ(Hemiptera),甲虫目(Coleoptera)の占める割合が極めて高かった。しかし,10月には水生昆虫が60%を占め,とくにカゲロウ目(Ephemeroptera,コカゲロウ科Baetidae),トビケラ目(Trichoptera,ウルマーシマトビケラ Hydropsyche orientalis)幼虫の2種が大部分を占めた。
次に流下昆虫の時間的変化を10月に24時間とおして調べたところ,流下昆虫は夜間(0.5mg~0.9mg/m3)に多く流れ,昼間の流下量は夜間の1/3~1/10程度と少なかった。夜間を流下する昆虫は1/3程度がカゲロウ目昆虫で,明け方にはシマトビケラ科幼虫が多かった。サクラマスの胃内容物は昼間採取した個体から陸生,水生両方の昆虫類が認められたが,夜間採捕した個体からはカゲロウ,トビケラ,カワゲラ目などの水生昆虫類が殆どを占めた。以上から秋期には,サクラマス幼魚は夜間に多く水生昆虫類を摂食することがわかった。この理由として夏期は陸生昆虫が流下昆虫の中で大きな比重を占めるが秋以降低下するため,これに対応してサクラマス幼魚は採餌行動を変化させたと考えられた。

アカエゾマツ人工林の生育実態 (PDF,772KB) p.60~69
山田健四
アカエゾマツ人工林の生育実態を把握するために,全道440の調査地点で「アカエゾマツ人工林実態調査」が行われた。本研究ではこの調査データをもとに,アカエゾマツ人工林に発生している各種被害の状況,アカエゾマツの樹高成長経過の分析,地位指数曲線の作成,各調査地点の地位指数の分布状況と環境要因との関係の解析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。
・アカエゾマツ人工林での主要な被害は雪害と寒風害で,病虫獣害などはそれほど心配する必要はない。
・アカエゾマツの樹高成長経過を各種の成長関数にあてはめた結果,RICHARDSの関数で最もよく近似された。
・地位指数曲線を作成した結果,アカエゾマツは地位の高いところではトドマツに匹敵する良好な樹高成長をすることが分かった。
・日本海北部沿岸や道東の先端部に地位指数の低い地点が集中しており,雪害や寒風害の発生地域と重なってた。しかし,アカエゾマツの生育が不可能な地域は見られなかった。
・アカエゾマツの生育適地の条件として,土壌の透水性が良いこと,雪害や寒風害が起こりにくい場所であることがあげられた。

河畔林から川への落下昆虫とサクラマスの胃内容物の比較検討 (PDF,725KB) p.70~77
長坂 有・柳井清治・佐藤弘和
河畔林の存在効果を魚類への餌供給面から評価するため,代表的な河畔林である,ケヤマハンノキ林,ヤナギ林下の落下昆虫を調べた。同時に林内の河川に生息するサクラマス幼魚の胃内容物を調べ,餌昆虫との対応関係を検討した。落下昆虫の総量はケヤマハンノキ林で河畔林のない対照区よりも多かったが,ヤナギ林では有意な差はなかった。サクラマス幼魚の胃内容物は季節,林相によって異なり,胃内容物中に占める陸生昆虫の割合は3~4割であった。陸生昆虫の中ではガの幼虫を多く摂食しており,これを多く供給しているのはヤナギ林であった。餌量の面から考えると,水生昆虫の方が主要であるが,陸生の餌供給に及ぼす河畔林の重要性が示唆された。


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