北海道林業試験場研究報告-第34号-

(平成9年3月 発行)

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ブナの種子生産特性とその天然林施業への応用に関する研究 (PDF,1.58MB) p.1~58
寺澤和彦
北海道南部地域において,ブナ(Fagus crenata BLUME)の開花フェノロジー,花粉飛散,受粉形態と種子形成,および落下堅果の量と品質の年変動について調べ,その結果をもとに,ブナの天然林施業における更新技術を改善するための方策について論議と提案を行った。
開花フェノロジーは,3個体について冬芽単位で調査した。3月以降の0℃より高い日平均気温を積算した温度を積算気温と定義すると,混芽の約半数が開芽する時期,受容性を有すると考えられる雌花序が現れる時期,雌花序の約9割が受容性をもち雄花序の約8割が花粉飛散を行う時期,さらにほとんどの雌花序の柱頭と雄花序がしおれる時期は,それぞれ120~160℃,220~240℃,約290℃,および340~400℃であった。いずれの個体でも個体内で雌性先熟の傾向がみられたが,ほとんどの雌花序は,柱頭が受容性をもっている期間中に同じ個体内の雄花序からの花粉飛散を経験し,自家受粉の可能性をもっていた。
花粉飛散については,着花したブナ孤立木の周囲における飛来花粉数を調べた。主風風下側における花粉源からの距離と飛来花粉数の関係はべき乗式でよく近似できた。そのべき乗式と拡散による浮遊微小粒子の濃度減少を表すSUTTONの式を用いて,花粉源の風下側の平面上における飛来花粉数分布を再現し,仮想的林分における母樹間距離と飛来花粉数の関係を求めた。
人工受粉試験を行い,他家受粉,自家受粉,無受粉など受粉形態の違いがブナ堅果の成熟過程における生残,稔性,形質に及ぼす影響を明らかにした。開花から果実成熟までの期間における殻斗果の枝上での生残率は85%以上と高く,受粉形態の違いによる差は認められなかった。自家受粉によって堅果の稔性は低下し,充実堅果が形成される比率は10%以下であった。無受粉においても殻斗と果皮は正常に発達し,単為結果することが確かめられた。
ブナ天然林5ヵ所において,開花終了時期からの堅果の落下量と品質を1990年から1993年までの4年間にわたって調べた。落下堅果総数に大きな年変動がみられた。堅果の発達過程では,主にガの幼虫によるとみられる堅果の捕食が堅果生産に関わる要因として重要であった。虫害堅果の多くは8月下旬までに未熟落下した。落下堅果総数に対する虫害堅果の比率は年によってことなり,落下堅果が少ない年を経過した後に落下堅果の多い年を迎えた場合には,虫害堅果の比率が低く充実堅果が多く生産される傾向がみられた。落下堅果総数は,1990年には調査地による差が大きかったが,1991~1993年には調査地間でほぼ同調して変動した。落下堅果総数と前年の夏の気温,降水量,蒸発散能/降水量比との間に明瞭な関係はみられなかった。
単位枝長あたりの冬芽に含まれる雌花序数から翌年の結実予測を行う手順を提案した。枝長50cmあたりの雌花序数が平均14個以上あれば,更新に必要と考えられる200個/㎡の充実堅果が生産される確立が高い。枝長50cmあたりの雌花序数が平均8個に満たなければ充実堅果はほとんど生産されないが,更新のためには不十分な数しか生産されないと考えられた。母樹の保残によって天然更新を図る場合の保残母樹の必要密度について,受粉面から検討を加えた。20本/ha以上の母樹密度があれば,十分な量の開花があった年には受粉上の問題による極端な堅果の品質の低下は起こらないと考えられた。

衛星リモ-トセンシング技術による針葉樹人工林の
樹冠疎密度の推定に関する研究
(PDF,1.62MB)
p.59~96
加藤正人
研究の目的は衛星リモートセンシング技術を用いて,トドマツ,カラマツ,エゾマツの北海道の主たる針葉樹人工林の樹冠疎密度を推定する手法を開発し,疎密度区分画像を作成することである。本研究には次の手法の検定および開発が含まれる。衛星データから樹冠疎密度を精度良く求めるために,(1)幾何補正,(2)ラジオメトリック及び大気補正,(3)隣接画素の削除とフィルタリングによるノイズ除去などの前処理方法について最適な補正方法を統計的に検定・選択し,(4)最適な解析手法をもとにモデルを求め,疎密度区分画像を作成する。
地上参照データは空中写真のデジタル解析から求め,衛星画像の座標系と対応するようにUTM座標に変換し,衛星データの最小区画(30m×30m)ごとに疎密度を算出した。解析に使用したTMデータは1990年の春先の3シーンである。空中写真のデジタル解析から導かれた針葉樹の樹冠疎密度とTMバンドの反射輝度値および植生指数の関係を調べ、最適な手法を検討した。その結果,改良した手法からr2≧0.75の高い相関関係を得て,モデル化した。それぞれのシーンについて最適な回帰式を使い,樹冠疎密度の区分画像を作成した。開発した手法をもとに道立林業試験場研究林(約8000ha)の林分について,トドマツ人工林の疎密度区分図(5万分の1)を作成した。本研究の結果は,針葉樹人工林の資源の管理や計画に衛星データが有効であることを示した。

 防風効果を考慮した防風林の間伐に関する研究-風洞実験の結果より- (PDF,1.34MB) p.97~102
鳥田宏行・福地 稔
防風林の間伐に際して,防風効果を左右する要素を調べるため,林帯の模型を用いて風洞実験を行った。林帯の模型には樹木の代わりにブラシ(幅2.5cm,高さ7.5cm,馬毛)を用い,立木密度,密閉度の違う6つの模型林帯を作製し,それぞれの風速分布特性を調べた。その結果,密閉度が同じならば,立木密度が違っても,ほぼ同様な風速分布特性を示し,密閉度が防風効果に大きく影響を及ぼしていることが判明した。また,風速分布特性と密閉度の関係では,密閉度が高すぎると,風下林縁近くでは極端に風が弱まるものの,その後の風速の回復が早く,防風範囲は狭くなった。本実験と過去の研究結果を考え合わせると,広範囲の防風域を確保するには,密閉は,50~70%程度が有効であると推察される。


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