北海道林業試験場研究報告-第35号-

(平成10年3月 発行)

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北海道南部沿岸山地流域における伐採が
渓流の土砂および有機物の流出に及ぼす影響
(PDF,2.57MB)
p.1~10
柳井清治・寺沢和彦
近年,河川や海域に生息する魚介類や海藻類に対する森林の影響に関して,水産業界から大きな関心をもたれるようになり,北海道内では各地の漁業協同組合による植林運動が積極的に展開されてきている。森林から生産される有機物は川に生息する水生昆虫類や海に住む生物の栄養源になる(Naiman and Siebert,1978)とされるが,一方で林業生産や農地開発に伴って多量の土砂が流出し,沿岸域の水産資源に被害を及ぼす場合もある。したがってバランスのとれた森林・土地利用法の確立が急務であるが,これまで森林と海を結びつけた研究はほとんど行われてこなかったのが現状である。
山地流域の森林は,一般的に天然林,針葉樹造林地や伐採地など様々な形態の森林から構成されている。こうした林相を反映して渓流への土砂や有機物の流出量も変化する。たとえば広葉樹林内では毎年多量の落葉が生産されており,これらが河川に供給され水生生物に利用されるが,森林を伐採することによって落葉の生産量や貯留量に大きな変化が生じる(Hartman and Scrivener,1990)。また伐採地には搬出の際トラクター路が多く作られ,これらが土砂の供給源となって渓流の水質を悪化させることが多く報告されている(Brown and Krggier,1971;Beschta,1978;北田,1986)。しかし森林からの土砂・有機物流出が海域に与える影響に関して,流域全体で調査した例はわが国では極めて少ない(柳井・寺沢,1995)。
そこで本報告は,山地流域において森林の取り扱いが渓流への土砂や有機物の流出に与える影響を明らかにするため,小支流で伐採前後で水に含まれる異なる粒径の物質濃度測定を行い,さらに流域全体の土砂・有機物の流出過程を検討した。この結果から,渓流への土砂流出に及ぼす影響を軽減させる森林の取り扱いについて考察を行った。

北海道北部の天然生カシワ海岸林の現存量および純生産量 (PDF,1.63MB) p.11~19
浅井達弘・眞坂一彦
北海道北部の日本海側の天然生カシワ海岸林で径級の異なる10本の幹を伐倒して,幹,枝,当年枝,枯死枝,葉の各部分重量を測定した。葉量(WL)と当年枝量(WBN)は胸高直径の2乗(D2)と,他の量は胸高直径の2乗と樹長との積(D2L)との間にそれぞれ有意な相対成長関係が得られた。これらの回帰式と調査区(30m×30m)内のカシワの胸高直径と樹長のデータから各部分の現存量を推定した。
調査林分の葉量は2.7ton/ha,枝量は14.4ton/ha,幹量は28.1ton/haとそれぞれ推定された。また,この1年間の地上部の純生産量は4.3ton/haと推定された。これらの値から,この海岸林のカシワは生産量の大半を葉と当年生枝(0.8ton/ha)に配分することで生存を維持し,良好な成長が可能になる温和な年に備えているように思える。

樹冠下のかき起こしによる多様な樹種の更新(1)
-種子散布から実生定着までの過程-
(PDF,2.10MB)
p.21~30
佐藤 創
かき起し後の数樹種の天然更新過程を明らかにするために北海道北部の針広混交林内で6月と9 月にかき起しを行い,ダケカンバ,トドマツ,エゾマツ,ミズナラ,ハリギリ,ミズキ,ナナカマド,キハダの8種を対象にして,4年間の種子落下,実生の発生,定着,成長について調査を行った。ダケカンバの母樹の胸高断面積合計は8種の23%であったが,同種の落下種子数は,8種の88%を占めた。8種とも種子数は1年ごとに多い少ないを繰り返す変動パターンを示した。実生の発生はダケカンバ,トドマツ,エゾマツ,ミズナラでは前年の種子に由来していたが,ハリギリでは前々年の,ミズキとナナカマドでは前年と前々年の種子に由来していた。キハダはかき起し直後に埋土種子に由来して発芽した。落下種子数に対する発生当年秋の実生数の割合は,樹種により1%~6%であった。ダケカンバの落下種子数が多かったことにより,かき起し4年目秋の個体数はダケカンバが8種の87%を占めた。発生当年秋の実生数の1年後~3年後の生残率については,トドマツ,ナナカマド,キハダが高く,ダケカンバ,ミズキが中程度で,工ゾマツは低かった。発生してからかき起し4年目までの材積成長量は,6月のかき起し当年に発生した実生間では,ダケカンバがキハダよりも大きく,かき起し2年目以降に発生した同齢実生間ではミズナラ,ミズキ,ナナカマドはダケカンバよりも大きく,トドマツ,エゾマツ,キハダばダケカンバよりも小さたった。
各樹種の種子の豊凶ならびに散布特性,発芽習性,光に対する生育特性などから,以下のことが結論づけられた。(1)かき起し後にはダケカンバの実生個体数が多く,成長速度も速いため,バイオマスが最も多くなりやすい。(2)キハダは表土を残したかき起しによリ,ダケカンバに次ぐバイオマスが期待できる。(3)相対光合成有効放射28%の下ではトドマツ,ミズナラ,ハリギリ,ミズキ,ナナカマドなどはダケカンバの被陰下で生育する。(4)エゾマツは,かき起しで定着を期待するのは難しい。

落葉広葉樹35種の結実豊凶に関する資料 (PDF,818KB) p.31~41
滝谷美香・水井憲雄・寺澤和彦・梅木 清
水井(1991,1993)は,落葉広葉樹30-35種について,個体レベルでの結実の豊凶を5~11年にわたって調査した。その結果から全樹種に共通する結実の豊凶評価基準の提案及び各樹種の豊凶特性の類型化を試みた。
ここでは,水井(1991,1993)が報告した1991年までの単位枝長当たりの種子生産量の資料に加え,1992年以降継続して調査された1996年までの種子生産量を示す。また,1987年以降,一樹種の試料数を増やすために,追加して調査されてきた個体の種子生産量の資料を加えて報告する。これらの結果を元に,水井(1991)の方法によって各樹種の結実豊凶のための評価基準を示した。


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