北海道林業試験場研究報告-第36号-

(平成11年3月 発行)

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茎頂培養法によるチシマザクラ優良個体の大量増殖 (PDF,761KB) p.1~9
佐藤孝夫
茎頂培養法によるチシマザクラ優良個体からの大量増殖方法について検討した。材料には根室市内の16個体と幌加内町の6個体,計22個体を用い,1994から1996年のいずれも2月に採取した各個体の休眠芽から無菌的に茎頂を取り出し,寒天培地で培養した。その結果,初代培養における増殖率は0~5.2倍で,22個体中21個体で茎頂からシュートが形成された。また,継代培養では10倍以上の高い増殖率を示したものが5個体あり,2倍以上の増殖率が2回以上あった個体は15個体で,これらの個体では継代培養を繰り返すことにより大量増殖が可能であることがわかった。
また,初代培養では成長調節物質としてインドール酪酸(IBA)0.1mg/l,6-ベンジルアミノプリン(BAP)1~4mg/l,ジベレリン(GA3)4mg/l を添加した Woody Plant Medium(WPM)で1カ月間培養後に,BAPの濃度だけを0.5~1mg/l に減じた培地に移植し,継代培養ではIBA0.1mg/l,BAP0.5~1mg/l,GA34mgを添加したWPMで2週間培養後に,BAPの濃度だけを0.25~0.5mg/lに減じた培地に移植すると増殖率が高いことが明らかになった。しかし,増殖率の高いBAP濃度は個体によって異なっており,各個体毎に増殖率の高いBAPの濃度を検索する必要があった。

カラマツ属の成木シュート頂と成熟胚からの苗条原基誘導 (PDF,1.73MB) p.11~20
錦織正智
グイマツ雑種F成木(Larix gmelinii×L.leptolepis)から苗条原基の誘導を目的に,外植体の採取時期と培地組成を検討し,同時に誘導した苗条原基の長期継代の可能性について調査をおこなった。苗条原基の誘導には品種グリームを用い,当年枝のシュート頂を外植体とした。材料の採取は1995年12月から1996年12月まで毎月おこなった。誘導条件は温度25℃,連続照明下での回転培養(5rpm)とし,Schenk and Hildebrandt(SH)液体培地を基本培地に用い,培地中の6-Benzylaminopurine(BA)とα-Naphthalenencetic Acid(NAA)の組み合わせを変えた。その結果,12~2月に採取した外植体から,BA0.2mg/lのみの条件で効率よく苗条原基を誘導することができ,800日以上の継代を維持した。
また苗条原基誘導と外植体の齢との関係を明らかにすることを目的に,グイマツ接木クローン(L.gmelinii)系統を対象に,成木シュート頂と成熟胚から苗条原基の誘導を試みた。シュート頂と成熟胚の両者から誘導できたのは1系統で,残りは何れか一方でのみ誘導することができた。またシュート頂に由来する苗条原基から分化させた不定芽は,成熟胚からのものに比べて発根までに長期間を要した。

広葉樹林流域における渓流流出特性に関する研究 (PDF,1.98MB) p.21~36
佐藤弘和
広葉樹林流域(面積9.2ha)における渓流流出特性(降雨流出,融雪流出,基底流出)を明らかにするために,北海道中央部に位置する光珠内実験林内で野外観測を1993~1997年に行った。年降水量は1,067~1,250mmの範囲をとり,1996年の年流出量は1,299mmであった。融雪期である3~5月と降雨期である7~11月には,明瞭なピークを伴う増水が頻繁に発生した。年間流出量の季節配分率は融雪期(1996年3~5月)で高く,71%を示した。降雨流出に関して,ピーク流量はそれまでに降った雨量が多いほど高くなった。増水開始から流量ピークに達するまでの時間は,それまでの降雨継続時間が長い場合,もしくはそれまでの積算雨量が多い場合ほど長くなった。さらに流域が湿潤なほどピーク流量は多く,ピーク流量までに達する時間は短くなる傾向を示した。融雪流出に関して,渓流水温によるハイドログラフの分離結果から,地中流出成分が融雪流出の大部分を占めていたことが判った。基底流出に関して,夏期渇水期の基底流出は明瞭な日変化を示しているが,冬期渇水期では日変化が見られなかった。さらに減水係数は冬期より夏期の値が高かった。降雨流出と融雪流出の特徴から,透水性の良い森林土壌が降水の大部分を浸透させ,洪水抑制効果をもつ地中流出成分に変換することが判った。基底流出特性から,冬期に比べ夏期には森林の蒸発散が基底流出に影響を与えていることが示された。

樹冠下のかき起しによる多様な樹種の更新(2)
-林冠開放度と種多様性の関係-
(PDF,1.80MB)
p.37~46
佐藤 創
ダケカンバのみではなく多様な樹種の更新方法を明らかにするために,樹冠下やギャップなどの林冠の開放度が異なるかき起し地で,かき起しから3年間,樹種ごとの更新過程を調べた。ミズナラ,ハリギリ,ミズキ,ナナカマドなどの動物散布種子は林冠開放度が小さいほど落下種子は増加した。逆にダケカンバ,トドマツなどの風散布種子は林冠開放度に関わらず種子が落下した。かき起し1年後までに発生した実生間では相対光合成有効放射(%PAR)20%以下では,ダケカンバの成長と生残の両方から評価した更新成績はキハダやトドマツに比べて劣っていたが,20%以上ではダケカンバの更新成績はキハダやトドマツに優っていた。かき起し2年後に発生した実生間では%PAR40%以下でミズナラの更新成績がダケカンバに比べて優っていた。かき起し3年後の生残個体のうち材積で上位を占める個体のうち,キハダ,ミズナラ,ナナカマドなどダケカンバ以外の材積割合は%PARと負の相関関係があり,%PAR30%以下ではダケカンバ以外の材積割合が0.5を超える方形区が増加した。ダケカンバの落下種子密度が少ない場所では多い場所に比べて,ダケカンバ以外の多様な樹種の更新が見られた。
以上のことから多様な樹種の更新を促進するには,(1)林冠開放度が低い樹冠下または(2)ダケカンバの落下種子が少ない樹冠下でかき起しを行う必要があることが明らかになった。既往の文献も併せて,それらの条件を定量化することを試みた。


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