北海道林業試験場研究報告-第37号-

(平成12年3月 発行)

第1号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号 第7号 第8号 第9号 第10号
第11号 第12号 第13号 第14号 第15号
第15号別刊
第16号 第17号 第18号 第19号 第20号
第21号 第22号 第23号 第24号 第25号 第26号 第27号 第28号 第29号 第30号
第31号 第32号 第33号 第34号 第35号 第36号 第37号 第38号 第39号 第40号
第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

1977年有珠山噴火による降灰が森林に及ぼした影響(1)
-噴出物および埋没土壌の化学性の経時変化-
(PDF,744KB)
p.1~9
佐藤 創・寺澤和彦・長坂晶子・菊地 健
林床に堆積した1977年有珠山噴火による噴出物および埋没土壌の化学性を,噴火から毎年5年間と21年後に調査した。調査地の噴出物の厚さは10~35cmであった。噴出物の水溶性塩基類濃度は噴火直後あるいは1年後に最大に達し,その後数年間は減少した後,一定で推移したが,表層部分の水溶性塩基類濃度は5年後から21年後にかけて大きく増加した。埋没土壌の水溶性塩基濃度は当初5年間は減少したが,21年後にかけて増加した。噴出物の水溶性塩基濃度は当初Na>Ca>Mg>Kの順であった。各成分は上層から下層へ移動したが,その移動速度はNaが最も速かった。噴出物の置換性塩基類濃度は水溶性塩基に似た変化を示したが,より緩やかであった。埋没土壌の置換性塩基類濃度は噴火後やや増加する傾向があったが,5年後から21年後にかけては減少した。噴出物の置換性塩基濃度は当初Ca>Na>Mg>Kの順で,下層への移動速度はNaが最も速かった。噴出物のPHは当初6.8~7.7の弱アルカリ性であったが,5年後にかけて5.9~6.9に低下し,21年後も似た値を示した。噴出物の炭素量は5年後までは少なかったが,21年後には表層で大幅に増加した。土壌への炭素集積速度は0.495~2.557t/ha/yrと推定された。

1977年有珠山噴火による降灰が森林に及ぼした影響(2)
-樹木の肥大成長と幹の形態-
(PDF,940KB)
p.11~25
寺澤和彦・梅木 清・八坂通泰
1977年有珠山噴火にともなう降灰によって被害を受けたトドマツおよびカラマツの人工林5カ所と広葉樹二次林1カ所において,噴火前から噴火後21年目までの樹木の肥大成長経過を年輪解析によって明らかにするとともに,降灰の影響とみられる幹の異常形態を調査した。
噴火当年の幹の肥大成長は,トドマツとカラマツではそれより前の期間の成長と比べて差がみとめられなかったが,広葉樹二次林のミズナラ,オニグルミ,キハダではそれより前5年間の成長に比べて22~29%低下した。噴火翌年の1978年における肥大成長は,カラマツと広葉樹3種で著しく低下した。この年の年輪幅は,カラマツでは1977年以前の4~5年間の平均年輪幅の26~38%,広葉樹3種では22~48%であった。カラマツの肥大成長は噴火後3年間にわたって低いままで推移した後,1981年以降に回復する傾向を示した。広葉樹3種の回復過程には樹種による違いがみられ,ミズナラでは噴火3年後まで,オニグルミでは噴火8年後まで,キハダでは噴火2年後まで低い成長で推移した。トドマツでは,噴火翌年およびそれ以降の期間についても肥大成長の低下はみとめられなかった。
東関内A調査地のトドマツとカラマツおよび泉調査地におけるミズナラでは,噴火から数年以上経過してから,噴火以前に比べて肥大成長が良好になる時期がみとめられた。年輪幅指数で0.10~0.75の良好な成長を示す時期は8~14年間にわたり,噴火から15年以上経った1990年代の前半まで継続した。
火山噴出物の降下の影響とみられる幹の異常形態は,噴火当時に9年生であった月浦調査地のカラマツで最も顕著にみられ,全体の90%の個体では幹が約4mの高さで2~5本に分岐して多幹となっていた。噴火当時29年生であった大平調査地のカラマツでは,小さな胸高直径階に属する個体において梢端部に複梢がみられこれらの個体ではそれ以上の高さでの樹高成長が著しく阻害されているのが観察された。噴火時に20年生および12年生であった東関内Aおよび東関内Bのトドマツ林では,噴火から22年を経過した現在,噴出物の降下による幹被害の痕跡はきわめて軽微であった。

ハウチワカエデの雌雄異熟性 (PDF,561KB) p.27~40
浅井達弘
1986年から1990年の開花期に北海道立林業試験場(美唄市)の樹木園と実験林でハウチワカエデの開花の様子を経時的に観察した。ハウチワカエデには,雄花の開花後に雌花が開花する雄花先熱花序と,雌花の開花後に雄花が開花する雌花先熱花序および雄花のみが開花する雄花序が存在した。実験林の95個体の調査では,雄花先熟花序のみからなる雄花先熱個体,雌花先熱花序のみからなる雌花先熱個体,雄花序のみからなる雄個体の他に,雄花序と雄花先熱花序の混在個体および雄花先熱花序と雌花先熱花序の混在個体が存在した。雄個体や2種類の花序の混在個体は少なく,大半は雄花先熟個体(47個体)と雌花先熱個体(43個体)であった。このような種内での雄花先熟個体と雌花先熱個体の混在は雌雄異熱(dichogamy)の一つの頂点とされHeterodichogamyと呼ばれている。雄花先熱個体と雌花先熱個体の間に,サイズ(胸高直径)の有意差は認められなかった。また,毎年,観察個体の3.4~5.6%の個体が,4年間では8個体(9.0%)が性表現を変えていた。雄個体やサイズの小さい個体が性表現を変える傾向がみられた。
雌花先熱個体の種子は雄花先熱個体の種子よりも有意に重く,発芽率は有意に高かった。他の条件が同じであると仮定して生残する子供の数(適応度)を比較すると,雌花先熱個体の種子(雌花)の方が雄花先熱個体のものよりも多い(高い)と考えられる。雄花と雌花の開花が雄花先熟個体と雌花先熱個体の間では時間的に逆になることから,同じ開花順序の個体間の交配が妨げられ、異なる開花順序の個体間の交配が促進されると考える。すなわち,雄花先熱個体の雄花は適応度の高い雌花先熱個体の雌花との交配が促進されることから,雄花の適応度は雄花先熱個体の方が雌花先熟個体よりも高いと考えられる。これらのことは,雌花先熱個体はより雌花に投資し,雄花先熱個体はより雄花に投資する方向への進化を促し,ついには雌雄異株への進化を示唆するものと考える。

施業・環境因子による野ネズミ被害の数値予測 (PDF,142KB) p.41~49
中田圭亮・佐々木満・松尾 巌
野ネズミによる造林地の本数被害率を数値的に予測するため,北海道の一般民有林を対象にして施業因子と環境因子を2年度にわたって解析した。野ネズミ被害に関与する主要な因子を抽出したところ,それらは林齢,過去被害,樹種,粗朶枝条,隣接地,造林林種,下刈り,地形であった。これら因子のうち,前4者は2年度にわたって共通しており,影響度も比較的高かった。とくに偏相関係数が高かったのは,林齢と過去被害であった。隣接地の因子が第3位の影響度を示した1998年度の分析では,林木を加害するエゾヤチネズミの生息数が当該年度に多く,被害地の周辺林地に生息したエゾヤチネズミの影響が強く表出したものと考えられる。林分の本数被害率に対する施業・環境条件の重相関係数は6因子で0.701ないし0.709と比較的高く,施業・環境因子によって被害率の予測が相当程度に可能であることを示した。

乾燥処理によるブナ堅果の長期貯蔵方法 (PDF,91.6KB) p.51~57
小山浩正・寺澤和彦・八坂通泰
ブナ(Fagus crenata BL.)の堅果を長期貯蔵できる方法を探るために,4種類の処理(乾燥処理,アルギン酸ナトリウムによるコーティング処理,低温湿層処理+乾燥処理,および無処理)を行い,温度2℃,相対湿度40%で貯蔵した堅果の発芽率の推移を観察した。低温湿層+乾燥処理は貯蔵0年ですでに発芽率が落ちていた。無処理の堅果は1年,コーティング処理の堅果は2年で発芽力を失っていた。これに対して,堅果を含水率8%まで落とした乾燥処理を行うと,2年間は発芽率が落ちなかった。3年目にも発芽した堅果はあったが発芽率はかなり落ちていた。2年間の貯蔵はこれまで報告されているブナ堅果の貯蔵期間としては最も長い。従来,ブナ堅果は含水率が高いため,乾燥すると死滅するタイプの種子(recalcitrant)とされていたが,今回の試験結果は低温下で低い含水率を維持すると貯蔵できるタイプの種子(orthodox)であることが示唆された。2年の貯蔵期間は実用的にも十分耐えうる。

カラマツ長伐期施業のための間伐方法 (PDF,1.65MB) p.59~66
明石信廣
北海道十勝管内新得町の32年生カラマツ林に間伐強度の異なる3つの試験区(A区:材積間伐率45%,B区:材積間伐率13%,C区:無間伐,各0.12ha)を設定し,26年間の成長を調査した。さらに,A区では41年生時に材積間伐率14%,B区では48年生時に材積間伐率29%の間伐が実施された。58年生時における各区の上位300本/haの材積はA区が最も大きかったが,A区で上位300本に含まれる下限の胸高直径はB区,C区よりも小さかった。これは,強度間伐によって初期に目標に近い本数にすることによって,当初の胸高直径が小さい個体を残すことになったためである。このことを考慮すれば,高齢林分で主伐時の収穫量を大きくするには下層間伐が有効である。また,32年生林分の強度間伐は,個体の直径成長を促進させる効果は認められたが,若齢林分に比べて間伐後の林分成長量の回復が難しく,A区の胸高直径30cm以上の材積は,B区において48年生時の間伐を実施しなかった場合の予測値とほぼ同じであった。したがって,弱度間伐と強度間伐では間伐効果に大きな違いがあったとは言えない。

北海道におけるカンバ類とヤチダモの主要害虫および被害対策(資料) (PDF,318KB) p.67~74
原 秀穂
北海道ではカンバ類の主要害虫が10種,ヤチダモの主要害虫が6種確認されている。これら16種の生態について解説するとともに被害対策を取りまとめる。


ページのトップへ