北海道林業試験場研究報告-第39号-

(平成14年3月 発行)

第1号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号 第7号 第8号 第9号 第10号
第11号 第12号 第13号 第14号 第15号
第15号別刊
第16号 第17号 第18号 第19号 第20号
第21号 第22号 第23号 第24号 第25号 第26号 第27号 第28号 第29号 第30号
第31号 第32号 第33号 第34号 第35号 第36号 第37号 第38号 第39号 第40号
第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

シラカンバの発芽フェノロジーと適応戦略としての意義 (PDF,733KB) p.1~38
小山浩正
環境変動の激しい裸地を更新立地としている先駆種では,種子の発芽期において,確実な定着を保証する適応戦略が存在すると予想される。本論の目的は,北海道で最も典型的な先駆樹種のひとつであるシラカンバ(Betula platyphylla var.japonica)を研究材料として,その発芽の適応戦略を明らかにすることである。かき起こし地におけるシラカンバの発芽を3年間観察し,同種の発芽フェノロジーを調べた。シラカンバは当年に散布された種子集団がその年の秋と翌年の春に分離して発芽していることが明らかになった。秋に発芽した実生の定着成功は,発芽後の冬期の死亡率の年変動に依存しており,この期間の死亡率が低い年には春発芽より大きな個体サイズまで成長していた。しかし,冬期の環境が厳しく死亡率が高い年には,春発芽の実生の方が定着に有利になっていた。したがって,シラカンバは発芽季節を2つに分散することで,冬期環境の変動に関わらず,どちらかの実生が確実に定着する「両賭け戦略」を行っていると考えられる。この発芽季節の分離を実現する生理的メカニズムとして,特定の発芽低温限界温度を持つ(相対休眠の)種子を長期間に渡って散布する性質が関わっていた。すなわち,種子散布期の前半に散布した種子は当年秋に発芽し,後半に散布した種子は休眠により越冬し,翌春に発芽していた。また,発芽季節の分離の進化について,数理モデルを考案して理論的検討を行った結果,発生頻度が低い大規模撹乱に更新を依存する短命な先?樹種では,繁殖期間中に更新機会(裸地)が提供される回数が限定されているので,発芽時期の分散による両賭け戦略は,多年生植物でも適応的な形質であることが明らかになった。この数理モデルは,シラカンバの秋発芽と春発芽の最適比が地理的な変異を示すことも予測したが,北海道内の5地点(大沼・美唄・幌加内・中川・帯広)の天然林で種子採取した種子の発芽温度反応を調べた結果,自然条件における秋発芽と春発芽の比率は地理的な変異を示し,冬期の環境条件がより厳しい地域ほど春発芽の割合が高いことが示唆された。最適化モデルにより予測した地理変異が発芽の温度反応として実際に検証されたことは,野外調査により観察された発芽フェノロジーが,種子の発芽生理機構の変化を介して各立地の環境に適応してきた進化的産物であることの実証となる。これらのことから,先駆樹種であるシラカンバは「小型多産」の種子散布戦略だけではなく,生育場所の環境に合わせた比率で発芽季節を分離させる両賭け戦略により,環境変動の激しい裸地における更新を確実にしていると結論できる。

ハマナスを主としたバラ属9種の相互交雑によるF1の育成と特性 (PDF,1.07MB) p.39~54
滝谷美香・今 博計
ハマナスを主とするバラ属9種を用いて1991年に相互交雑を行い,これら38組合せの種内及び種間交雑種の育成及び特性調査を行ってきた。交雑試験の結果,ハマナス類(ハマナス,シロバナハマナス,ヤエハマナス,シロバナヤエハマナス)の相互交雑種からは,花弁の色,形,樹形等,目立った特徴を有するものは得られなかった。ヤエハマナス×ノイバラでは,樹形が矮生で花がハマナスに比較して小さく,花弁がピンク色の雑種を得た。ヤマハマナス×ノイバラでは,樹形は大きく枝は半蔓性で,開花最盛期には樹冠表面に占める花の割合が高く,鑑賞性の高い雑種を得ることができた。また,ルブリフォリアバラを交雑親とした場合には,ハマナスやノイバラからは得られなかった鮮やかな紅色の花弁の雑種を得ることができた。これらの雑種は,新しい北海道の緑化材料として有望であると考えられる。

ウダイカンバ二次林での間伐効果と樹冠衰退 (PDF,441KB) p.55~68
渡辺一郎・寺澤和彦・八坂通泰・梅木 清
林齢約70年生の山火再生林由来のウダイカンバ二次林に対して実施した間伐の15年後における効果と,樹冠衰退木の発生状況について調査した。間伐試験は,材積間伐率で,弱度間伐(10.2%),中度間伐(25.5%),強度間伐(46.8%)の3段階の強度で実施した。
林分純成長量は,間伐前(1971~1983年)に比べて,間伐後(1985~1999年)の方が小さかった。枯損量は間伐前後でそれほど変わらず,粗成長量が小さくなった。間伐後の直径成長量は強度間伐区で最も大きかったが,年平均成長量は0.14㎝と小さかった。枯死木の発生数が間伐により減少したにもかかわらず,枯損量が間伐前後で変わらないのは,間伐後に平均直径以上の個体の枯死が増えたためだと考えられた。
これらのことから,林齢約70年生のウダイカンバ二次林へ対する間伐効果は小さいと考えられた。
本林分では,1999年の調査時にウダイカンバの枝が梢端部から枯れてゆく樹冠部の衰退が観察された。樹冠衰退木は,全体の8割を占めた。樹冠衰退木の発生頻度は,間伐強度と無関係であった。樹冠衰退木の直径成長量の低下は,間伐年以前より現れており,1985~1999年の間に明瞭になった。樹冠衰退の発生原因は明らかではないが,現時点で樹冠の衰退が顕在化している個体は,症状が現れる以前より成長量が低下していることから,樹冠の衰退を引き起こすような条件(病虫害,気象害など)により,成長量の小さい個体から衰退が発現したものと推測される。

若いアカエゾマツ人工林における除間伐後のヤツバキクイムシ被害の発生状況 (PDF,476KB) p.69~74
原 秀穂・林 直孝
1996~2000年にアカエゾマツ人工林(19~40年生,胸高直径10~16㎝)で除間伐後のヤツバキクイムシの生立木被害状況を調査した。無作為に選んだ32林分のうち,26林分でヤツバキクイムシの生息がみとめられたが,被害は観察されなかった。一方,1997年から1998年に網走地方の3林分で生立木被害が発生した。被害本数率は2.2~5.5%であった。生立木への加害と放置丸太への穿孔は同じ年に起きた。生立木被害は翌年は観察されなかった。


ページのトップへ