北海道林業試験場研究報告-第40号-

(平成15年3月 発行)

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流域改変による水土流出
-河川生物生息環境の連鎖的変化機構に関する研究
(PDF,887KB)
p.1~40
長坂晶子
治山・治水などの国土保全事業は従来,洪水や土砂災害から土地利用の安全性を確保する手段と位置付けられてきた。しかし土地利用の拡大や高度化は,災害形態の多様化や災害危険域の増大をもたらし,さらに河川流域の自然環境資源の損失を促進したため,河川生態系保全を含めた流域管理手法の構築が要請されている。そのためには,これら一連の現象を流域の物理-生物環境の連鎖的変化として捉え,これまで個別領域で進められてきた河川関連研究を包括的に捉えなおすことが必要不可欠である。本研究ではこれらの点を踏まえ,研究対象領域として,河川改修が強度に進行した草地化流域と,上流域台地が農地開発された畑作流域を設定し,流域改変による水土流出機構変化ならびに河川生物生息環境への影響波及様式の解明を試みた。
結果として,以下の物理-生物環境の連鎖的変化機構が明らかになった。草地化流域においては,丘陵地への大規模草地開発,蛇行流路の直線化・連続堤防を主とした大規模な治水工事が実施されたことによって,中・下流域の水流出機構が大きく変化し,水貯留機能の減少と水疎通機能の増加がそれぞれ同時期(1975年)に現れた。さらに治水工事によって河畔林が除去された結果,夏期最高水温の上昇と河道内倒流木密度の減少が推定され,この地域の代表的な冷水性サケ科魚類であるサクラマスの生息に好適な環境を悪化させたことが推測された。また畑作化流域においては,畑作化に起因して発生しているガリー崩壊が1980年代に急増しており,農作業形態の変化,経営規模の拡大を反映したものと考えられた。谷底堆積物からも最近22年間の土砂堆積厚の増加が示されたことから,崩壊地の増加と谷底の埋没はほぼ同時期に起こったものと考えられた。さらに,一次谷・二次谷に堆積した土砂が順次下流に流出する傾向が見られることなどから,結果としてもともとあった河床砂礫の間隙を充填してはまり石状の河床形態を形成し,底生動物群集の貧困化をもたらしていると推察された。
北海道の多くの農業地帯の流域構造に変化をもたらした社会的因子として農業基本法(1961~)とそれに伴う1960年代以降の農作業形態や経営規模の変化が挙げられ,研究対象流域でも1970年代後半から流域構造の変化が顕在化していることが明らかになり,特に水土保持機能の低下として現れることが示された。これらの実態を元に,流域管理手法の基本理念として水土保持空間・機能の再生による水土流出機構の復元と河川生物生息環境の創出が提案された。

グイマツ雑種Fの幼苗からのさし木増殖法 (PDF,320KB) p.41~63
黒丸 亮・来田和人
グイマツ雑種F苗木不足の解消と優良家系品種の普及のため,幼苗からのさし木増殖法の実用化を検討した。検討事項は,1) 台木の樹齢,2) さし木の基本技術の検証,3) さし付け方法,4) 床替え時期,5) 定植後の成長である。これらの結果を総合し最適な生産スケジュールを作成し,6) 実証試験を行った。結果の概要は以下のとおりである。1) 台木の樹齢による歩留まりの違いは大きく,樹齢が増すにつれて,発根率の低下,枝性の発生,成長不良などがみられる。このため,台木としては藩種後2年目までの実生苗を使用する必要がある。2) 藩種後2年目の幼苗の一次枝,主軸をさし付けたときの平均発根率は90%以上と高く,個体による発根率の違いも少ない。台木1本からの採穂数は,約10本であるが,台木を過密に育成させるとさし穂数は減少する。3) さし付けの深さやさし穂のサイズおよびさし穂の着生部位による成績の違いは少ない。さし穂の基部を適葉しないままさし付けても歩留まりに違いはなく,適葉省略によってさし付け工程を2/3にすることができる。発根に要する日数は約80日である。4) 床替え時期をさし付け翌年の春からさし付け当年夏にすると,山出し得苗率は大幅に向上する。そのため,発根に要する日数から逆算すると,さし付けは遅くとも5月までに,台木の育成は3月上旬に開始する必要がある。なお,ペーパーポットを外して裸苗の状態で床替えした方が根系の発達抑制が少ない。5) 定植後5年間の成長は,対照として植栽した実生苗と違いはない。6) さし付け本数の68.5%,床替え本数の79.3%が実生山出し苗の規格に合格し,その際の山出し苗1本当たりの直接経費は約62円であった。以上のことから,グイマツ雑種Fの幼苗からのさし木増殖法は,苗木の供給不足や優良品種普及のための増殖手段として実用化可能と考えられる。


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