北海道林業試験場研究報告-第45号-

(平成20年3月 発行)

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第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

河畔性ヤナギの性別・部位別の窒素安定同位体比 (PDF,612KB) p.1~8
長坂 有・長坂晶子
北海道および択捉島内数河川の河畔に生育するヤナギ属の花芽,葉,種子を採取し,窒素安定同位体比(δ15N)を測定した。花芽のδ15N値は葉の値よりも低い傾向があり,雄花は雌花よりも有意に値が高かった。また,種子のδ15N値は葉よりも1‰前後高かった。これらヤナギ属の採取部位の違いによるδ15N値の差は,樹体内での同位体分別に起因すると考えられ,河畔樹木の安定同位体分析により窒素循環の推定をおこなう際には,試料採取部位にも注意すべきことが明らかになった。

北海道産木本17種を用いた道路法面の植栽試験
-樹種特性からみた植栽の確実性-
(PDF,639KB)
p.9~20
長坂晶子・長坂 有・鈴木 玲・小野寺賢介・今 博計
生育環境が厳しい道路法面において,木本緑化の確実性を向上させ,かつより多くの道産樹種について法面緑化への適用可能性を調べることを目的として,北海道内に自生する17種の木本植栽試験を行った。3年後の生残率と相対樹高成長率(RHGR)によって法面への適応性を検討したところ,裸苗・ビニルポット苗・紙ポット苗の中では裸苗・ビニルポット苗で良い活着が得られた。
3年後生残率とRHGRの関係から,生残率75%以上,RHGRが0.2以上の樹種(タニウツギ,アキグミ,ムラサキシキブ,キタゴヨウ,イボタノキ,エゾヤマハギ)は緑化材料として大いに期待できる樹種と判断された。また急斜面という立地を考えれば,多幹になりやすい樹種(タニウツギ,ムラサキシキブ,アキグミ,ヒメヤシャブシ,エゾヤマハギ)によるグランドカバーとしての機能も今後期待できるだろう。本試験により北海道南部の郷土樹種としては,ムラサキシキブ,キタゴヨウ,ワタゲカマツカが新たな緑化材料として活用できる可能性が示唆された。

久保トドマツ人工林間伐試験地における台風被害後の
林分衰退とトドマツノキクイムシの発生状況
(PDF,514KB)
p.21~27
原 秀穂・三好秀樹・徳田佐和子
北海道十勝地方豊頃町にある久保トドマツ人工林間伐試験地(74年生)では2002年10月の台風により無間伐区を中心に風倒被害が発生した。無間伐区及び隣接する間伐区で風倒被害後の林分推移及びトドマツノキクイムシの発生状況を2004~2006年に調査した。
台風被害が激しかった無間伐区では,風倒被害を受けなかった生立木が121本あったが,その後の4年間に70本(57.9%)が枯死,根返り,または幹先端が折れた。隣接する間伐区の風倒被害を受けなかった48本の調査では,台風被害後の4年間に枯死1本,幹先折れ1本,計2本(4.2%)が発生しただけであった。枯死にはトドマツノキクイムシの穿孔が関係することが示された。

エゾマツ造林に関する研究資料 Ⅰ
道北地方におけるエゾマツ人工林の生育実態
(PDF,1.09MB)
p.28~36
福地 稔・錦織正智・雲野 明
道北地方の4~78年生のエゾマツ人工林31林分の生育実態調査を行った。調査地は宗谷南部(枝幸町,中頓別町),上川北部(音威子府村,美深町,名寄市,士別市),網走西部(西興部村,興部町)である。植栽密度は2000~4000本/haの範囲であり,2500~3000本/haの林分が多かった。樹高成長はアカエゾマツの地位指数(40年生時の上層高)14以上に相当する林分が多かった。間伐が行われていない20~27年生の若齢林分における植栽木の残存率は46~86%(平均69%)であった。これらの若齢林分では,雪害に起因する幹折れが0~5%発生していた。

エゾマツ造林に関する研究資料 Ⅱ
エゾマツ幼齢造林地における成績調査事例
(PDF,1.01MB)
p.37~43
徳田佐和子・三好秀樹・原 秀穂・福地 稔・錦織正智・雲野 明
エゾマツの人工林造成が失敗する理由としては,特に生育初期段階において様々な生物害や気象害などが発生し,それら複数の被害を複合的に受けて,やがては林分全体が壊滅的な状態へとなっていく過程が一例として考えられる。
本研究は,造林後の数年間に発生する生物害などと植栽木の状態・成長の関係を明らかにすることを目的に,生育が比較的不良なエゾマツ幼齢林分で調査を行った。
なお,この林分では衰退枯死によるエゾマツ植栽木の減少を補うためのアカエゾマツの補植が繰り返されている。
ここでは,これら2樹種の生育状況の調査結果を報告する。

エゾマツ造林に関する研究資料 Ⅲ
道北地方の77年生エゾマツ人工林における腐朽被害について
(PDF,354KB)
p.44~46
徳田佐和子・三好秀樹・原 秀穂・福地 稔・錦織正智・雲野 明
材質腐朽病害は,木材腐朽菌類によって生立木のセルロースやリグニンなど,材の主要構成成分が分解される病害であり,被害部位によって根株腐朽病・樹幹心材腐朽病・樹幹辺材腐朽病に大別される。
北海道の天然林では多くの針葉樹が腐朽被害を受けており,根株腐朽病に限ってもエゾマツ(Picea jezoensis (Sieb. et Zucc.) Carriére)では平均30~35%が被害を受けていたことが報告されている(今関・青島,1955)。
一方,これまでエゾマツ人工林における腐朽被害の発生に関する報告は見当たらない。今回,道北地方にあるエゾマツの77年生林分で間伐木の伐根を対象にした根株腐朽被害調査を行ったので,その結果を報告する。

エゾマツ造林に関する研究資料 Ⅳ
エゾマツの病害
(PDF,279KB)
p.47~55
徳田佐和子
エゾマツ(Picea jezoensis (Sieb.et Zucc.) Carriére)の病害は,暗色雪腐病,アトロペリス胴枯病,ならたけ病,枝枯病など,これまで国内では30種近くが記録されている(日本植物病理学会編,2000)。
これらのうち主なものが載ったカラー写真つきの図鑑や教科書も出版されている(伊藤・藍野,1982;岸,1998;小林ほか,1999;高橋,2003;秋本,2006)。
また,高橋(1991)は,天然更新におけるエゾマツの生育過程に応じて遷移する寄生菌類相について概況を報告している。
特に,球果・種子段階では球果さび病,芽生え・稚苗段階では苗立枯病・暗色雪腐病・ちゃいぼたけ病,稚樹・幼樹段階では暗色雪腐病・ファシディウム雪腐病などが枯死要因となって天然更新を妨げ,また,枝枯性病害(高橋・佐保,1973)の罹病もある。
亜成木・成木段階へ成長した後は,アトロペリス胴枯病や各種の材質腐朽病菌の感染により材質劣化および樹勢の衰退が起こる。
エゾマツ天然木に発生するこれら病害のなかで,天然更新初期の死亡率を高める暗色雪腐病は多くの研究者の注目を浴びてきた。
また,暗色雪腐病菌のいない倒木上でエゾマツ実生が生残する倒木更新の仕組みについては詳しい研究が行われ,現在も新しい報告がなされている(飯島ほか,2004;飯島ほか,2005a;飯島ほか,2005b;Iijima et al.,2006)。
このほか,穿孔性害虫であるヤツバキクイムシとそれらが伝搬する青変菌によってもたらされる成木の枯損被害も無視できない。
さらに,エゾマツ人工林の育成と病害の関係をみると,まず,育苗段階では上記の暗色雪腐病が問題となる。
道内の造林面積の拡大に伴い針葉樹苗木の需要が高まった頃には,エゾマツ苗木生産が成功しない大きな理由の一つであったこの病害に関して,病原菌の生態や防除法に関する積極的な研究が行われた(佐藤ほか,1960;小口,1970)。
現在はエゾマツの苗木生産量が減少し,エゾマツの暗色雪腐病防除に使える登録農薬もないが,そのなかで,東京大学北海道演習林は育苗からのエゾマツ人工林造成に長期的に取り組んでおり,独自の手法を確立して安定した苗木生産を行っている(小笠原,2001)。
エゾマツ造林地における病害の発生報告は少なく,断片的な記録しかないが,天然更新時と同様に病原菌が寄生していくものと考えられる 。苗木植栽後,数年のうちに暗色雪腐病の激害をこうむった林分もあったと推察されるが,具体的な調査記録としては残っていない。
局地的には高橋(1979)が北海道中央部に位置する東京大学北海道演習林内のエゾマツ植栽木の病害を列記し,それらの子細を記載しているものの,その他の地域については生育期間全体を通じた病害の発生状況に関する記録が不足している。
そのため,成林に至らなかった不成績造林地の衰退原因・過程を病害面から推測することは困難である。
林地における生育期間全体を通しての病害としては,ならたけ病がある。
また,成林後の病害としては,天然林と同様に木材腐朽菌による材質腐朽病,青変菌類を体内に持つ樹皮下穿孔性のキクイムシが伝播する青変病に注意する必要があるだろう。
さらに,根や幹の物理的強度が低下した腐朽被害木は台風などの強風による風倒被害を受けやすい(今関・青島,1955a;亀井・五十嵐,1957;今関,1965)。
エゾマツの人工林育成に際し,特に大径材生産を目標とした長伐期施業を行うときには,材の経済的価値を下げるとともに風倒の危険性を増大させる腐朽被害の回避を考慮する必要があると考えられる。
また,倉橋ら(1992)は,目視により判定したエゾマツ天然木の健康度と伸長量・肥大成長量の関係を解析して,着葉量が少なく葉色が淡い衰退木は健全木に比べると樹木全体の成長量が劣り針葉が短い傾向があることを明らかにし,エゾマツはトドマツと同様,外観上の着葉量や葉の色調から樹木の健全度を推定できることをつきとめた。
エゾマツ人工林の健康状態を把握する方法の一つとして,こうした簡便な手法の利用も有効であると思われる。以下に,エゾマツの主な病害について解説する。

エゾマツ造林に関する研究資料 Ⅴ
エゾマツの害虫
(PDF,173KB)
p.56~59
原 秀穂
ここでは,天然林のエゾマツ伐採やエゾマツ造林が盛んに行われた20世紀中頃の文献を中心にエゾマツ生立木の害虫を取りまとめた。
これらは,これまでに"エゾマツの害虫"と呼ばれた種であるが,中には被害実態がはっきりしない種もいくつか含まれる。
また,ここで取り上げた以外にエゾマツを宿主とする昆虫は多数あるが,エゾマツの枯死や明らかな成長阻害を引き起こした記録がないため除外した。
以下にエゾマツの害虫の概要を被害部位別に取りまとめる。

北海道の林業労働者の労働災害・ヒヤリハットに関する実態について (PDF,799KB) p.60~73
酒井明香・藤八雅幸
北海道における林業労働災害とヒヤリハットの発生状況や原因について郵送アンケート調査を実施し,道内の72社の素材生産業者,657名の労働者より回答を得た。事業体の過半数で労働災害が,約9割でヒヤリハットが発生していた。同様に労働者の5人に1人が労働災害,2人に1人がヒヤリハットを経験していた。労働災害遭遇時の作業形態では伐倒作業が最も多く,被災者の6割を占めた。年代ごとの被災率や経験年数ごとの被災率に独立性の検定による有意差(α=0.05)は認められなかった。一方,被災者グループと被災者以外のグループに,普段の健康状態について有意差が認められ,被災グループの方が身体の不調を抱えている比率が高いという結果になった。被災は月曜と金曜に多く,発生時間帯は午前10時から11時台,午後3時から4時台に多いという傾向,および従業員の少ない事業体ほど労災発生率が高いという傾向は全国と同様であった。

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