北海道林業試験場研究報告-第47号-

(平成22年3月 発行)

第1号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号 第7号 第8号 第9号 第10号
第11号 第12号 第13号 第14号 第15号
第15号別刊
第16号 第17号 第18号 第19号 第20号
第21号 第22号 第23号 第24号 第25号 第26号 第27号 第28号 第29号 第30号
第31号 第32号 第33号 第34号 第35号 第36号 第37号 第38号 第39号 第40号
第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

さし木苗木と実生苗木を植栽したグイマツ雑種F1低密度植栽実証林における
幼齢期の成長と造林コスト
(PDF,953KB)
p.1~13
来田和人・内山和子・市村康裕・黒丸 亮
植栽密度が625本/ha,1000本/ha,1333本/haの3段階,苗木がさし木と実生の2種類からなるグイマツ雑種F1低密度植栽実証林の5年間の成長と林齢6年までに要した造成・保育経費を調べ,低コスト林業に対するさし木苗木低密度植栽の有効性を検討した。さし木苗木の5年生樹高は,実生苗木よりも大きかった。5年生生存率は,実生苗木よりもさし木苗木で低かったが,その差は4%で小さかった。6年生までに要した経費は,1000本/ha以下の低密度植栽では,一般的な植栽密度(1900本/ha)に比べて3~4割少なかった。また低密度植栽では筋状の下刈りをすることにより,侵入広葉樹の除伐が必要となるが,全面の下刈りを繰り返すより,少ない経費で済むことが明らかとなった。

2004年18号台風後のSPOT HRV-XS 画像による北海道羊蹄山の
森林風倒被害の抽出と抽出誤差要因の検討
(PDF,4.50MB)
p.15~33
阿部友幸
北海道羊蹄山を対象に,2004年台風18号襲来後に撮影されたSPOT2号衛星HRV-XSセンサ画像を用いて森林風倒被害(風倒害)の抽出をおこなった。抽出の基礎となる現地状況の情報は同時期に撮影された航空写真を用いて取得した。まず標準的に,スペクトル特性のみに基づきNDVI閾値による一律な抽出を行ったが,様々な誤差要因があることが判明した。誤差要因とは,急峻な地形に起因する地図座標と衛星画像のズレ,森林種別の相違,治山ダムなどの人工地物と森林の混合ピクセル,太陽入射方向と斜面方向の関係の相違,とくに濃い影の存在である。これらのうち可能なものについて,抽出精度を改善する方策を検討した。
1 主要な解析に先立ち,HRV-XS画像に対し標高データを用いた精密幾何補正を行った結果,地形図と精密に重ね合わせることができた。通常の幾何補正に対し,補正量は距離にして80mにおよぶ場合があった。この過程は,参照データの取得,および様々な被害抽出の精度改善方法の検討において非常に重要な作業であった。
2 航空写真にて現地状況を,森林3区分(トドマツ林,カラマツ林,天然生林)を含む5つの地被区分ごとに,「被害なし」から「壊滅状」被害まで最大6段階の被害程度区分を判読し,スペクトル特性を調べた。風倒害の抽出に従来よく使われてきたBandR(赤),およびBandRBandIR(赤外線)を合成した正規化植生指数NDVIは,風倒害地を抽出するには必ずしもよい指標とはいえず,森林種別ごとに最適な抽出方法があることが分かった。しかしながら,様々な森林種別を含む広域画像に対しては,あらかじめ森林種別を厳密に区分する作業が難しいことを考え合わせると,NDVIを指標とした抽出を行うことが第一近似として現実的であると考えられた。また大渓谷の影部や,治山ダムのような人工地物と森林の混合ピクセルが誤抽出を引き起こすことが分かった。
3 羊蹄山山体に刻まれた大渓谷の影が大きな誤抽出を起こすことと同様,影ができないまでも太陽光線と斜面方位の関係でNDVI値が変動し誤抽出の可能性が生じることがあきらかになった。このため,ピクセル値の地形補正を検討した。影におけるNDVI値はよく補正されるなど一定の効果が認められたが,過剰補正の傾向が認められた領域も小さくなかった。試行錯誤によって改善できる可能性は残っているが,ピクセル値の地形補正は一つのテーマとなって研究が進展中であることを考えあわせると,この点からの抽出精度向上はまだハードルが高いと考えられる。
4 大渓谷の影の問題については,GISで計算した影領域によるマスキングも検討した。このことによって,誤抽出の可能性が高い領域をよく除去することができた。森林域にあり,誤抽出を引き起こすが除去が難しいと考えていた治山ダムのような地物も,GISデータの入手の可能性が残されているので,これによりマスキング領域を作成することで除去ができるかもしれない。

北海道内の小河川における夏期最高水温の推定と河畔林の効果 (PDF,717KB) p.35~43
長坂晶子・杉山(杉本)幸穂
河畔林による水温上昇抑制効果を定量的に評価するため,道内6地域(全12水系),合計約70地点で夏期に水温観測を行い,夏期最高水温の推定モデルを作成した。実測水温を従属変数に,①観測点から上流の河畔林に覆われていない河道区間の長さ(OCL),②標高で補正した8月の最高気温,③流域面積,④森林に覆われた支流の流入の有無(支流による冷却効果の有無),⑤地質,をそれぞれ説明変数としてGLM(一般化線型モデル)による解析を行った。その結果①,②,④,⑤を取り入れたモデルが採択された。
推定した夏期最高水温とOCLとの関係を単回帰し,地域ごとの河畔林による水温維持効果を考察したところ,地質の違いは,OCL=0のときの切片(初期水温値)に反映され,火山岩・軽石流堆積物流域では,切片値が2℃ほど低いことが示された。一方,河畔林伐採によって河道がオープンになったときの水温上昇に対する感受性は回帰式の傾きに反映され,火山岩・軽石流堆積物流域のほうが温度上昇率が大きいことが示された。いずれのケースでも,森林に覆われた支流が流入した場合,回帰式の傾きが小さくなり,冷却効果があることが示された。今回の解析結果では,サクラマスの摂餌,成長の停滞を招く最高水温24℃に達するのは,①支流による冷却効果がない場合:OCL>4 km以上,②支流による冷却効果がある場合:OCL>6 km以上,と算出された。

ニセアカシア天然林の成立における実生更新とクローン成長の貢献
―北海道美唄市の不成績造林地での事例―
(PDF,1.54MB)
p.45~50
真坂一彦・山田健四・小野寺賢介・脇田陽一
外来種であるニセアカシアの自然発生林の発達過程を検討するため,北海道美唄市にあるニセアカシア天然林のDNA構造をRAPD(random amplified polymorphic DNA)マーカーを用いて解析した。この林分は,針葉樹人工林が不成績となった後に出現したものである。解析の結果,調査を行ったニセアカシア林には,複数のラメットで構成されるジェネットが少なく,1個のラメットから構成されるジェネットが多く存在していることが明らかになった。この結果は,個々のラメットはクローン成長で出現したのではなく,実生由来であることを示唆している。すなわち,ニセアカシア天然林は,必ずしも少数のパイオニア個体を創設者としたクローンで構成されたものではない場合があることを示唆している。

北海道における膜翅目ハバチ亜目の樹木害虫 I:ナギナタハバチ科,
ヒラタハバチ科, ミフシハバチ科,コンボウハバチ科
(PDF,1.58MB)
p.51~68
原 秀穂
北海道に分布する膜翅目ハバチ亜目の樹木害虫であるナギナタハバチ科1種,ヒラタハバチ科9種,ミフシハバチ科10種,コンボウハバチ科2種について解説した。ニホンチュウレンジは北海道から今回初めて記録されるが,外来種の可能性は低い。最近道内から記録されたオオルリコンボウハバチは国内外来種の可能性がある。"ハラグロヒラタハバチ Lyda semiflava MATSUMURA, 1912"の和名をハラアカトウヒヒラタハバチに改称した。

ページのトップへ