北海道林業試験場研究報告-第48号-

(平成23年3月 発行)

第1号 第2号 第3号 第4号 第5号 第6号 第7号 第8号 第9号 第10号
第11号 第12号 第13号 第14号 第15号
第15号別刊
第16号 第17号 第18号 第19号 第20号
第21号 第22号 第23号 第24号 第25号 第26号 第27号 第28号 第29号 第30号
第31号 第32号 第33号 第34号 第35号 第36号 第37号 第38号 第39号 第40号
第41号 第42号 第43号 第44号 第45号 第46号 第47号 第48号 第49号 第50号
第51号 第52号 第53号 第54号 第55号

落葉広葉樹林におけるウダイカンバ成木の衰退の要因解明に関する研究 (PDF,3.65MB) p.1~46
大野泰之
ウダイカンバは北海道を代表する有用樹種の一つであり,径級の大きな個体は非常に高価格で取引される。そのため,北海道有林などでは,1960年代の後半からウダイカンバ大径材生産を目的とした保育管理が,多くのウダイカンバ二次林で進められてきた。しかし,北海道の一部の地域(網走地方,上川南部)では,1990年代の後半からウダイカンバの枝が樹冠の上部から枯れ下がる現象(以下,衰退と記す)が顕在化し,将来の大径材生産が危惧されるようになった。本研究では,ウダイカンバの衰退に関与した要因を明らかにするため,様々なストレス(土壌の養水分の不足や食葉性昆虫による食害,個体間競争など)に対するウダイカンバの応答を調査し,衰退に至るプロセスおよび衰退を回避・軽減するための施業方法について検討した。
ウダイカンバの衰退の発生に関与する潜在的な要因を抽出するため,衰退の進行している網走地方(興部町)のウダイカンバ二次林において,2つのプロットを設定し(プロット1:斜面上部,プロット2:斜面下部),個体ごとの衰退の程度,幹の損傷・腐朽の有無,穿孔性昆虫による加害の有無を調査した。また,乾燥ストレスの程度,および窒素制限の程度を斜面位置間で比較するため,比較的,健全な個体を対象に葉組織の炭素安定同位体比(δ13C)や窒素含有量など,個葉の諸性質を測定した。一般化線型モデルによる解析の結果,衰退木の出現確率に影響する要因として斜面位置が選択され,衰退木の出現確率は斜面下部に比べて斜面上部で高かった。斜面上部の個体の葉組織のδ13Cは斜面下部に比べて高く,斜面上部の個体が斜面下部に比べて相対的に強い乾燥ストレスの影響を受けていたことを示していた。一方,葉の窒素含有量(mg g-1)は斜面位置間で差は見られなかった。このことから,斜面位置間の乾燥ストレスの違いがウダイカンバの衰退の発生に関与したことが示唆された。
食葉性昆虫による激しい食害がウダイカンバの衰退(枝の枯れ下がり)に及ぼす影響を明らかにするため,激しい食害を受けた40年生のウダイカンバを対象に,食害後の当年生の枝(シュート)の応答と生残状況について調査を行った。7月の中~下旬に激しい食害を受けた当年生シュートは,シュートの着生する高さ(着生高)に関係なく,食害から約3週間後の夏季に二次開葉し,新しい葉(二次葉)を形成した。しかし,二次開葉したシュートの多くは,降水量が少なく,乾燥した時期に死亡した。二次葉を着けたシュートの枯死率は二次開葉しなかったものに比べて高く,その枯死率は着生高とともに急激に増加していた。観察された枯死パターンは,衰退木の特徴と一致しており,激しい食害が衰退を引き起こす誘因となり得るものと考えられた。衰退が進行している網走地方や上川南部のウダイカンバ二次林では,衰退が顕在化(食葉性昆虫が大発生)する以前から,衰退木の直径成長が低下していたことが報告されている。そこで,衰退の進行している広葉樹二次林(南富良野町)における長期データを用いて,衰退の発生に先行する期間(1985-87年)の個体の胸高断面積(BA)成長量と1999年にウダイカンバが衰退木になる確率(衰退確率)との関係を解析した。また,先行期間のBA成長量の低下をもたらす要因について,個体間競争との関係から解析を行った。ウダイカンバの衰退確率には先行期間のBA成長量が影響しており,BA成長量の低下とともに衰退確率が増加していた。また,BA成長の低下には局所的な個体間競争が影響しており,競争効果の増加とともにBA成長量が低下していた。これらの結果は,長期間の個体間競争がBA成長量を低下させ,衰退の発生に影響したことを示していた。
衰退木となったウダイカンバがその後回復するのか,それとも衰退がさらに進行し,枯死に至るのか?を明らかにするため,衰退の程度(DC)と個体間の競争効果がウダイカンバのBA成長量と枯死率に及ぼす影響を解析した。ウダイカンバのBA成長量と枯死率は,ともに期首のDCと競争効果によって影響されており,DCの増加と競争効果の増加による複合的な効果がBA成長量を低下させ,枯死率を増加させていた。このことから,衰退の進行した個体を大径木に育成することは難しく,優先的に除・間伐の対象木として選定すべきであることを提案した。
以上の結果から,少なくとも3種類のストレス(土壌水分の制限,食葉性昆虫による激しい食害,長期間にわたる個体間競争)がウダイカンバの衰退に関与する要因として検出された。これらの結果をもとに,ウダイカンバが衰退に至るプロセスを考察し,衰退を回避・軽減するための施業方法について検討した。

アジア系統マイマイガ北海道個体群幼虫の餌としての植物各種の適合性 (PDF,456KB) p.47~54
小野寺賢介・原 秀穂
マイマイガLymantria dispar sensu lato北海道個体群1齢および3齢幼虫の餌としての植物各種の適合性を明らかにするため室内飼育試験を行った。餌としての適合性は試験終了時の幼虫の成長・生存状況に基づいて5段階にランク分けした。1齢幼虫は木本71種およびシダ・草本31種のうち木本46種と草本10種で2齢以上に成長し,木本14種とシダ・草本13種で幼虫は生き残ったが2齢に成長できず,木本11種とシダ・草本8種で1齢のまますべて死亡した。3齢幼虫は木本8種のうち3種で4齢に成長し,5種で3齢のまますべて死亡した。ヨーロッパ系統マイマイガの飼育試験結果と比較すると34属の植物の内10属で北海道個体群の方が高い適合性を示したことから,北海道個体群が属するアジア系統マイマイガの方がより幅広い食性を持つことが示唆された。

クロマツ植栽苗の防風柵による寒風害の助長効果 (PDF,1.20MB) p.55~63
真坂一彦・鳥田宏行・今 博計・佐藤 創・福地 稔
本研究では,土壌凍結による寒干害がみられる日高町豊郷のクロマツ海岸林造成地において,防風柵による被陰がもたらす寒干害の助長効果を検討した。1998年~2003年にかけて造成された80ブロック(1ブロックの大きさは20m×12m)について,ブロック内に6列ある植栽列ごとに生残率を一般化線形モデルによって解析したところ,海側の植栽列,すなわち防風柵によって被陰される植栽列の生残率が有意に低い結果となった。また,2つのブロックにおいて,2008年と2009年に,火山灰土が施されたもともとの植栽列,およびそれらの間の砂地に植栽試験を行い(計12列),越冬後の生残状況について順位回帰分析を行ったところ,防風柵によって被陰される植栽列の枯死・枯損が有意に多い結果となった。植栽試験と同時に越冬期間中の土壌凍結深を測定したところ,2009年~2010年の土壌凍結期間は,防風柵によって被陰される植栽列が,それ以外の植栽列よりも長く,凍土融解時期が約1ヵ月遅かった。これらの結果から,日高町豊郷のクロマツ海岸林造成地において防風柵によって被陰される場所では凍土の融解時期が遅くなり,寒干害が助長されると結論できる。

システム収穫表「北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト」の開発 (PDF,2.53MB) p.65~74
八坂通泰・滝谷美香・山田健四
カラマツ人工林のためのシステム収穫表「北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト」における使用データ,基本構造,予測精度,ソフトの具体的な使用方法を報告した。収穫予測ソフト作成に用いたデータは主に3種類ある。1つめのデータは全道2,680のカラマツ人工林において樹高や直径を調べたものである。このデータから地位指数曲線,Y-N曲線などを作成した。2つめのデータは19林分(4地域)において直径成長量を調べたものである。このデータから直径成長モデルを作成し林分材積成長量の推定を行った。3つめのデータは,630本の立木から胸高直径,樹高,様々な高さの直径などを測定したものである。このデータからは相対幹曲線式を作成し末口径別丸太本数の推定などを行った。これらのモデルを統合して,マイクロソフト社エクセル2010において収穫予測ソフトを作成した。

ページのトップへ