北海道林業試験場研究報告-第58号-

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第58号(令和3年3月発行)

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第58号全編(PDF:12.9MB)

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ウダイカンバ人工林における径級分布の推定 -林齢,地位,収量比数の違いがワイブル分布のパラメーターに及ぼす影響-(PDF:1.4MB)
大野泰之
P1~7
ウダイカンバ人工林の径級分布を林分レベルの属性情報(林齢,地位:SI,収量比数:Ry)から予測するため,10-46年生の38林分を対象にワイブル分布を適用し,パラメータ(位置パラメータ:a,尺度パラメータ:b,形状パラメータ:c)を最尤法により決定した。決定したワイブル分布と観測値との間で適合度検定を行った結果,33林分において適合性が確認された。ワイブル分布のパラメータに影響する林分レベルの因子を抽出するため,一般化線型モデル(GLM)による解析を行った。パラメータa,cでは林齢,SI,Ryを含むモデルがそれぞれ選択され,パラメータbでは林齢を含むモデルが選択された。GLMの結果は,ウダイカンバ人工林におけるワイブル分布の形状が林齢とSI,Ryに応じて変化することを示していた。ウダイカンバ人工林の径級分布を把握するための簡便な方法として,構築したモデルの有効性を議論した。

多雪地における獣害防止ネットの破損とその対策(PDF:4.5MB)
雲野 明・南野一博・石川祐介・明石信廣
P9~17
エゾシカ被害防止用に設置された林業用の獣害防止ネットにおいて,積雪による破損被害が北海道の多雪地で発生している。そこで,積雪による獣害防止ネットの破損を抑え,侵入防止柵の耐久性を向上させるための方法を検討した。その結果,最大積雪深が1mを超えるような多雪地では,支柱間隔を2.5~3m,吊りロープの固定位置を木口にする,ネットの上部4目程度はイザナスを使用する,支柱の中間部でネットを固定しないことで,ネットの破損を軽減できることが明らかとなった。ただし,ネットの破損を完全に防ぐことはできないため,定期的な見回りと保守点検が必要である。

イルムケップ山塊(北海道空知地方)の維管束植物相(PDF:1.5MB)
新田紀敏・明石信廣
P19~34
北海道空知地方北部にあるイルムケップ山塊の維管束植物相を調査した。確認されたのは479分類群,99科,289属,461種,2雑種で,希少種は1.7%の8分類群,外来種は12.7%の61分類群であった。

作業路・土場における土の締固めの違い(PDF:1.2MB)
佐藤弘和
P35~40
集材作業において高性能林業機械の走行に伴う土の締固めは,地表流の発生や土壌侵食を引き起こす原因になりうる。本研究では,作業路,土場ならびに林地を対象に土の乾燥密度や簡易貫入試験によるNC値の比較を行い,土の締固め程度を評価した。林業機械が走行する作業路面に形成された「わだち」および土場では乾燥密度が高い値を示し,締め固められている状況が明らかになった。NC値の鉛直プロファイルでは,土場および切土のり面側のわだちにおいて10~20cmの深さに硬盤が形成された。わだちと土場は,林業機械の走行による土壌の締固めを強く受けていた。

クリーンラーチ挿し木苗の得苗率低下に影響する要因(PDF:1.3MB)
今 博計・来田和人・黒丸 亮
P41~49
クリーンラーチ挿し木苗生産における生産開始以来の得苗率の推移を行政資料から把握するとともに,得苗率低下の原因把握を目的として,全生産者を対象に,生産スケジュール,挿し木苗の発根等の生産実態を調査した。生産が始まった最初の2年間は,得苗率(成苗数/挿し穂数)は70%程度だった。生産者数が増加した2006年以降は,得苗率は30%まで落ち込んだ。得苗率の低下は,挿し床での育苗と苗畑への移植後の期間に生じていた。挿し付けは4月下旬から8月下旬まで長期間にわたって行われていたが,挿し付け時期は発根率と根量に影響しており,挿し付け時期が遅くなるほどそれぞれ減少した。根量の減少は,苗畑に移植した後の生存と成長にも影響していた。これらの結果から,挿し木苗生産の低下は,挿し付け時期の遅れによって生じていると考えられる。

形態形質と内部構造からみたトドマツ苗木の当年生葉の発達と遮光処理に対する応答(PDF:7.2MB)
石塚 航・菅井徹人
P51~60
急激な光条件変化に対するトドマツの馴化応答を把握するため,苗畑にて展葉が済んだタイミングで遮光処理を行い,トドマツ苗木における当年葉の形態形質と内部構造の変化を,成長期間を通して観察した。比較のために用意したアカエゾマツ,エゾマツ苗木とともに,展葉開始後から定期的に当年葉をサンプリングし,形態形質として葉面積あたりの葉重(LMA)を測定した。また,6~10月にかけた4時点のトドマツサンプルについて解剖切片を作成して葉の内部構造を画像解析した。どの樹種も6~7月上旬にLMAが増加したものの,遮光下のトドマツは光条件下のものよりも有意に値が低く,LMAの増加が抑えられていた。この傾向はアカエゾマツでも観察された。遮光下のトドマツ苗木における葉厚や葉肉細胞厚に対する柵状組織厚の割合はどの時点でも一定だった。一方,通常の光条件下におけるそれらは徐々に増加し,10月時に有意差が検出された。以上の観察より,LMAは遮光に対して速やかな応答がみられること,柵状組織厚の割合といった内部構造の変化は数ヶ月遅れて生じたことがわかった。LMAに認められた速やかな馴化応答は,内部構造ではなく葉厚による応答が担う可能性が示唆された。

1986年造成のアカエゾマツ次代検定林における優良個体の選抜(PDF:1.4MB)
石塚 航・佐藤弘和・今 博計・成田あゆ・花岡 創・中田了五・福田陽子・黒沼幸樹・辻山善洋
P61~69
1986年に北海道立総合研究機構林業試験場の実験林内に造成されたアカエゾマツ次代検定林を対象とし,優れた遺伝的特性を有する個体の選抜を実施した。成長関連形質として30年生時の幹材積を,材質に関連する2形質として,動的ヤング係数の指標となる33年生時の応力波伝播速度,および,材密度と関係がある33年生時のピロディン貫入量を測定し,育種価を計算した。通直性を根元曲がりと幹曲がりによって評価した。選抜は,i) 幹材積の育種価を基準とした成長性に優れる,ii) 材質に関連する2形質の育種価と通直性評価のどれにおいても劣らない,iii) 遺伝的多様性が担保される,ように選抜基準を設け,総合評価に基づいて行った。iおよびiiで設けた選抜基準をすべて満たすのは34個体(全検定木の4.5 %)で,このうち,遺伝的多様性を考慮して選抜されたのが20個体(同 2.7 %)だった。本調査において,幹材積と応力波伝播速度,ピロディン貫入量にはそれぞれ負と正の相関関係が認められたため(r = −0.3017, 0.1773),成長ならびに材質関連形質がともに優れた個体の選抜数が少なくなった。これら選抜個体については,幹材積で平均5.12 %,応力波伝播速度で1.37 %,ピロディン貫入量で0.47 %の改良効果が期待できることがわかり,第2世代精英樹の候補木として今後の活用が望まれる。

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