崩壊防止機能を高める森林施業技術の開発


図-1 根系による崩壊防止のメカニズム

<目的>
樹木根系は,水平に伸びて絡んだ根と垂直に突き刺さった根によって,土壌を緊縛しています(図-1)。それゆえ,樹木根系は山腹崩壊防止機能をもっています。樹木根系の発達は,植栽密度や樹種,間伐の有無などによって変化すると考えられます。この研究は,樹木根系による山腹崩壊防止機能を定量化し,崩壊防止機能を高める森林施業技術を提示することを目的としています。この研究は,(株)北海道技術コンサルタントと共同で行なわれたものです。

図-2 崩壊地の平面形状と水平根分布(A)
および断面形状と根の分布(B).
A図において円は水平根の広がりを,B図において太い実線は水平根を,点線は垂直根を示す

<成果>
1.崩壊防止機能に対する間伐の効果
光珠内実験林のトドマツ人工林(37年生)において,過去に間伐が行なわれた林分と行なわれなかった林分において,根の形態と引き抜き抵抗力を調べ,間伐が根系の崩壊防止機能に及ぼす影響を検討しまた。樹木1本分の,根元中心部から垂直方向,または水平方向の距離と引き抜き抵抗力の関係を求め,シミュレーションを行ないました。シミュレーションには,図-2のような樹木が方形配置された林分で,平面的には根系の最も少ない樹木の中間地点を通る正方形で崩壊が起き,断面的には過去の統計で多かった滑り面の深さに近い1mと1.5mで円弧状に崩壊が起きると仮定しました。結果を表-1に示します。トドマツ人工林では間伐をした方が,安全率が高まることが明らかになりました。

表-1 安全率の計算結果

2.崩壊防止機能に対する植栽密度の効果
光珠内実験林のコバノヤマハンノキ円形密度試験地(39年生)において,植栽密度が高い場所と低い場所において,根の形態と引き抜き抵抗力を調べ,間伐が根系の崩壊防止機能に及ぼす影響を検討しまた。結果を図-3に示します。

図-3 林齢に伴う個体数密度(A),林分材積(B),平均個体材積(C)
および深さ1mでの林分の根系抵抗力(D)の推移

3.天然林における根系の山腹崩壊防止効果
苫前町古丹別の山腹斜面において,北海道の主要な落葉広葉樹であるミズナラ,イタヤカエデ,シナノキの3樹種について根系を掘り取り,根系分布を測量調査しました。また,別の個体を用いて根の引抜き試験を行ないました。斜面安定解析については,①樹木なしの場合,②樹木荷重のみを考慮した場合,③根系抵抗力+樹木荷重を考慮した場合の3つのモデルを評価しました。結果を表-2に示します。

表-2 斜面安定解析の計算結果

逆算法,および土質試験による場合とも,樹木なしの場合よりも根系+荷重を考慮したモデルの安全率が高くなりました。すべり面が1.5mの場合(樹木根系が届く範囲),安全率は20~30%増加しました。

急斜面上における樹木根系の引抜き抵抗力の調査(奈井江町) 根系分布の3次元測量(苫前町古丹別)

4.垂直根の杭効果
樹木の根系がない場所と,樹木の根元位置において原位置試験を行い,土壌のせん断抵抗力の差から垂直根の杭効果を検討しました(図-4)。


図-4 垂直応力と最大せん断抵抗力の関係
回帰直線は根なしについて(単位はせん断面積当り)

垂直根の支持力を評価するための原位置試験
(美唄市・実験林)

<発表>
日林北支論 (2001) 49:118-119,日林北支論 (2002) 50:76-78,日林北支論 (2003) 51:102-104


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