菜豆「十育A−29号」に関する試験成績
                   道立十勝農試豆類第2科
(昭和43年〜50年)

育種目標
 手亡類について、早生、短稈、良質、多収品種の育成

来 歴
 交配年次:昭和43年
 交配場所:十勝農試
 組 合 せ:「十育A−19号」(Sanilac Pea Bean×改良大手亡)×「lmproved White Navy」
 育種方法:F2〜F4 集団育種、F5以降系統育種
 育成経過:昭和47年 生産力検定予備試験  系統名「十系A-6号」
        昭和48年〜50年 生産力検定試験  系統名「十育A-29号」
                    地域適応性検定試験
        昭和49年〜50年 特性検定試験、現地比較試験
世  代:昭和50年 F10

特 性
 「十育A-29号」の特性については、手亡類の「銀手亡」との対比で示すが、近年十勝地方で裁培の在来種「大手亡(芽室)」(手なし手亡と呼ばれている)とも対比させる。
 (1) 一般性状:主茎節数が9〜10節からなる叢性、硬爽種である。草丈は60cm前後で「銀手亡」(130〜150㎝)に比し著しく低く、「大手亡(芽室)」よりも低い。
稚苗の茎色は緑、花色は白で「銀手亡」と変らない。熟爽は「銀手亡」に比して小さく、「大手亡(芽室)」並である。
 (2) 開花始および成熟期:開花始は「銀手亡」より1日遅く、成熟期は9月15日で「銀手亡」より3日早い中生の早に属し「大手亡(芽室)」より1日遅い。
 (3) 収量性:子実収量は「銀手亡」並であるが、「大手亡(芽室)」に比し10〜20%多収である。本系統は「銀手亡」より着爽数が多く、子実重歩合がきわめて高い。
 (4) 品質:子実は白色、形状は「銀手亡」より小型の楕円で、千粒重は320g程度で「銀手亡」(365g)より軽いが、「大手亡(芽室)」(300g)よりやや重い。外観的な品質は「銀手亡」よりやや劣り「大手亡(芽室)」並である。
煮熟したときの肉質は「銀手亡」より粉質で、粘性も「銀手亡」より可成り低い。
 (5) その他:本系統は蔓がないのでビーンハーベスタの利用が容易であり、耐倒伏性は、「大手亡(芽室)」より強く、耐病性は他の品種と変らない。

試験成績
(1)十勝農試成績(昭和48〜50年 3ヶ年平均)

品種および
系統名 
開花始 成熟期 生育日数 草丈 分枝数 着爽数 10a当り 1000粒重 屑豆
歩合
品質
総重 子実重
  月日 月日 cm kg kg g  
十育A−29号 7.23 9.15 113 58 6.6 28.8 489 301 116 320 8.2 2下
大手亡(芽室) 24 14 112 65 5.8 28.2 429 248 96 300 12.2 2下
銀手亡 22 18 116 140 2.7 19.0 464 259 100 365 5.0 2中

(2)各農試における成績(昭和48〜50年 3ヶ年平均)

品種および
系統名
北見農試 上川農試 中央農試 原原種農場
子実重 1000粒重 子実重 1000粒重 子実重 1000粒重 子実重 1000粒重
  kg/10a g kg/10a g kg/10a g kg/10a g
十育A−29号 317 113 349 248 113 310 235 118 291 171 110 283
大手亡(芽室) 267 95 320 203 92 302 203 102 282 160 103 279
銀手亡 280 100 393 220 100 332 200 100 317 156 100 315

(3)現地試験成績

      区分
      年次
品種
および系統名
十勝管内 網走管内 上川管内 全平均
昭49 昭50 昭49 昭50 昭49 昭50 昭49〜50
子実重 子実重 子実重 子実重 子実重 子実重 子実重
  kg/10a kg/10a kg/10a kg/10a kg/10a kg/10a kg/10a
十育A−29号 311 107 319 96 350 102 310 97 360 113 225 100 319 103
大手亡(芽室) 293 103 265 80 313 91 263 82 290 91 215 96 282 91
銀手亡 290 100 333 100 349 100 319 100 320 100 225 100 310 100
試験個所数 5 4 4 3 1 1 18

適応地帯ならびに栽培上の注意
 (1)適応地帯
   十勝・網走・上川の畑作地帯
 (2)栽培上の注意
   「銀手亡」の栽培に準じてよいが、栽植密度は「銀手亡」より高めた方がよい。晩播による減収程度は小さいが、適期播種に努めるべきである。成熟後、刈りおくれると地面に接している爽が腐敗しやすいので、早めに収穫するのがよい。