【普及奨励事項】
菜豆「十育B-32号」に関する試験成績
(昭和49年〜53年)     北海道立十勝農業試験場 豆類第2科
育種目標
 「金時類」について矮性、大粒、良質、多収品種の育成。

来  歴
 「十育B-32号」は北海道立十勝農業試験場において、昭和42年に「昭和金時」を母とし「a-32(F7)」を父として人工交配を行なった。
F1代では温室で養成し、F2〜F3代はほ場に栽植して集団選抜し、F4代で個体選抜を行ない、以降系統育種法により選抜固定をはかってきた。昭和48年には「十系B-6号」の系統名で生産力検定試験を行なうと共に、特性検定試験、地域適応性検定試験ならびに現地試験に供試し、各種の栽培環境に対する反応や適応性について検討してきたものである。

特性の概要
 1.一般性状:草丈は45㎝前後、主茎節数が6節からなる矮性の硬莢種であり、稚苗の茎色は「大正金時」と同じ淡赤紫、花色は淡紅色である。
 2.開花始、成熟期:「大正金時」に比し、開花始は1日、成熟期は3〜5日程度遅い早生種である。
 3.子実:形状は「大正金時」よりやや長い楕円形で、粒色は赤紫、大きさは「大正金時」より大きく1000粒重で約20%程度重い。
 4.収量性:「大正金時」に比べおおよそ20%ほど多収を示す。
 5.耐害性:各種の病害による被害程度および倒伏程度は「大正金時」と大差がない。
 6.品質:外観的品質は「大正金時」と変わらない。種皮の厚さは0.084㎜で「大正金時」(0.080㎜)よりわずかに厚いが大粒であるため、種皮歩合は7.7%で「大正金時」より低い。煮熟した時の肉質は「大正金時」よりわずかに粘質であるが、食味は「大正金時」と変わらず、煮豆、甘納豆の原料に適する。

1.十勝農試における成績 (昭49年〜53年の5カ年平均)
品種および
系統名
開花始
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数
(日)
草丈
(㎝)
莢数
(個)
10a当り 1000
粒重
(g)
平均1莢内
粒数
(g)
屑豆
歩合
(%)
品質
総重
(㎏)
子実重
(㎏)

(%)
十育B-32号 7.14 9.6 102 44 13.2 435 242 119 749 2.95 3.8 2下
大正金時 7.13 9.1 97 39 15.3 381 204 100 603 2.76 2.4 3上

2.各農試における成績 (昭50年〜53年の4カ年平均)
試験場名 品種および
系統名
開花始
(月日)
成熟期
(月日)
生育
日数
(日)
草丈
(㎝)
莢数
(個)
10a当り 1000
粒重
(g)
屑豆
歩合
(%)
品質
総重
(㎏)
子実重
(㎏)

(%)
北見農試 十育B-32号 7.12 9.9 108 45 15.5 560 281 119 765 6.1 3上
大正金時 7.12 9.4 103 41 18.6 520 237 100 634 5.2 3
上川農試 十育B-32号 7.4 8.21 93 38 9.5 401 190 112 721 (4.1) (中上)
大正金時 7.4 8.14 86 31 11.1 351 170 100 585 (2.7) (上下)
中央農試 十育B-32号 7.9 8.30 99 42 14.1 388 201 101 667 8.9 (中下)
大正金時 7.9 8.26 95 36 14.4 386 200 100 568 4.6 (中上)
原原種農場 十育B-32号 7.3 8.17 90 34 9.8 322 174 112 726 4.3 3上
大正金時 7.3 8.12 85 28 10.9 283 155 100 580 3.4 2
 注、( )内数値は3カ年平均

3.現地試験における成績(10a当り子実収量、昭51年〜53年の平均)
                                (単位:㎏)
品種および
系統名
足寄 本別 忠類 鹿追 十勝平均 北見 斜里 美幌 東藻琴 網走平均 上富良野 全平均
十育B-32号 290
(128)
298
(125)
348
(114)
305
(132)
310
(124)
312
(131)
249
(114)
289
(117)
310
(136)
290
(125)
262
(118)
296
(124)
大正金時 227 238 304 231 250 239 218 246 228 233 222 239
注、( )内数値は大正金時に対する比率(%)

適応地帯ならびに栽培上の注意
 1.適応地帯:十勝、網走、上川などの畑作地帯に適する。
 2.栽培上の注意:「大正金時」の栽培に準ずるが、子実が大粒であるため、脱穀時に子実の損傷をおこさないように注意する必要がある。