【普及奨励事項】
1.課題の分類: 2.場 所 名:北海道立十勝農業試験場・豆類第1科 3.新品種候補系統名:だいず十育184号 |
4.来 歴:
「だいず十育184号」(以下だいずを略す)は、北海道の基幹黒大豆品種「中生光黒」より早熟で多収な黒大豆品種の育成を目標とし、昭和42年に北海道立十勝農業試験場において「十育122号」(「キタムスメ」)を母、「中生光黒」を父として人工交配し、以後選抜、固定を図ってきた系統である。昭和51年に「十系567号」の系統番号を付し生産力検定予備試験に供し、昭和52年から「十育184号」の系統名で生産力検定試験に供し、さらに昭和54年から道内関係機関の奨励品種決定調査及ぴ特性検定試験等に供してきた系統で、昭和58年にはF16代である。
5.特 性:
胚軸及び花色は紫、円葉、毛茸色は褐である。主茎長は「中生光黒」と同程度の中茎、分枝数は"多"である。有限伸育型で熟莢は褐色を呈する。子実は、扁球で光沢の強い黒大豆であり、「中生光黒」とともに大粒種に属す。なお、裂皮(点形)の発生は「中生光黒」の"無"に対し"微〜少"である。
成熟期の早晩は、「中生光黒」の"晩の早"に対し、「キタムスメ」並みの中生種である。生態型は夏大豆型に属する。子実収量は「キタムスメ」と同様"多"であるが、冷害年における減収が少ないので「中生光黒」に優る。子実成分は、粗蛋白含有率が、"低"で時に"中"、粗脂肪含有率が"中"で時に"抵"であり、「中生光黒」に比べ粗蛋白含有率が低く粗脂肪含有率が高い。しかし、煮豆原料としての適性は「中生光黒」と同程度と認められる。マメシンクイガ及びダイズシストセンチュウに対する抵抗性は「中生光黒」と同様いずれも"弱"である。低温抵抗性は"中"、裂莢の難易は"易"と評価される。倒伏抵抗性は「中生光黒」並みの"中"である。
6試験成績
1)育成地における試験成績
系統名及び 品 種 名 |
開花期 (月日) |
成熟期 (月日) |
主茎長 (cm) |
分枝数 (本/数) |
倒伏 程度 |
稔実 莢数 (莢/株) |
子実重 | 百粒重 (g) |
裂皮 (点形)* 粒率(%) |
品質 | 試作年 (昭和) |
|
kg/a | 標準対比 (%) |
|||||||||||
十育184号 | 7.26 | 10.3 | 55 | 6.0 | 少 | 56.8 | 28.7 | 107 | 35.8 | 5.4 | 中上 | 52-58 |
中生光黒 (標準) |
7.30 | 10.11 | 51 | 4.7 | 中 | 50.3 | 26.7 | 100 | 34.9 | 0.3 | 中上 | 52-58 |
キタムスメ (比較) |
7.26 | 10.2 | 61 | 5.8 | 少 | 62.4 | 29.4 | 110 | 29.0 | - | 中上 | 52-58 |
2)普及見込地帯における試験成績
地 域 区 分 |
系統名及び 品 種 名 |
開花期 (月日) |
成熟期 (月日) |
主茎長 (cm) |
分枝数 (本/数) |
倒伏 程度 |
稔実 莢数 (莢/株) |
子実重 | 百粒重 (g) |
裂皮 (点形)* 粒率(%) |
品質 | 試作年 (昭和) |
|
kg/a | 標準対比 (%) |
||||||||||||
十 勝 中 央 |
十育184号 | 8.4 | 10.10 | 73 | 5.4 | 少 | 61.7 | 22.8 | 131 | 35.1 | 8.8 | 中上 | 55-58 |
中生光黒 (標準) |
8.6 | 10.17 | 77 | 4.2 | 中 | 56.6 | 17.4 | 100 | 30.9 | 0.1 | 中中 | 55-58 | |
十 勝 山 麓 |
十育184号 | 8.3 | 10.12 | 58 | 6.0 | 中 | 35.0 | 14.4 | 117 | 33.0 | 3.7 | 中中 | 55-58 |
中生光黒 (標準) |
8.8 | 10.17 | 61 | 4.0 | 中 | 33.0 | 12.3 | 100 | 29.6 | 0.1 | 中中 | 55-58 | |
十 勝 沿 岸 |
十育184号 | 8.7 | 10.14 | 57 | 4.3 | 少 | 48.3 | 18.1 | 121 | 32.7 | 4.1 | 中上 | 55-58 |
中生光黒 (標準) |
8.11 | 10.20 | 58 | 3.6 | 少 | 43.3 | 15.0 | 100 | 29.8 | 0.4 | 中上 | 55-58 |
7.配布しうる種子量:
原々種20kg、原種60kg、その他35kg
8.採用予定県:
北海道
10栽培上の注意
①ダイズわい化病、マメシンクイガなどの防除は、従来の品種と同様に行う。
②ダイズシストセンチュウに対しては、「中生光黒」同様抵抗性をもたないので、本センチュウによる被害のおそれのある圃場への作付けは避ける。
③「中生光黒」より出芽揃が遅く、地温の低い日が続くと出芽率低下のおそれがあるので、従来の品種同様必ず種子消毒を行うこと。
④年次や栽培地により、瞬の近辺に点形の裂皮がみられるので、多発のおそれのある地帯への作付けは避ける。
⑤黒豆は、異色粒の発現がとくに問題とされるので、栽培にあたって自然交雑に注意し、生育中の異型抜取り、種子の粒選を行うこと。