【普及奨励事項】
1.課題の分類:
2.場 所 名:北海道立十勝農業試験場・豆類第2科
3.新品種候補系統名:あずき「十育116号」

4.来   歴:
 本系統は,アズキ落葉病抵抗性を有する多収品種の育成を目標とし,昭和51年に北海道立十勝農業試験場において,「ハヤテショウズ」を母,「赤豆」を父として,人工交配を行い,昭和53年,F3代では,落葉病の発生圃場(小豆の長期連作圃場,以下病土)で個体選抜を行い,F4代の系統選抜では,健全圃と病土の総重比により選抜し,以降の系統選抜は病土と健全圃の生育を比較して選抜固定を図ってきたものである。
 昭和56年に「十系275号」の系統名で生産力検定予備試験に供試し,昭和57年冬期,温室で世代促進を図り,以降「十育116号」の系統名を付し,生産力検定試験,ウイルス病特性検定試験を行うとともに,落葉病特性検定試験,低温処理試験,多肥及び密植適応性検定試験,道内関係機関での系統地域適応性検定試験,奨励品種決定現地調査を行った。昭和59年度において,F10代である。

5.特   性:
1)形態的特性
 葉の形状,花色,莢の形状及び毛茸の多少・形は莢の長さが“中の短”で「エリモショウズ」よりやや短い以外,「エリモショウズ」とほぼ同じである。
 主茎長は“中の短”で「エリモショウズ」と同程度であるが,分枝数はやや少ない。一莢内粒数,胚珠数も「エリモショウズ」とほぼ同じであるが,粒大はやや小さく,子実形状は「ハヤテショウズ」と同じ“短円筒”である。種皮色は「ハヤテショウズ」と同じ“やや濃赤”で「エリモショウズ」と異なり,外観品質は「ハヤテショウズ」と同じで,「エリモショウズ」よりやや劣る。
2)生態的特性
 開花期は「エリモショウズ」よりやや早く,「ハヤテショウズ」より遅い“中の早”に属し,成熟期は「エリモショウズ」とほぼ同じ中生種に属する。子実収量は,「エリモショウズ」よりやや劣るが,アズキ落葉病抵抗性を有するため,落葉病の多発圃場では,「エリモショウズ」より収量性は高い。茎疫病抵抗性は“中”,ウイルス病抵抗性は“弱”である。また,開花期前後の低温には,「エリモショウズ」よりやや弱く,倒伏抵抗性は“中”である。種皮歩合は「エリモショウズ」よりやや高く,「ハヤテショウズ」と同程度である。

6.試験成績
1)形態的特性
系統名
または
品種名







葉の形状
莢の形状












子実の形状












十育116号 中の短 中の短 短円筒 中の小 やや
濃赤
エリモショウズ 中の短 やや
長円筒
中上
ハヤテショウズ 短の長 円や剣 短円筒 小の大 やや
濃赤
宝小豆 中の短 円筒 中の小 中上

2)育成地における成績(標準栽培)
系統名
または
品種名
開花

(月日)
成熟

(月日)
倒伏
程度
主茎

(㎝)
主茎
節数
(節)
分枝数
(本/株)
莢数
(個/株)
一莢

粒数
10a当り収量(㎏) 百粒

(g)
屑豆
歩合
(%)
品質
総重 子実重 比(%)
十育116号 8.3 9.11 1.7 48 12.0 1.8 33 6.4 281 172 92 11.1 4.4 中中
エリモショウズ 8.5 9.10 1.7 52 12.5 2.1 34 6.4 327 187 100 11.7 5.3 中上
ハヤテショウズ 7.31 9.4 1.3 49 12.1 2.1 38 6.3 301 187 100 11.0 4.8 中下
宝小豆 8.6 9.11 1.8 58 13.1 2.0 31 6.8 311 168 90 10.4 4.0 中中
注1)昭和57〜59年の3カ年平均。但し成熟期,品質は昭和57,59年の2カ年平均。
 2)栽植密度 8,333株/10a(60×20㎝),2本立

3)配布先における成績(栽培適地における)
 ① 地域適応性検定試験(昭和57〜59年平均)
系統名
または
品種名
中央農試 原原種農場
開花

(月日)
成熟

(月日)



(㎝)
莢数
(個
/株)
子実

(kg
/10a)


(%)
百粒

(g)
品質 開花

(月日)
成熟

(月日)



(㎝)
莢数
(個
/株)
子実

(kg
/10a)


(%)
百粒

(g)
品質
十育116号 7.31 9.14 44 38 212 81 10.8 中中 7.29 9.12 41 35 234 88 12.3 中中
エリモ
ショウズ
7.31 9.14 44 45 263 100 12.1 上上 7.29 9.10 41 38 266 100 13 上上

 ② 奨励品種決定現地調査(昭和57〜59年平均)
系統名
または
品種名
落葉病の発生:無(50箇所) 落葉病の発生:有(13箇所)
開花

(月日)
成熟

(月日)



(㎝)
莢数
(個
/株)
子実

(kg
/10a)


(%)
百粒

(g)
品質 開花

(月日)
成熟

(月日)



(㎝)
莢数
(個
/株)
子実

(kg
/10a)


(%)
百粒

(g)
品質
十育116号 7.31 9.15 56 46 219 94 11.5 中上 8.1 9.22 40 40 208 108 11.8 中中
エリモ
ショウズ
7.31 9.15 56 44 232 100 12.6 上下 8.2 9.16 45 35 192 100 11.5 中上

7.配布しうる種子量:953㎏

8.採用予定県:北海道

9.栽培適地および普及見込面積
 十勝中央部およびこれに類似の地帯で落葉病の常発地帯。(適正な輪作を行っても発生,被害のできるところ)。2,000ha。

10.栽培上の注意
 1)本系統は落葉病抵抗性をもつが栽培に当っては6年以上の輪作を前提とする。
 2)アズキ茎疫病抵抗性は“中”であるので,茎疫病による被害の恐れのある圃場への作付は避ける。
 3)「エリモショウズ」より密植効果が高いので,欠株の発生を極力防ぎ10a当り8,300株を確保する。
 4)刈遅れによる品質低下を防ぐため適期収穫を行う。