1.北育糯80号の特性概要

系統名 北育糯80号 組み合わせ 上育糯381号/おんねもち
特性  《長所》
1.障害型耐冷性が強い
2.登熟性が比較的よい
3.割籾・紅変米の発生が少ない
 《短所》
1.収量が「たんねもち」よりやや劣る
2.いもち病耐病性がやや劣る
採用県および
普及見込面積
 北海道  3,000ha
形  質
および項目
北育糯80号 対  象
おんねもち
対  象
たんねもち
出穂期の早晩性 早生の晩 早生の晩 早生の晩
成熟期の早晩性 早生の晩 早生の晩 中生の早
草  型 偏穂数型 穂数型 偏穂数型
出穂期(月.日) 8.12 8.13 8.10 8.12 8.8 8.10
成熟期(月.日) 9.29 10.1 9.29 9.30 9.30 10.2
登熟日数(日) 48 49 50 49 53 53
稈長(cm) 60 62 58 62 58 63
穂長(cm) 15.5 15.4 15.0 15.8 16.1 16.6
穂数(本/‡u) 496 544 574 633 466 569
芒性 少・極短 中・やや短 少・極短
ふ先色 黄白 黄白 黄白
脱粒性
割籾歩合(%) 1.3 4.7 5.5
耐倒伏性 やや強−強 やや強 やや強−強
障害型耐冷性 やや強 やや強
葉いもち病耐病性 中−やや強 やや強
穂いもち病耐病性 中−やや強 中−やや強 やや強
玄米重(kg/a) 42.9 45.1 40.6 40.5 45.0 48.1
収量標準対比(%) 106 111 (100) (100) 111 119
玄米千粒重(g) 19.3 19.3 19.0 19.1 19.0 18.7
玄米品質 上下 上下 上下 上下 上下 上下
玄米等級 2下 2下 2下 3上 2中 2下
食   味 中上〜上下 中上 中上〜上下
食味特性(B・U) 857 816 841
調査地 北海道立北見農業試験場(訓子府町)
調査年次 昭和61年〜63年の3カ年(中苗、標肥、多肥)
品種候補名  
1.品種系統の左欄:標肥、右欄:多肥区
2.食味特性:アミログラムの最高粘度(昭和61−63年、中苗標肥)
3.上育糯381号:たんねもち
4.食味は官能テスト、理化学特性の総合評価


2.北育糯80号の特記すべき特徴
 本系統は障害型耐冷性が強い。すなわち、障害型耐冷性は強で「おんねもち」、「たんねもち」に優る。登熟日数はほぼ「おんねもち」並に短く、登熟性が優れている。また、割籾の発生は「おんねもち」、「たんねもち」のいずれよりも少なく、紅変米の発生は「おんねもち」より少なく「たんねもち」並である。白米白度は良く、食味および加工適性は「おんねもち」よりもわずかに優れている。

3.北海道で奨励品種に採用する理由
 「おんねもち」は昭和45年に奨励品種に採用され道東および道北地帯の糯の基幹品種としての役割を果たしてきたが、糯品種は集団で栽培される所が多く、特定品種にかたより、刈取り期が、一時期に集中する。「おんねもち」は割籾の発生が多いため、刈取り適期幅が狭く、刈遅れると紅変米や着色粒の発生が多くなり品質面に問題がある。また、「たんねもち」は登熟期間が長いため、成熟期が「おんねもち」より遅く、道東、道北などでは遅延型冷害を助長する危険性が大きい。「北育糯80号」は成熟期が、「おんねもち」並で、「たんねもち」よりも早く、障害型耐冷性は「おんねもち」、「たんねもち」より強い。さらに「おんねもち」に比べ、割籾の発生が少なく、紅変米の発生も少ない。
 「北育糯80号」は主に「おんねもち」が栽培されている道東および道北の全域と道央部の山間地帯並びにこれらに準ずる地帯の「おんねもち」、「たんねもち」の一部に代えて栽培し、当該地帯における良質糯米の安定生産を図る。

4.普及見込地帯
(1)栽培地帯:網走、十勝、留萌北部および上川北部の全域と留萌中南部。上川中南部、空知、石狩、後志、桧山北部および渡島北部の山間地帯並びにこれらに準ずる地帯。
(2)対象品種:「おんねもち」、「たんねもち」の一部
(3)普及見込面積:3,000ha