1.課題の分題
2.場所名  北海道立北見農業試験場
3.新品種候補系統名  二条大麦北育19号

4.来歴
 「二条大麦北育19号」(以下「北育19号」と略す)は、二条大麦の奨励品種「ほしまさリ」の耐倒伏性と醸造品質の改良を目的として、昭和51年に北海道立北見農業試験場において、「新田二条1号」を母とし、「北育15号」を父とする人工交配を行い、以後選抜、固定を図ってきた系統である。昭和54年には「北系54138」として生産力検定予備試験を実施し、昭和58年からは「北育19号」の地方番号を付して生産力検定試験を実施すると共に、関係機関に配布し、同時に特性検定試験を実施し、更に、現地試験に編入し、地方適否を検討してきた。昭和61年からは大規模醸造試験を実施して、現場規模での醸造適性を検討してきた。昭和63年度における世代はF15である。

5.特性
 株は閉じており、稈長は「ほしまさリ」より短く“中”であり、稈の細太は「ほしまさリ」よリ細く“中”である。葉色は「ほしまさリ」よりやや淡く“やや混”に属する。「ほしまさリ」に比べ、穂長は同等の“中”であるが、穂数は多く、一穂粒数はやや少ない。穂型は矢羽根型で、穂の抽出度は「ほしまさリ」よリ少なく“中”である。穂には長芒があり、ふの色ば“淡黄”である。粒形は“やや長”で、粒の大小は「ほしまさリ」よりやや小さく“やや大”である。殻皮の厚さは「ほしまさり」よりやや薄く“中”である。千粒重は「ほしまさリ」よりやや小さく“やや大”で、リットル重は「ほしまさり」よりやや小さく“中”である。原麦粒の見かけの品質は“中の中”である。
 「ほしまさり」と同様中生種に属するが、出穂期、成熟期は共に3日程度遅い。耐倒伏性は「ほしまさり」より強く“やや強”である。雲形病抵抗性は「ほしまさリ」と同等の“中”であり、網斑病抵抗性は「ほしまさリ」よりやや弱く“やや弱”に属する。子実重、整粒歩合は「ほしまさリ」と同等である。
 麦芽エキス、エキス収量とも「ほしまさリ」よリ多い。麦芽粗蛋白質含量は「ほしまさリ」よリやや少ない。可溶性窒素含量は「ほしまさり」よりやや多く、コールバッハ数は「ほしまさリ」よりやや大きい。全窒素当たりジアスターゼカは「ほしまさリ」と同等で、最終発酵度は「ほしまさリ」よりやや多い。麦芽品質総合評点は「ほしまさリ」よリ優れている。

6.試験成績

1) 育成地における試験成績
品種名
系統名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
耐伏
程度
子実重
(kg/a)
同左比率
(%)
千粒重
(g)
整粒歩合
(%)
粗蛋白質
(%)
外観
品質
北育19号 7.11 8.12 93 6.3 580 39.6 100 43.2 82.3 13.5 中中
ほしまさり 7.8 8.9 102 6.2 519 39.6 100 45.3 79.5 15.3 中上
注)標準栽培による昭和58〜63年、6カ年の平均値。


2) 特性検定
品種名
系統名
耐倒伏性(昭和58〜63) 雲形病抵抗性(昭和58) 網斑病抵抗性(昭和60〜63)
圃場倒
伏程度
倒伏
指数
cLr 判定 発病度
(%)
発葉率
(%)
判定 発病度
(%)
発葉率
(%)
判定
北育19号 1.43 5.34 やや強 13.6 33.0 7.6 86 やや弱
ほしまさり 1.73 4.20 やや弱 15.6 40.0 5.0 65


3)醸造品質(麦芽品質)
品種名
系統名
麦芽
エキス
(%)
エキス
収量
(%)
麦芽
全窒素
(%)
可溶性
窒素
(%)
コール
バッハ
数(%)
ジアスターゼカ 最終
発酵度
(%)
麦芽
評点
(゜WK) (゜WK/TN)
北育19号 79.9 73.7 2.07 0.97 46.8 326 157 82.3 44.3
ほしまさり 76.8 70.8 2.32 0.86 37.8 378 163 80.5 16.6
注1)数字は北見農試での昭58〜62産サンプルの分析値(サッポロビール株式会社植物開発研究所分析)。
 2)各項目中、麦芽全窒素は低い値、他の項目は高い値が優れる。


4)普及見込み地帯における試験成績

試験地 品種名
系統名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
耐伏
程度
子実重
(kg/a)
同左
比率
(%)
千粒重
(g)
整粒
歩合
(%)
粗蛋
白質
(%)

網走市 北育19号 7.1 8.8 98 6.2 705 48.7 108 44.7 88.7 11.3
ほしまさり 6.29 8.6 109 6.1 604 45.2 100 46.6 88.2 12.3
端野町 北育19号 7.4 8.5 84 6.1 528 43.6 97 45.9 92.1 11.1
ほしまさり 6.30 8.1 103 6.1 515 44.8 100 48.4 92.9 11.8

上富良野町 北育19号 6.30 8.5 66 6.3 546 37.2 106 48.3 91.4 11.7
ほしまさり 6.27 8.1 82 6.2 523 35.0 100 50.6 92.9 13.0
注)標準栽培による。
 網走市、端野町は昭和58〜63年、6カ年の平均、上富良野町は昭和58〜60年、62〜63年の5カ年平均。


7.配布し得る種子量
 原原種 199kg、 原種 4,100kg、 その他 2,510kg

8.適地及び普及見込み面積
 北海道の二条大麦子実用栽培地帯 3,700ha

9.栽培上の注意
 (1)種子消毒は従来の品種同様に行う。
 (2)従来の品種同様、早期播種を励行する。
 (3)耐倒伏性は従来の品種より強いが、品質の低下を招くので窒素増施を避ける。
 (4)かんばつの条件下では減収することがある。