1.特性一覧表 北海道立上川農業試験場
系統名 | 道北52号 | 交配組み合せ | 永系84 271*/キタアケ | |||||
特性 | 長所 | 短所 | ||||||
1.粘りが強く良食味 | 1.いもち病耐病性が弱い | |||||||
2.アミロース含有率が低く加工適性が すぐれる |
2.やや少収 | |||||||
3.玄米品質がやや劣る | ||||||||
採用予定県および 普及見込面積 |
北海道 300ha | |||||||
調査地 | 上川農業試験場(旭川市) | 植物遺伝資源センター(滝川市) | 深川市 | |||||
調査年次 | 昭和63〜平成2年(中苗標肥) | 昭和63〜平成2年(中苗標肥) | 平成元〜2年(成標) | |||||
系統・品種名 形質 |
道北 52号 |
ユーカラ | ゆき ひかり |
道北 52号 |
ユーカラ | ゆき ひかり |
道北 52号 |
ユーカラ |
出穂期の早晩性 | 中生の晩 | 晩生の早 | 中生の早 | 晩生の早 | 晩生の早 | 中生の早 | 中生の晩 | 晩生の早 |
成熟期の早晩性 | 中生 | 中生 | 中生 | 中生の晩 | 晩生の早 | 中生の早 | 中生の晩 | 晩生の早 |
草型 | 穂数型 | 偏穂数型 | 偏穂数型 | 穂数型 | 偏穂数型 | 偏穂数型 | 穂数型 | 偏穂数型 |
出穂期(月、日) | 8.5 | 8.6 | 7.31 | 8.7 | 8.7 | 7.31 | 7.31 | 8.2 |
成熟期(月、日) | 9.24 | 9.24 | 9.24 | 9.23 | 9.24 | 9.18 | 9.15 | 9.16 |
登熟日数(日) | 50 | 50 | 56 | 47 | 48 | 49 | 46 | 45 |
稈長(㎝) | 68 | 65 | 64 | 63 | 63 | 60 | 70 | 68 |
穂長(㎝) | 16.7 | 17.8 | 17.5 | 16.5 | 17.3 | 17.7 | 18.5 | 18.6 |
穂数(本/㎡) | 702 | 693 | 624 | 652 | 597 | 581 | 473 | 448 |
芒の多少・長短 | 中短 | 無 | 中短 | 中短 | 無 | 中短 | 中短 | 無 |
ふ先色 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 |
脱粒性 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 |
耐倒伏性 | 中 | 強 | 中 | |||||
障害型耐冷性 | 中〜や強 | 中 | 強 | |||||
葉いもち病耐病性 | 弱 | 弱 | や弱 | |||||
穂いもち病耐病性 | 弱〜や弱 | 弱 | 中 | |||||
玄米重(㎏/a) | 59.1 | 60.2 | 61.9 | 57.5 | 59.5 | 57.8 | 54.7 | 56.5 |
玄米量標準比(%) | 98 | 100 | 103 | 97 | 100 | 97 | 97 | 100 |
玄米千粒重(g) | 23.3 | 22.5 | 21.8 | 22.8 | 21.9 | 21.4 | 23.9 | 23.5 |
玄米等級 | 2 | 1下 | 2上 | 2下 | 2上 | 2 | 2 | 1 |
玄米品質 | 上下 | 上下 | 上下 | 上下 | 上中 | 上下 | − | − |
食味 | 上中 | (上下) | 上中 | 上中 | (上下) | 上中 | 上中 | (上下) |
アミロース合量% | 15.1 | 23 | 19.9 | 14.4 | (22.4) | 20.2 | 14.1 | (21.8) |
蛋白含量% | 7.4 | 7.6 | 7.7 | 7.6 | (7.6) | 7.8 | 7.3 | (7.3) |
アミログラム | 418 | 395 | 420 | − | − | − | − | − |
最高粘度(B.U.) | 618 | − | 525 | 612 | (492) | 525 | 657 | (549) |
2.「道北52号」の特記すべき特徴
粘りは「コシヒカリ」より強く、良食味であり、アミロース含有率が低く加工適性がすぐれる。
3.奨励品種に採用しようとする理由
近年の北海道米の食味は「ゆきひかリ」や「きらら397」に代表されるように府県の食味
米の域に近づきつつある。しかし、宮城産「ササニシキ」や新潟産「コシヒカリ」など日本を代表する良食味米とは差があり、この差をちぢめることが北海道稲作の将来にとって重要な課題である。
「道北52号」は平年の気象条件下では新潟産の「コシヒカリ」と同程度のアミロース含有率を示し、炊飯米はつやがあり粘りが極めて強く、その食味は新潟産の「コシヒカリ」に近いと評価される。このため、北海道産米の声価を高めるのに役立つと考えられる。また、「道北52号」はせんぺいや米粉団子などの加工適性がすぐれ、道産米の需要拡大にも貢献できる可能性がある。
北海道中央部の深川市とその周辺は、良質であるが晩生でいもち病耐病性が弱い「ユーカラ」を作付けし北海道唯一の3類米を生産してきた。しかし、近年、その「ユーカラ」は良食味品種の登場により相対的な食味が低下し、作付けは急激に減少した。このため、「ユーカラ」に替わる地域特産物的な戦略品種を要望している。「道北52号」は、いもち病耐病性は「ユーカラ」並に弱いが、出穂、成熟期は「ユーカラ」よりやや早く、良食味である。この、良食味を生かし、晩生でいもち病に弱い品種の安定栽培技術を持っている深川市とその周辺に限定して奨励品種に採用したい。
4.普及見込み地帯
1)栽培地帯 北海道空知北部の良地帯で、いもち病の発生が少なく、「ユーカラ」の栽培実積があった所。
2)対象品種 「ユーカラ」の全部と「ゆきひかり」の一部
3)普及見込み面積 300ha