4.来歴
　「菜豆十育A52号」(以下「十育A52号」と略す)は、炭そ病抵抗性で良質、多収の手亡類品種の育成を目標とし、昭和58年に北海道立十勝農業試験場(冬季温室)において「十育A40号」を母、「82HW・B1F1」を父として人工交配し、以後選抜、固定を図ってきた系統である。昭和58〜60年に隔離圃場または温室において炭そ病菌の人工接種により抵抗性個体を選抜した。昭和62年には「十系A154号」の系統番号を付し生産力検定予備試験に供し、平成元年から「十育A52号」の系統名で生産力検定試験、道内関係機関の地域適応性検定試験および特性検定試験等に供し、さらに平成2年から道内各地の奨励品種決定現地調査に供してきた系統で、平成3年にはF10である。

5.特性
　胚軸の色は緑で、伸育性と草型は有限叢性、草丈は高、主茎節数は中である。花色は白で、莢の長さは短、幅は中、硬軟は硬である。若莢の地色は淡緑、斑紋の色は赤紫で「姫手亡」と同じであるが、斑紋の種類は「姫手亡」の全に対し、斑である。一莢内粒数は少で、子実の大小は小、形は楕円体、子実の斑紋の種類は無である。種皮の地色は白、環色は無である。
　開花期および成熟期は「姫手亡」並みの中である。耐倒伏性は中、子実収量は「姫手亡」と同じ中であるがやや多収である。炭そ病抵抗性は「姫手亡」の弱に対し、強である。ウィルス病の黄斑モザイク病およびモザイク病に対する抵抗性は「姫手亡」同様に弱である。低温抵抗性は「姫手亡」と同じくやや強である.
　アミログラム粘度は「十育A52号」がやや高いが、原料豆の種皮歩合、煮熟および製アン特性は「姫手亡」とほぼ同様であり、また、加工製品の試作試験および官能試験における結果から、加工適性は「姫手亡」と同等である。

6.試験成績
1)育成地における試験成績

系統名 または品種名	開花期 (月日)	成熟期 (月日)	倒 伏 程 度	葉 落 良 否	草丈 (cm)	主 茎 節 数	分枝数 (本/株)	莢数 (莢/株)	一莢内 粒数	子実重 (kg/10a)	標準 対比 (%)	百粒重 (g)	品 質	炭そ病 抵抗性
十育A52号	7.22	9.13	2	2	58	9.8	5.5	28.6	4.55	362	105	32.7	1	強
姫手亡	7.22	9.13	2	3	53	9.4	5.7	29.6	4.38	344	100	32.7	2下	弱

注1)試験年次は平成元年〜3年。2)標準播きによる。3)品質は検査等級である。

2)普及見込み地帯における試験成績
①地域適応性検定試験成績

試験場所	系統名 または品種名	成熟期 (月日)	子実重 (㎏/10a)	標準対比 (%)	百粒重 (g)	品質
北見農試	十育A52号	9.17	354	108	35.3	1
	姫手亡	9.16	328	100	34.3	2上
上川農試	十育A52号	8.30	241	111	25.9	2上
	姫手亡	8.28	218	100	25.3	3中
遺伝資源 センター	十育A52号	8.19	249	110	27.2	2中
	姫手亡	8.19	227	100	26.7	2下

注)試験年次は平成元年〜3年

②奨励品種決定現地調査等

試験場所	系統名 または品種名	成熟期 (月日)	子実重 (㎏/10a)	標準対比 (%)	百粒重 (g)	品質
十勝中部	十育A52号	9.11	369	110	32.1	2中
	姫手亡	9.11	334	100	31.2	2下
十勝山麓	十育A52号	9.12	328	107	30.7	2中
	姫手亡	9.11	306	100	29.2	3上
十勝沿海	十育A52号	9.16	354	119	32.3	2中
	姫手亡	9.16	298	100	31.5	3上
網走内陸	十育A52号	9.16	398	103	33.3	3上
	姫手亡	9.16	386	100	32.7	3上
道央沿海	十育A52号	9.12	335	108	31.1	2上
	姫手亡	9.13	311	100	29.8	2下
道央中部	十育A52号	9.8	379	102	34.3	3下
	姫手亡	9.9	371	100	31.7	3下
道央 北部道北	十育A52号	9.7	294	95	29.9	2下
	姫手亡	9.7	311	100	29.2	3中

注1)試験年次は平成2年〜3年。
　2)試験箇所数は十勝中部：5、十勝山麓：4、十勝沿海：3、網走内陸：3、網走沿海：1、道央中部：1、
　道央北部・道北：2

7.配布しうる種苗量　　原原種：80㎏、原種：1,500㎏、その他：20㎏

8.適地および普及見込み面積　　北海道一円　3,000ha

9.栽培上の注意
　1)インゲン炭そ病の茎葉防除は不要である。
　2)その他の病害防除と肥培管理は、従来の品種に準じて行う。