1.課題の分類
2.場所名  北海道立中央農業試験場畑作第1科
3.新品種候補系統名  菜豆「中育F12号」

4.来歴
 菜豆「中育F12号」は、昭和55年に北海道立中央農業試験場において、大粒、良質、多収の大福類品種の育成を目標にして、早生の「中交5407F2」を母本に、晩生、良質、大粒の「大福」を花粉親として交配したものである。なお、「中交5407F2」は昭和49年度から、早生の「BO19」に「大福」を交配した後代に「大福」を3度戻し交配したものである。
 中交5503のF1代は圃場で養成し、F2〜F4代は集団選抜を、F5代は個体選抜を行った。F6代以降は系統選抜を行い、固定を図ってきたものである。昭和62年から中交5503-7の名で生産力検定予備試験に供試してきたが、収量は「改良早生大福」と同程度で、成熟期が「改良早生大福」よりやや遅いが「大福」より早く大粒であったことから、平成元年からは「中育F12号」の系統名を付して生産力検定試験に供試するとともに、特性検定試験、地域適応性検定試験、奨励品種決定現地調整等並びに加工適正試験に供試してきたものである。平成3年における世代はF11である。

5.特性
 伸育性と草型は無限つる性に属し、主茎長は「改良早生大福」並と長い。胚軸の色は緑、花色は白、莢の硬軟は硬で「改良早生大福」と同じである。
子実は腎臓形(大福類はいずれも偏平であり、当該系統も同じである)であり、粒大は「改良早生大福」より大きく「大福」と同程度の中の大に属する。種皮の地色は白で、斑紋はない。
 開花期は、7月中下旬であり、「改良早生大福」と同時期である。成熟期は、8月下旬〜9月上旬で「改良早生大福」と同時期で「大福」より10日早い“中生”に類別される。子実収量は、「改良早生大福」と同じく“中”であるが同品種比では92%とやや劣る。しかし、9.1㎜の節でふるった規格内収量は「改良早生大福」比163%と多収となる。
 インゲンモザイク病及びインゲン黄斑モザイク病に対する抵抗性は、「改良早生大福」、「大福」と同じく“弱”である。
 子実の外観品質は「改良早生大福」と差がない。種皮の厚さは「改良早生大福」と同様に「大福」より薄い。種皮歩合は「大福」より低いが「改良早生大福」より高い。加工適性に関して甘納豆の場合、試作試験では「改良早生大福」に比べ、製品収量がやや多<、大きさ、色が共にすぐれているがやや風味に欠けるとの評価であった。その製品の官能試験結果は、「改良早生大福」より色、粒ぞろいで優る傾向で総合評価は同程度であった。煮豆の場合試作試験結果は、平成元年産は両品種系統とも評価にほとんど差が無かったが、平成2年産では「改良早生大福」と比較して製品収量はほとんど変わらず、色沢、光沢はやや劣るが、舌ざわり、風昧でやや優るとの評価であった。その製品の官能試験結果も同様な傾向が現れ、総合評価では「改良早生大福」と同程産の評価であった。
 全体的には、煮豆、甘納豆の原料として「改良早生大福」と同程度の加工適性を有する。

6.試験成績
試験場所 系統名
または品種名
開花期
(月日)
成熟期
(月日)
着莢数
(個/株)
子実重
(㎏/a)
標準
対比
(%)
篩選
規格内率
(%)
規格内
収量
(㎏/a)
百粒重
(g)
屑豆
歩合
(%)
品質
(等級)
中央農試 中育F12号 7.17 9.3 32 21.1 92 86.3 18.3 72.8 7.5 3
改良早生大福 7.17 9.3 35 23.0 100 48.7 11.2 63.2 4.5 3
大福 7.21 9.13 32 24.4 106 93.4 22.7 77.7 3.8 2
北見農試 中育F12号 7.20 9.24 28 41.4 101 - - 87.8 3.2 2上
改良早生大福 7.19 9.23 29 40.8 100 - - 76.2 1.7 2上
大福 7.21 10.2 29 44.4 109 - - 90.2 3.0 2中
虻田町 中育F12号 7.12 8.23 51 31.8 98 91.5 29.0 78.2 6.5 2上
改良早生大福 7.9 8.17 55 32.3 100 57.2 18.6 65.8 6.0 2下
大福 7.15 8.27 48 33.3 103 91.5 30.6 79.2 6.2 3上
壮暼町 中育F12号 7.19 9.5 37 25.0 100 88.8 22.1 74.7 5.9 3
改良早生大福 7.18 9.3 34 24.9 100 38.9 10.2 62.6 5.8 2
大福 7.19 9.8 34 24.2 97 84.6 20.7 71.5 5.4 3
留辺蘂町 中育F12号 7.28 - 38 33.5 113 - - 87.4 6.2 2下
改良早生大福 7.25 - 37 29.6 100 - - 70.9 6.5 2下
注1)試験年次は、平成元年から平成3年の3か年平均。ただし、留辺蘂町は平成2年と平成3年の2か年平均。
 2)篩選規格内率は、唐箕選後の試料を9.1㎜の篩でふるい屑豆を除去して篩上に残った割合である。

7.配布しうる種子量原原種20㎏、原種120㎏

8.遠地、奨励の態度および普及見込み面積
 北海道一円で「改良早生大福」及び「大福」の一部に置き代える。
 普及見込み面積は450haである。

9.栽培上の注意
 各種の病害に対しては耐病性がないので無病種子の使用につとめ、防除を励行する。