水稲新品種候補系統
                    〝上育413号の特性概要〟
                                             北海道立上川農業試験場

1.特性一覧表
系統名 上育413号 交配組合せ 上育395号、はやまさり/上育397号、きらら397
特性 《長所》
 ①直播栽培向(極早生、苗立ち性)
 ②食味
《短所》
 ①登熟がやや遅い
 ②耐倒伏性がやや劣る
採用予定県および
普及予定面積
  北海道300ha
調査地   上川農業試験場(旭川市)
調査年次   平成2年〜4年の3カ年
系統・品種名

形質
上育413号 対象
はやまさり
比較
ハヤカゼ
参考
ゆきひかり
(移植栽培標肥区)
出穂期の早晩性
成熟期の早晩性
極早生
早生の中
極早生
早生の中
早生の早
早生の早
中生の早
中生の中
穂数型 穂数型 穂数型 穂数型 偏穂数型
出穂期(月・日)
成熟期(月・日)
登熟日数(日)
8.2
9.14
43
7.23
9.11
50
8.1
9.12
42
7.22
9.11
51
8.5
9.14
40
7.27
9.8
43
7.30
9.17
49
稈長(㎝)
穂長(㎝)
穂数(本/㎡)
1穂平均籾数
苗立ち歩合(%)
51
13.4
1048
34.2
65.6
53
14.4
727
50.4
-
49
14.7
1071
31.7
66.2
53
15.3
725
48.5
-
57
12.6
1003
33.7
56.7
57
14.9
678
56.1
-
59
17.3
611
62.7
-
芒の多少・長短
ふ先色
脱粒性
稀 極短
黄白

黄白

黄白
中 短
黄白
低温苗立ち性
耐倒伏性
障害型耐冷性
葉いもち病耐病性
穂いもち病耐病性
や良
中〜や強
や強

や良
や強
や強
や強

や強






玄米重(kg/a)
玄米重標準比(%)
玄米千粒重(g)
玄米等級
玄米品質
42.8
115
20.6
2上
上下上
55.2
112
21.4
1下
上下上
37.2
100
21.1
2中
上下中
49.1
100
21.4
1下
上下中
46.8
126
20.5
2上
上下中
56.5
115
21.1
2上
上下中
54.1
110
20.6
2上
上下上
食味
アミロース含量(%)
蛋白含量(%)
上中中
20.5
7.5


上下中
21.2
8.2


上下上
20.8
7.4


上中中
20.6
7.3
アミログラム
最高粘度(B.U.)
493 433 435 455
注1)左欄は直播栽培(条播区)、右欄は移植栽培(標肥区)のデータ。
  2)出穂期および成熟期の早晩性は移植栽培のデータに基づく。

 

2.「上育413号」の特記すべき特徴
 極早生、良食味で、苗立ち性が優れ、直播栽培に向く。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 現在、北海道の稲作は、担い手不足による就農者の高齢化およびこれに付随する離農、経営の委託等による一戸当りの経営面積の拡大と農地の分散、転作作物との労働の競合などから、稲作作業の省力化が強く要望されている。また、米の輸入自由化問題、国内の産地間競争の激化などから、生産コストの低減は緊急を要する課題である。
 北海道では、昭和63年に直1播栽培向品種として「はやまさリ」が優良品種に採用され、翌年の平成元年には、上川中央部を対象にした「湛水直播栽培暫定基準」が指導参考として採用されるなど、育種、栽培の両面から省力、低コストの生産技術としての直播栽培の安定化に向けた取リ組みが行われてきた。「はやまさり」は極早生で、苗立ち性がそれまで直播栽培に使われてきた「キタアケ」などの移植裁培向品種に比べ優っていたことから、直播栽培の実定化に寄与している。しかし、「きらら397」「ほのか224」「ゆきひかリ」の育成により、品質、食味の水準が向上した中で品質、食味が劣り、このことが、直播裁培面積の伸び悩む一因となっている。
 「上育413号」は、出穂期は「はやまさり」よりやや晩い極早生であるが、登熟がやや遅く成熟期は「ハヤカゼ」並となる。苗立ち性は「はやまさリ」並、食味は「ゆきひかリ」並で「はやまさり」に優リ、品質も良い。.
 したがって、「上育413号」を「はやまさり」の大部分に置き替え、かつ、拡大することによって北海道における直播栽培の定着を図る。

4.普及見込み地帯および面積
(1)栽培地帯…上川(中南部)、留萌(中南部)、石狩、空知、後志、胆振、日高、渡島、
         檜山の各支庁管内の良地帯
(2)対象品種…「はやまさリ」の大部分
(3)普及見込み面積…300ha