新品種候補(作成 平成7年1月)
1.課題の分類
2.場所名  北海道立十勝農業試験場
3.新品種候補系統名  スイートコーン(加工用)「十生26号」

4.来歴
 「十生26号」は、北海道立十勝農業試験場とホクレン農業協同組合連合会との間の共同研究により、十勝農試育成の耐倒伏性で組合せ能力の高い自殖系統「Tos10」を種子親とし、ホクレン農業協同組合連合会がアメリカのアズグロシ−ド社から導入した加工適性に優れた自殖系統「87:14」を花粉親として、昭和62年に交配・育成したスイート種の単交配一代雑種である。昭和63年に、ホクレン農業協同組合連合会で実施した生産力検定予備選抜試験から選抜し、平成元年より十勝農業試験場、ホクレン農業協同組合連合会、北海製缶株式会社缶詰研究所において生産力検定予備試験を開始した。平成3年から「十生26号」の系統番号を付して、道内の各試験機関で、また、平成4年からは奨励品種決定現地試験に供試し適応性を検討してきた。平成3年から十勝農業試験場、北海道農業試験場、また、平成4年から岩手県立農業試験場においてすす紋病抵抗性検定試験を行い、平成3年から北海道農業試験場においてごま葉枯病抵抗性検定試験を行った。平成3年よりホクレン農業協同組合連合会において粒の成分分析と加工適性の検定を行った。

 

5.特性の概要(標準品種:「メロディスイート」、比較品種:「リワード」「スイートメモリー」)
【長所:①収量性に優れる②耐到伏性に比較的優れる】
 1)発芽および初期生育:発芽期は「メロディスイート」並かやや早く、初期生育はやや勝る。
 2)熟期:絹糸抽出期は「リワード」より4日程度遅く、「メロディスイート」より1〜2日、「スイートメモリー」より2〜3
  日早い。収穫期と収穫時の果粒水分からみると、収穫適期は「リワード」より4日程度遅く、「メロディスイート」
  より2日程度、「スイートメモリー」より4日程度早い。熟期は“中生の早”に属する。
 3)耐倒伏性:耐倒伏性は「メロディスイート」に比べ劣るが、「スイートメモリー」に比べ同等程度で、「リワード」
  に比べ明らかに勝る。
 4)収量性:剥皮雌穂重は「メロディスイート」より明らかに多く、「スイートメモリー」に比べると、道東で多く、
  道央・道南で同等か少ない傾向にある。果粒収量は「メロディスイート」より多く、「スイートメモリー」よりやや
  多い。
 5)茎葉の特性:「メロディスイート」に比べ、稈長は低く、着雌穂高は高い。稈径は同程度である。全葉数は
  約14枚で「メロディスイート」より少ない。分げつ数は「メロディスイート」よりやや多い。
 6)雌穂の特性:穂芯長は「メロディスイート」より長く、「スイートメモリー」よりやや長い。雌穂長は「メロディスイ
  ート」より長く、「スイートメモリー」並である。粒列数は17〜18行、雌穂形は中間形である。なお、雌穂が
  わずかに曲がる個体が混在し、年次によって増加することがあるが、加工上問題となるものではない。
 7)加工適性:粒色は黄色、粒形は長方形である。穂芯は他の品種に比べやや太く、断面形は丸である。全糖
  含量は「メロディスイート」より高く、「スイートメモリー」並である。果粒歩留は「メロディスイート」「スイート
  メモリー」より高い。
 8)缶詰加工品質:ホールカーネルに加工したときの品質は、色は「メロディスイート」「ジュビリー」より優れ、
  香味・食感は「メロディスイート」並で、「ジュビリー」よりやや劣る。平均では「メロディスイート」より優れ、
  「ジュビリー」並である。
 9)耐病性:すす紋病抵抗性は「メロディスイート」より弱く、「ジュビリー」より強い。
10)採種性:採種量は種子親対花粉親の畦比が2:1で180㎏/10a程度が見込まれる。
11)用途:缶詰加工用

 

6.主要成果の具体的数字

表1  育成地および主な試験機関における成績
場所 品種・
系統名
発芽期
(月日)
初期
生育
(1-5)
絹糸
抽出期
(月日)
収穫期
(月日)
果粒
水分
(%)
倒伏
折損
剥皮
雌穂重
(㎏/10a)
比率
(%)
穂芯長
(㎝)
雌穂長
(㎝)
粒列数
(行)
粒形
(1-5)
十勝農試 十生26号 5.25 1.5 8.6 9.3 72.8 1.6 1038 119 19.2 15.5 17.6 3.3
メロディスイート 5.26 2.3 8.8 9.5 73.0 0 874 100 16.7 13.3 16.1 3.1
スイートメモリー 5.27 1.8 8.8 9.5 74.6 0.3 954 109 17.8 14.8 16.3 3.1
リワード 5.26 2.1 8.3 9.1 71.9 31.7 850 97 17.9 14.3 17.8 3.3
ホクレン 十生26号 5.25 1.4 8.4 8.30 73.3 1.3 1343 123 21.2 19.2 17.6 -
メロディスイート 5.25 2.1 8.5 8.31 72.5 0.0 1089 100 18.4 16.3 16.0 -
スイートメモリー 5.26 1.8 8.5 9.1 72.6 2.1 1393 128 20.2 18.7 16.4 -
リワード 5.25 2.1 7.31 8.26 72.9 9.4 1168 107 19.9 17.1 18.0 -
上川農試 十生26号 5.29 1.6 7.29 8.22 72.7 0.0 1238 105 19.7 16.6 17.2 -
メロディスイート 5.29 1.8 7.30 8.23 74.3 0.0 1176 100 17.5 15.7 16.1 -
スイートメモリー 5.29 1.5 8.1 8.25 72.5 0.4 1287 109 18.9 17.2 16.4 -
北見農試 十生26号 5.31 1.5 8.14 9.11 73.5 5.0 1330 110 19.5 17.2 17.6 -
メロディスイート 6.1 2.4 8.15 9.13 73.2 0.0 1212 100 18.4 16.7 15.9 -
スイートメモリー 6.3 2.2 8.16 9.14 73.6 2.1 1287 106 19.1 17.3 16.4 -
北海道
農試
十生26号 5.26 1.3 7.29 8.22 (72.3) 5.4 1263 117 21.4 19.8 17.5 -
メロディスイート 5.28 2.7 7.31 8.23 (71.8) 0.5 1079 100 19.1 18.1 16.0 -
スイートメモリー 5.28 2.0 8.1 8.24 (75.8) 2.9 1219 113 20.7 20.3 16.4 -
中央農試 十生26号 (6.3) 1.9 8.6 8.31 (71.0) (0.2) 1393 109 19.9 16.9 17.3 -
メロディスイート (6.4) 2.3 8.7 9.1 (71.7) (0.0) 1278 100 17.7 15.8 15.5 -
スイートメモリー (6.5) 2.0 8.7 9.2 (72.4) (0.2) 1662 130 19.5 18.2 16.2 -
道南農試 十生26号 5.27 2.1 7.31 8.23 73.1 0.7 1173 115 20.1 17.8 16.8 -
メロディスイート 5.28 2.7 8.3 8.29 70.0 0.0 1022 100 17.6 15.8 16.0 -
スイートメモリー 5.29 2.8 8.3 8.29 72.9 2.2 1163 114 19.1 17.5 15.9 -
遺伝資源
センター
十生26号 5.27 2.0 8.2 8.30 - 0.8 1307 116 20.5 17.7 17.3 -
メロディスイート 5.27 3.1 8.3 9.1 - 0.3 1128 100 18.2 16.4 15.8 -
スイートメモリー 5.28 3.3 8.4 9.3 - 0.9 1425 126 20.1 18.9 16.4 -
北海製缶 十生26号 6.6 1.3 8.2 8.26 72.2 1.8 1444 124 21.0 18.3 17.9 3.4
メロディスイート 6.6 1.7 8.2 8.26 72.4 0.0 1168 100 18.0 16.3 16.0 3.1
スイートメモリー 6.7 1.2 8.3 8.28 72.5 0.0 1560 134 20.0 18.0 16.6 3.5
注1)平成3年〜6年の平均。ただし、道南農試は平成3,5,6年、遺伝資源センターは平成3〜5年の平均
  2)初期生育は1:良〜5:不良、粒形は1:方円,2:方形,3:長方,4:くさび,5:長くさびで示す。
  3)遺伝資源センターの倒伏折損は指数(0:無〜5:甚)で示す。
  4) ( )は欠測年を除いた平均値。

 

表2  果粒収量、加工適性および缶詰(ホールカーネル)加工品質
品種・系統名 収量(kg/10a) 果粒歩留
(%)
生果粒特性 缶詰官能検査
果粒量 比率(%) 水分(%) 全糖(%) 硬さ(kg) 香味 食感 平均
十生26号 787 138 58.3 73.3 3.7 4.0 3.4 2.7 2.7 3.0
メロディスイート 569 100 51.5 72.4 3.4 3.9 3.0 2.6 2.6 2.7
スイートメモリー 754 133 53.9 73.6 4.0 4.5 3.1 2.9 2.9 3.0
リワード 713 125 60.5 72.3 2.9 3.5 3.0 2.2 2.4 2.5
ジュピリー - - 47.9 73.4 4.2 3.3 3.0 3.0 3.0 3.0
注1)ホクレンによる調査、平成3年〜6年の平均。
  2)官能評価点5:良〜3:標準〜1:不良、「ジュビリー」を標準とする。

 

7.配布しうる種子量
  自殖系統:「Tos10」 0.4kg
         「87:14」F1採種に必要な種子量は契約にのっとり常に確保可能である。
  単交配:「十生26号」 48kg

8.普及対象地域および普及見込み面積
  全道一円  1500ha

9.栽培上の注意