水稲新品種候補  「空育150号」の特性概要  北海道立中央農業試験場稲作部育種科

1.特性一覧表 穂いもち耐府性
系統名 空育150号 組合せ:上育394号/空育133号
特性 長所 短所
1.良質、良食味
2.障害型耐冷性が強い
1.耐倒伏性が不十分
採用県および普及見込面積 北海道 40,000ha
調査地 中央農業試験場稲作部(岩見沢市) 上川農業試験場(旭川市、比布町)
調査年次 平成5年〜平成7年(中苗標肥) 平成5年〜平成7年(中苗標肥)
形質\系統・品種名 空育150号 ゆきひかり
(対象品種)
きらら397
(対象品種)
空育150号 ゆきひかり
(対象品種)
きらら397
(対象品種)
出穂期の早晩性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早
成熟期の早晩性 中生の阜 中生の早 中生の中 中生の早 中生の早 中生の早
草型 穂数型 偏穂数型 穂数型 穂数型 偏穂数型 穂数型
出穂期(月日) 8.7 8.5 8.9 7.31 8.4 8.1
成熟期(月日) 9.22 9.22 9.25 9.18 9.22 9.20
登熟日数(日) 46 48 47 49 49 50
桿長(cm) 59 55 59 66 69 62
穂長(cm) 16.7 16.8 16.2 16.7 17.4 15.8
穂数(本/㎡) 473 441 528 685 619 684
芒性 稀短 中短 稀短
ふ先色 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 中〜や強
障害型耐冷性 や強
いもち病真性抵抗性    
推定遺伝子型 Pi-a,i Pi-a Pi-i,k
葉いもち耐病性 や強 や弱〜中 や強
や強 や強
玄米重(㎏/a) 47.4 44.8 45.4 52.1 50.8 51.7
同上標準比(%) 106 (100) 101 103 (100) 102
玄米千粒重(g) 22.3 21.1 23.0 20.6 19.6 21.6
玄米等級 1下 2上 2中上 1下 1中下 1中下
玄米品質 上下上 上下 上下上 上下上 上下上 上下上
食味 上中上 上中 上中上
アミロース含量(%) 19.9 20.3 20.8 20.0 20.5 20.0
蛋白含量(%) 7.8 8.4 8.0 7.0 6.9 6.9
アミログラム、MV* 552B.U. 527B.U. 529B.U. 611B.U. 588B.U. 610B.U.
 注1)MV*:最高粘度
  2)調査地のうち、上川農試は平成5年は旭川市永山、平成6〜7年は比布町。

2.空育150号の特記すべき特徴
 良質、良食味、障害型耐冷性が強い。

3.本系統を奨励品種として採用する理由
 現在、北海道産米に対しては、新食糧法の施行による府県産米やミニマムアクセスによる輸入米との競争に対処するため、玄米品質、食味の向上および生育の安定が強く要望されている。このような増勢のため、全国的に評価を得ている「きらら397」の作付けは道内水稲粳作付面積の51.5%(1995年)に達し、今後も増加するものと予想されている。「ゆきひかり」は「きらら397」より食味が劣るが、依然として約37%(1995年)作付けされており、地域によっては50%を越えている。その理由は、「きらら397」の耐冷性にやや難点があり、安定性に欠けるためである。さらに、「ゆきまる」や「ほのか224」は「きらら397」並みの良食味品種であるが、それぞれ早生および晩生種であるため普及面積の拡大に限界があるためである。このため、より安定性の高い、食味が「きらら397」以上で耐冷性の強い、「ゆきひかり」に代わる品種が求められていた。「生育150号」は玄米品質良好で食味が「きらら397」並み、耐冷性および収量は「ゆきひかり」並みで、いもち病耐病性は「ゆきひかり」より勝る。出穂、成熟期は空知中央部以北では「ゆきひかり」より2日以上早く、他地域では「ゆきひかり」並みないし若干早まる。以上のことから、「生育150号」を、「ゆきひかり」の大半および適正熟期をこえて作付けされている「きらら397」の一部に置き代えて、導入を図ることにより、作付け基準に基づく適正な品種配合が可能になり、遺産米の食味向上および良食味米の安定生産に寄与できる。

4.普及見込み面積
(1)栽培適地:上川(士別以南),留萌中南部,空知,石狩,後志,日高,胆振,渡島・檜山およびこれに準ずる地帯
(2)対象品種:「ゆきひかり」の大半および「きらら397」の一部
(3)現地試験における地域別収量指数(対「ゆきひかり」)
数値は1994,1995年の平均
上段の数値:標準区
下段の数値:多肥区