新品種候補 (作成 平成10年1月)
総合農業 | 作物生産 | 夏作物 | 大豆 | − | Ⅰ-2- - | |
北海道 | 作物 | 畑作 | 豆類 | − | ||
だいず新品種候補系統「十育227号」の概要 | 十勝農試 研究部 豆類第一科 |
1.特性一覧表 | ||
系統名 | だいず十育227号 | 組合せ:十系679号 × キタホマレ |
特性 | 長所 1.既存の褐目品種より熟期が早い。 2.耐冷性が強く、冷涼地で多収である。 3.耐倒伏性がキタムスメより強く、 密植による増収効果も高い。 4.難裂莢性である。 5.裂皮粒の発生が少ない。 |
短所 1.ダイズシストセンチュウに弱い。 2.ダイズわい化病に弱い。 |
採用県と普及見込み面積:北海道 700 ha |
調査場所 | 育生地 (十勝農試) |
農試および現地試験 | |||||||
Ⅰ、Ⅱ(網走)* | Ⅱ(十勝・上川・留萌)** | Ⅲ(上川)*** | |||||||
調査年次 | 平成6〜9年 | 平成6〜9年 | 平成7〜9年 | 平成6〜9年 | |||||
系統・品種名 項目 |
十育 227号 |
キタムスメ (対照) (標準) |
北見白 (対照) (比較) |
十育 227号 |
キタムスメ (対照) (標準) |
十育 227号 |
キタムスメ (対照) (標準) |
十育 227号 |
キタムスメ (対照) (標準) |
早晩性 | 中早 | 中 | 中 | 中早 | 中 | 中早 | 中 | 中早 | 中 |
開花期(月日) | 7.21 | 7.24 | 7.23 | 7.31 | 8. 1 | 7.28 | 7.29 | 7.23 | 7.25 |
成熟期(月日) | 9.29 | 10. 6 | 10. 6 | 10. 6 (10. 6)# |
10.13 (10.14)# |
10.5 | 10.10 | 9.29 | 10.6 |
主茎長(cm) | 57 | 71 | 65 | 65 | 83 | 57 | 75 | 62 | 84 |
莢数(莢/株) | 78 | 69 | 71 | 74 | 68 | 76 | 72 | 93 | 83 |
倒伏程度 | 無 | 少 | 少 | 微 | 中 | 微 | 少 | 少 | 中 |
子実重(kg/a) | 32.3 | 33.7 | 32.7 | 31.9 (31.5)# |
30.6 (29.1)# |
25.8 | 26.7 | 37.2 | 36.6 |
対標準比(%) | 96 | 100 | 97 | 104 (108)# |
100 (100)# |
97 | 100 | 102 | 100 |
密植効果;子実重(kg/a) | |||||||||
標準 | 30.3 (100%) |
32.3 (100%) |
− | − | − | − | − | − | − |
密植 | 38.9 (128%) |
34.7 (107%) |
− | − | − | − | − | − | − |
種皮色 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | − | − | − | − | − | − |
臍色 | 暗褐 | 暗褐 | 暗褐 | − | − | − | − | − | − |
百粒重 | 26.2 | 29.8 | 26.1 | 27.3 | 29.4 | 27.1 | 29.1 | 27.0 | 28.7 |
品質 | 2中 | 2上 | 2上 | 2中 | 2上 | 2下 | 2中 | 2中 | 2下 |
抵抗性 | |||||||||
低温 | 強 | 強 | 強 | − | − | − | − | − | − |
シストセ ンチュウ |
弱 | 弱 | 弱 | − | − | − | − | − | − |
わい化病 | 弱 | 弱 | 弱 | − | − | − | − | − | − |
倒伏 | 強 | 中 | 強 | − | − | − | − | − | − |
裂莢の難易 | 難 | 易 | 易 | − | − | − | − | − | − |
2.だいず「十育227号」の特記すべき特徴
子実は褐目・中粒で、褐目の基幹品種で安定多収の「キタムスメ」に比較して成熟期が約1週間早く、収量は同品種並である。耐冷性は「キタムスメ」よりやや優る。耐倒伏性は「キタムスメ」より強く、密植栽培による増収効果も大きい。裂莢性は「キタムスメ」の“易”に対し“難”であり、子実の裂皮粒の発生も同品種より少ない。
3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由
大豆は畑作における輪作体系を確立する基幹作物として重要である。現在、北海道で主に栽培されている大豆の褐目品種には「キタムスメ」と「北見白」があるが、褐目品種は耐冷性が強いことから、主として生育期の気温が低い地帯で栽培されている。しかし、これら品種の熟期は中生のため、年により成熟期に達しないことや、収穫前に降霜や降雪に遭遇することがあり、収量や品質の低下とともに、収穫作業に支障をきたす場合が少なくない。また、こうした地帯ではコンバイン収穫に必要な立毛乾燥期間が十分確保されず、コンバインの導入による大豆栽培省力化の大きな障害となっており、熟期の早い耐冷性品種の開発が強く望まれている。
気象条件の厳しい十勝山麓では、適正な輪作体系確保のために「キタムスメ」の作付け拡大を図り、コンバインによる収穫作業を請け負うとともに、同品種を利用した独自の商品開発も行っている。しかし、「キタムスメ」のみでは収穫期間が短かいためにコンバインの稼働効率をあげることができず、早熟な褐目品種との組合せによる収穫期間の拡大が切実な問題となっている。また、網走地方においては、主に「ばれいしょ」、「秋播小麦」および「てんさい」の3作物による輪作が行われていたが、近年、土壌病害の軽減と輪作作物の生産安定のために豆類の導入を積極的に進めており、熟期の早い耐冷安定多収品種が熱望されている。
秋田銘柄に属する褐目品種はうま味の点で定評があり、堅調な需要が維持されており安定供給の必要がある。また消費者の食品の安全性に対する関心が高まる中で国産大豆に対する要望は大きい。褐目の基幹品種である「キタムスメ」は耐冷性が強く安定多収であるが、熟期が中生で耐倒伏性に劣ること、裂皮粒の発生が多いこと、また、裂莢しやすい等の欠点を有している。「十育227号」は成熟期が「キタムスメ」より約1週間早く、収量は同品種並であり、耐冷性が強く、難裂莢性、耐倒伏性にも優れている。以上のことから、「十育227号」を「キタムスメ」の大半と「北見白」に置き換えて普及することで、気象条件の厳しい地帯での大豆生産の安定化と省力化に貢献する。
4.普及見込み地帯
5.栽培上の注意
1)ダイズわい化病抵抗性は“弱”なので、防除を徹底するとともに、圃場周辺の雑草化したクローバの除去に努める。
2)ダイズシストセンチュウ抵抗性は“弱”なので、発生圃場への作付けは避け、適正な輪作のもとで栽培する。
3)密植による増収効果が高いので、密植栽培に努める。