水稲新品種候補系統 「空育158号」の特性概要

北海道立中央農業試験場稲作部育種科

1.特性一覧表
系統名 空育158号 交配組合せ:八反錦2号/上育404号//きらら397
特性 長所 短所
1.酒造適性が良好 1.耐冷性がやや劣る
2.いもち病抵抗性
採用予定県および
普及見込み面積
北海道 500ha
調査地 中央農業試験場稲作部 上川農業試験場
調査年次 平成8〜11年(中、成苗標肥) 平成8〜11年(中苗標肥)
系統・品種名 空育158号 対象 比較 空育158号 対象 比較
きらら397 初雫 きらら397 初雫
出穂期の早晩性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早
成熟期の早晩性 中生の早 中生の中 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早
草型 中間 穂数 中間      
出穂期(月日) 8. 5 8. 7 8. 5 7.27 7.29 7.28
成熟期(月日) 9.28 9.29 9.26 9.15 9.19 9.16
登熟日数 53 53 52 51 52 49
稈長(cm) 61 62 64 65 64 69
穂長(cm) 16.6 16.6 15.9 16.7 16.6 16.3
穂数(/㎡) 435 540 446 583 727 564
芒の多少・長短 稀短 稀短 稀短      
ふ先色 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 や強〜強 中〜や強 や強      
穂ばらみ期耐冷性 やや強 やや強 極強
いもち病
抵抗性
遺伝子型 Pii、Pik Pii、Pik Pik      
葉いもち やや弱 やや強
穂いもち やや強
玄米重(kg/a) 54.3 50.7 51.9 60.2 60.8 64.3
玄米重標準比(%) 107 100 102 99 100 106
玄米千粒重(g) 25.1 23.4 25.0 24.1 22.1 23.7
玄米等級 2上* 1中下 2上 3上* 2上 2中*
玄米品質 上下* 上下上 上下 上下* 上下上 上下下
心白の多少      
蛋白含有率(%) 8.3 7.9 7.9 6.8 6.5 6.2
アミロース含有率(%) 22.9 21.1 23.2 21.5 20.3 23.0
中央農試稲作部、平成8、11年は中苗、他は成苗。
玄米等級、品質の*は酒米としての評価を示す。
玄米等級、品質、心白の中央農試は平成10、11年、上川農試の等級は平成9〜11年の平均。

2.酒造適性一覧表(対照、きらら397、初雫、ほしのゆめ。平成10年度北竜町産米。
        3社4回の大規模試験醸造を札幌国税局鑑定官室取りまとめ結果)
項 目 評  価
精米適性 砕米率がやや低い
浸漬吸水率 高い
製麹特性 酵素力価には特に差はない
酒母 溶解性が良い
(直糖の出方が早く、濃度も高い傾向)
(アルコールの出方が良い)
醸造経過 溶解性が良い
(アルコールの出が早く、最終アルコール度数も高い傾向)
(中・後半の原料利用率が高い)
作業性 原料処理、蒸米および製麹作業性が良好
製成酒の分析値 原料利用率が高い他、特に差はない
官能試験 同等〜やや優れる
玄米665〜2820Kgを供試。
評価は、各社の供試品種が「空育158号」と対照の1品種のため、対照3品種に対する総合評価。

 

3.「空育158号」の特記すべき特徴
 「空育158号」は中生の大粒系統であり、玄米に酒造好適米特有の心白を発現し、酒造適性が高い。
 
4.奨励品種に採用しようとする理由
  現在、北海道内で酒造用原料として6,000トンが使用されているものの、このうち北海道産米の占める割合は15%程度にすぎない。しかし、近年道内各地において主に「きらら397」を原料とした「地元産米を用いた地酒」の生産が盛んになりつつある。また、北海道米の一部は安価な酒造原料米として年間7,000トンが道外に移出、使用されている。今後、酒造用として品質向上が果たされたならば、さらに消費量の増加が見込まれる。
 このような背景の基に、平成10年に「初雫」が北海道品種として初めて酒造用として奨励品種となり、平成11年で18ha作付けされ、今後作付けの増加が期待される。しかし、「初雫」は心白がなく、心白を有する品種が望まれていた。
「空育158号」は中生の早の熟期で、耐冷性が「初雫」に劣り、「きらら397」にやや劣り不十分であるものの、玄米は大粒で酒造好適米特有の心白を発現し、醸造作業工程での扱いやすさなどの酒造適性も従来の北海道品種に比べ高い。
 「空育158号」を「きらら397」の一部およびその他の品種の一部に替えて普及することにより北海道の酒造原料米の品質向上を図り、北海道産米の販路の拡大を図る。
 
5.普及見込み地帯および対象品種
 1)栽培地帯     留萌南部、上川中央部、空知中北部の低タンパク米安定生産が可能な良地帯およびそれに準じる良地帯
 2)普及見込み面積  北海道 500 ha
 3)対象品種     「きらら397」の一部およびその他の品種の一部