1.課題の分類分類番号 整理番号 
2.場所名    北海道立 花・野菜技術センター
3.系統名    メロンつる割病(レース1,2y)抵抗性台木「空知台2号」


 
4.育成経過
 花・野菜技術センター育成台木「どうだい1号」の持つメロンつる割病(レース1,2y)抵抗性を維持し、その欠点である草勢の弱さ等の台木特性を改良することを育種目標とした。
 台木用品種「バーネット・ヒル・フェボリット」(以下「バーネット」と略記)を種子親とし、花・野菜技術センター育成の「どうだい1号」を花粉親として育成された単交配一代雑種(F)である。平成7年に花粉親系統の育成を開始し、平成10年に「どうだい1号」の育成を完了した。同年に台木用品種「バーネット」を種子親とするF交配を行い、平成11年から「空知台2号」の系統名を付して、花・野菜技術センターおよび現地発生圃場において台木特性や抵抗性検定を実施した。
 その結果、「どうだい1号」に比べてレース1,2y抵抗性はやや劣るものの実用的に十分な抵抗性が認められると共に、より幅広い作期、品種に対する適合性等台木品種として優れた特性が認められた。また、レース0およびレース2に抵抗性を有し、レース1に対しても抵抗性を有すると想定されることから、メロンつる割病対策に極めて有効な台木と判断し成績を取りまとめた。
5.特性の概要
 以下の特性は、穂木品種として「赤肉キング系」および「ルピアレッド」、標準台木品種として「金剛1号」、対照台木品種として「どうだい1号」、参考として各穂木品種の自根栽培を設定し、評価したものである。
 1)接ぎ木に関する特性
 接ぎ木作業性は「どうだい1号」より改善され、「金剛1号」と同等である。接合面は正常であり、接ぎ木親和性に問題はない。
 2)生育特性
 メロンつる割病(レース1,2y)未発生圃場においても、穂木の両性花着生率および着果率については、年次および穂木品種によって若干変動するものの、全体としては「金剛1号」、「どうだい1号」および自根とほぼ同等である。着果期以降の草勢についても、「どうだい1号」より強く、「金剛1号」および自根とほぼ同等である。
 3)果実品質
 メロンつる割病(レース1,2y)未発生圃場では、年次および穂木品種によって「金剛1号」よりもやや劣る場合があるものの、全体としては果実外部、内部品質ともに「金剛1号」、「どうだい1号」および自根と同等からやや優る。発生圃場では、果実外部・内部品質ともに「金剛1号」、「どうだい1号」および自根と比べやや優る。
 4)収量性
 メロンつる割病(レース1,2y)未発生圃場、発生圃場いずれにおいても、「金剛1号」、「どうだい1号」および自根と同等から優る。
 5)つる割病抵抗性
 メロンつる割病(レース1,2y)に対してやや強い抵抗性を示し、激発圃場を除き、一般の発生圃場では十分な実用性を有する。また、レース0およびレース2に対しては質的抵抗性を有する。なお、道内未発生のため検定を実施していないが、両親系統のつる割病抵抗性遺伝子構成から、レース1に対する質的抵抗性も有すると判断される。
6.試験成績概要
 表1 メロンつる割病(レース1,2y)抵抗性幼苗検定結果           

 品種・系統名

 

     発病度    

  枯死個体率(%)   

  発病個体率(%) 

 h11

h12-1

h12-2

h11

h12-1

h12-2

h11

h12-1

h12-2

空知台2号

62.5

51.6

37.5

43.8

12.6

 12.5

100

 90.7

50.0

バーネット

 -

85.2

 -

-

43.8

  -

 -

100

 -

どうだい1号

12.5

 0.8

 6.3

0

 0

  6.3

43.8

 3.2

18.8

金剛1号

100

100

100

100

100

100

100

100

100

空知台2号の種子親品種。空知台2号の花粉親品種。標準品種(東海シード育成)。
 














 
 
 表2 未発生圃場(花・野菜技術センター)における生産力検定結果

  品種・系統名

台木胚軸径

  (㎜)

  草勢2

良果収量(kg/a)

Brix(%)

穂 木

赤肉キング系




ルピアレッド


 

 台 木

h11

 h12

  h11

h12

  h11

h12

空知台2号
金剛1号
どうだい1号
(自根)

空知台2号
金剛1号
どうだい1号
(自根)

  4.4
  3.9
  3.9
   -

  4.1
  3.6
  3.6
   -

2.5
3.0
2.5
3.0

3.0
3.0
3.0
3.0

 3.5
 3.0
 2.5
 3.0

 2.0
 3.0
 2.0
 3.0

  112
  69
  146
  112

  237
  148
  291
  209

337
209
273
284

 74
226
182
222

  9.0
  9.0
  9.5
  9.5

  12.1
  11.6
  12.7
  12.2

13.0
12.5
12.3
12.0

11.6
12.5
12.1
12.0

平成11年のみのデータ。播種日:「空知台2号」「金剛1号」;4/2、「どうだい1号」;3/24、自根;4/5。
調査日:5月12日。
2収穫終了時の側枝(ムダ蔓)の生育状況。5(強)〜1(弱)。
3良果基準は、「赤肉キング系」についてはBrix10%以上、「ルピアレッド」については12%以上とした。
接ぎ木は呼び接ぎによる。

 




















 
 
       表3 メロンつる割病(レース1,2y)発生圃場における成績         
























 

 試験
 地名

定植日
 

 台 木
 

 穂 木
 

収量
(kg/株)

均一果重
(g)

Brix
(%)

発病株率
 (%)

 A-1
 

5/ 2
 

空知台2号
CRCW

レッド113
レッド113

  -
 -

 1628
 1685

16.6
15.5

  0
  0

 A-3
 

4/ 9
 

空知台2号
健脚

キングルビー8号
キングルビー8号

  -
 -

 2539
 2155

 13.6
 13.0

  0
  0

 B-2
 

5/ 7
 

空知台2号
-(自根)

レッド113U
レッド113U

 -
 -

  -
  -

  -
  -

  0
 20.0

 B-3
 

4/ 8
 

空知台2号
-(自根)

妃 秋冬系
妃 秋冬系

 -
  -

  -
  -

  -
  -

  4.0
 23.4

 C
 

5/ 9

空知台2号
健台3号

キングルビー10号
キングルビー10号

6.3
6.5

1564
1632

 14.6
14.4

 27.5
 50.0

 D
 

5/ 7
 

空知台2号
改良1号

赤肉キング系
赤肉キング系

  -
 -

1830
 1810

12.7
12.4

  0
  0

   1 外部病徴は認められなかったが、若干の維管束褐変が認められた。
  接ぎ木は、Cは挿し接ぎ、他は呼び接ぎによる。
 
























 
 
7.普及対象地域および普及見込み面積
 普及対象地域:全道のメロン栽培地域に適するが、当面、メロンつる割病(レース1,2y)の発生が確認された圃場および発生の恐れがある圃場とする。
 普及見込み面積:10ha
 
8.保有種子数
 平成12年12月現在の保有数
 F「空知台2号」:約40,000粒保有。
 種子親「バーネット(花・野菜技術センター維持・採種系)」:約1,000粒
 花粉親「どうだい1号」:約10,000粒
 
9.栽培上の留意点
 1.メロンつる割病(レース1,2y)の発生が想定される圃場で用いる。但し、激発が予想される場合には土壌消毒により菌密度を低下させた後に用いる。
 2.ハウス半促成栽培に適応する。トンネル早熟栽培、ハウス促成栽培およびハウス抑制栽培については未検討である。