新品種候補(作成 平成14年1月)
課題分類:
いんげんまめ新品種候補 「十育B67号」の概要
十勝農業試験場作物研究部小豆菜豆科
1.特性一覧表
系統名 いんげんまめ十育B67号 組合せ 十育B62号(福勝)×十系B203号
特性 長   所
1.成熟期が「大正金時」と同程度又はやや早い。
2.粒色、粒形は「大正金時」、「福勝」と類似し、
粒大は「大正金時」より大きい。
3.子実収量が「大正金時」よりやや優る。
短   所
1.インゲン黄化病抵抗性は「大正金時」と
同じ“弱”である。
採用予定県及び普及見込み面積  北海道 3,000 ha
調 査 場 所 育成地(十勝農試) 農試及び現地試験(平成10〜13年)
地帯区分Ⅰ(道東)3) 地帯区分Ⅱ(道央)
調査年次・箇所数 平成10〜13年 28カ所 11カ所
品種名または系統名 十育
B67号
大正金時
(対照)
福  勝
(比較)
十育
B67号
大正金時
(対照)
福  勝
(比較)
十育
B67号
大正金時
(対照)
福  勝
(比較)
項目
開花期(月日) 7.12 7.11 7.12 7.16 7.15 7.17 7. 9 7. 9 7.10
成熟期(月日) 8.31 8.31 9. 4 8.31 9. 1 9. 5 8.22 8.23 8.28
倒伏程度 1) 1.3 0.8 1.2 1.2 1.2 1.4 1.5 1.4 1.5
葉落良否 2) 2.1 3.9 2.3 2.5 3.3 3.3 1.4 2.6 2.9
草丈 ( cm ) 41 41 45 48 48 51 44 43 48
莢数 (莢/株) 17.4 17.1 16.5 19.1 19.4 17.8 18.0 17.4 16.5
一莢内粒数 2.56 2.70 2.79            
子実重 (kg/10a) 281 263 301 273 255 285 287 276 303
子実重対比 (%) 107 100 114 107 100 112 104 100 110
黄化病発生圃における
子実重(kg/10a)4)
276 260 295 260 247 267 222 209 242
同子実重対比 (%) 106 100 113 105 100 108 106 100 116
百粒重 ( g ) 80.7 70.7 83.9 74.2 64.6 76.1 72.6 65.9 76.5
品質 (等級) 3下 3下 3中 4上 4上 3下 2下 3上 3上
伸育性と草型 有限
わい性
有限
わい性
有限
わい性
 
胚軸の色 淡赤紫 淡赤紫 淡赤紫
花色 淡赤紫 淡赤紫 淡赤紫
若莢の地色
若莢の斑紋色
子実の形 楕円体 楕円体 楕円体
種皮の地色 赤紫 赤紫 赤紫
種皮の環色
抵抗性 黄化病
Race 38
Race 81
Race 7
 1) 倒伏程度:0(無)、0.5(微)、1(少)、2(中)、3(多)、4(甚)。
 2) 葉落良否:成熟期における葉落ちの良否で、1(良)、2(やや良)、3(中)、4(やや不良)、5(不良)。
 3) 地帯区分Ⅰ(道東)の成績には、育成地(十勝農試)の成績を含む。
 4) 黄化病発生圃における子実重:育成地(十勝農試)の値は、発生株の子実重(0kg/10a)を含んだと仮定して
  算出した推定値 ((100-発生率(%)/100*子実重)である。農試及び現地試験の値は、発生株を含んで収穫した
  測定値及び発生株を含んだと仮定して算出した推定値の平均である。黄化病発生圃の箇所数は、
  地帯区分Ⅰは10、地帯区分Ⅱは11である。


2.「十育B67号」の特記すべき特徴

 粒色、粒形は「大正金時」及び「福勝」に類似し、成熟期は「大正金時」と同程度からやや早い。また、
「大正金時」と比べ、粒大はかなり大きく、収量性もやや優る。


3.北海道で奨励品種に採用しようとする理由

 北海道における金時類の栽培面積は、近年大きく減少し、作付け指標面積を下回っている。現在は
7,000ha程度で推移しており、平成12年度では、このうち「大正金時」が53%、「福勝」が43%を占めている。
 平成6年育成の「福勝」は、「大正金時」と粒色及び粒形が同じで、大正金時銘柄で流通し、大粒、多収
であることから順調に栽培面積が増加している。しかし、成熟期が「大正金時」より数日遅れるため、
特に冷涼な地帯での秋まき小麦の前作としては、成熟期が早い「大正金時」が作付けされている。
一方、「大正金時」は粒大が小さいため、夏季の高温等によって小粒化したときには、実需の要望に
応えることができない場合がある。このため、「大正金時」並みの早生で、秋まき小麦の前作に適した
大粒、多収の金時品種が要望されている。
 「十育B67号」は、粒色、粒形が「大正金時」及び「福勝」に類似し、これらの品種と同じ銘柄での流通が
可能である。成熟期は、金時類で最も早生の「大正金時」と同程度かやや早く、成熟期の葉落ちが良好で、
収量性もやや優ることから、秋まき小麦の前作としては「大正金時」以上の適性を持つ。また、粒大は
「福勝」よりはやや小さいが「大正金時」より大きく、「大正金時」と同程度の煮豆等の加工適性を持つ。
 以上により、本系統を、秋まき小麦の前作として、「大正金時」の一部に置き換えるとともに、新たな
導入を図ることにより、金時類の作付け指標面積を確保し、良質な北海道産金時類の安定供給に
寄与できると考えられる。


4.普及見込み地帯

いんげんまめ作付け地帯
 (道産豆類地帯別栽培指針(H6)菜豆地帯Ⅰ(道東)、地帯Ⅱ(道央))


図 「十育B67号」の普及見込み地帯における「大正金時」との成熟期の差、子実重比及び百粒重比
  注)各地帯区分には、農試の成績を含む。


5.栽培上の注意

1)大粒であるので、脱穀時の回転数を調節し損傷粒の発生を防ぐ。
2)極端な多肥栽培では成熟期における葉落ちが不良になることがある。
3)インゲン黄化病抵抗性は「大正金時」と同じ“弱”であるが、発生率がやや高いので適切な防除に努める。