成績概要書(2002年1月作成)
1.課題の分類   分類番号   整理番号
2.場所名   北海道立 花・野菜技術センター、株式会社大学農園
3.系統名   メロン「空知交11号」
4.育成経過
 現在の主力赤肉品種である「ルピアレッド」と同等の優れた栽培特性を有し、「ルピアレッド」
で品質が不安定となる高温期に安定した収量・品質を得られ、いわゆる「赤肉臭」を低減する
ことを育種目標とした。花・野菜技術センター育成の「HM-G52」を種子親とし、株式会社大学
農園と 花・野菜技術センターが共同育成した「DHM-R1」を花粉親として育成された単交配
一代雑種(F)である。平成5年に親系統の育成を開始し、平成11年に最初のF交配を行い
「99RX-8」の系統名で花・野菜技術センターおよび大学農園において生産力検定予備試験に
供試した。平成12年より「空知交11号」の系統名を付して、生産力検定試験および道内各産地
における地域適応性検定試験を実施した。
 
5.特性の概要(標準品種を「ルピアレッド」として評価)
  長所:高温期においても糖度が安定している。果肉が厚く、収量性および日持ち性に優れる。
     いわゆる「赤肉臭」が少なく、さわやかな食味である。
  短所:ネット密度がやや粗く、太さもやや細い。果肉色がやや淡い。
 1)生育特性:「ルピアレッド」に比べ節間が長く、葉もやや大きい傾向があり、
           草勢はやや強いが、収穫期のむだづるの発生はやや少ない。
 2)着果性:両性花の着生および着果ともに「ルピアレッド」と同等〜やや優る。
 3)早晩性:開花始めは「ルピアレッド」と同等〜やや遅く、また果実の成熟日数は「ルピアレッド」
         より1〜2日長いため、平均収穫日は「ルピアレッド」よりもやや遅い傾向がある。
  4)収穫判定難易:「ルピアレッド」と同様成熟に伴う果皮色の変化はなく、また離層の形成は
             「ルピアレッド」よりも少ない。このため、収穫適期判定は「ルピアレッド」と比べ
             同等〜やや難である。
 5)果実品質
  (1)果実外観品質:果実の肥大性は、「ルピアレッド」よりやや優れ、果形は正球に近い。
     「ルピアレッド」に見られる果溝はほとんど見られず、果形の揃いは良好である。
           果皮色は「ルピアレッド」よりやや濃い。ネットの密度は「ルピアレッド」よりやや低く、
           太さもやや細い。
           花痕径は「ルピアレッド」とほぼ同等である。
  (2)果実内部品質:果肉は「ルピアレッド」に比べ厚く、胎座部の空洞が小さい。
           果肉色は「ルピアレッド」よりやや淡い。糖度は無加温半促成栽培で「ルピアレッド」より
           やや高く、 高温期においても安定している。食味は、赤肉特有の「赤肉臭」が極めて少なく、
           さわやかである。肉質は「ルピアレッド」と同様やや繊維質である。
           「ルピアレッド」に比べ、収穫後適食期に達するまでにやや時間を要する。
 6)日持ち性:「ルピアレッド」より優れる。
 7)収量性:年次および作期によって変動があるが、総合すると、「ルピアレッド」と比べ、
            収穫果数はほぼ同等であるが、果実肥大がやや優れ、良果率がやや高いことから、
            「ルピアレッド」よりも多収である。
 8)病虫害抵抗性:つる割病(レース0、レース2)に対して抵抗性を有するが、つる割病(レース1,2y)
            およびえそ斑点病に対しては抵抗性を有しない。うどんこ病には強い抵抗性を有する。
6.試験成績概要
表1 無加温半促成栽培における成績
  着果率(%) 日持ち性1 平均一果重(g) 赤道部
果肉厚(㎜)
Brix(%) 赤肉臭1 良果収量
(kg/a)
試験場所 年次 定植日 11号2 ルピア3 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア
花・野菜
技術センター
H12 4/26 90.0 79.1 5.0 3.0 2167 2212 44 42 13.5 12 1.1 2.3 390 222
H13 4/27 100 100 5.0 3.0 2106 1814 43 38 12.5 12 1.1 2.9 331 194
士別市 H12 5/4 97.5 100 2 4 2037 1858 40.8 41.5 13.3 14.2 2 3 356 330
中富良野町 H13 4/17 99 96 4 3 1775 1673 44.7 37.4 14.7 14.2 - - 261 260
月形町 H12 4/2 100 100 4.5 3 1700 1600 36.0 32.0 12.9 12.2 - - 326 307
H13 3/30 100 100 3.0 3.0 2050 1495 36.3 31.1 14.3 14.0 2 3 394 287
栗山町-1 H13 5/7 100 100 4 2 2256 1766 46 40 13.8 13.0 2 3 502 393
     -2 H13 5/3 100 89 4 3 1673 1366 43 39 14.1 12.7 3 3 359 260
訓子府町 H12 5/20 92.5 95.0 4 3 1739 1761 44.4 41.2 14 13.3 - - 358 354
H13 5/14 100 97.5 5 3 1813 1659 36.0 33.0 14.1 14.2 - - 384 343
  総平均 4/28 97.9 95.7 4.1 3.0 1932 1720 41.4 37.5 13.7 13.2 1.9 2.9 366 295
  124 (100)
11(不良)-5(良)、2「空知交11号」、3「ルピアレッド」。
 
 
表2 ハウス抑制栽培における成績
  着果率(%) うどんこ病
発生程度1
平均一果重(g) 赤道部
果肉厚(㎜)
Brix(%) 赤肉臭1 良果収量
(kg/a)
試験場所 年次 定植日 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア 11号 ルピア
花・野菜技術センター H13 7/11 98.8 100 0.5 2.5 1705 1565 42.0 37.0 11.7 11.8 1.1 2.9 102 134
原子力環境センター H12 7/11 98 90 - - 1902 1946 42 40 11.0 9.4 - - 106 10
H13 7/11 90 82 1 3 2188 1878 47 41 13.1 12.6 - - 344 165
共和町 H12 7/26 100 95 0 2 1650 1750 41 31 13.2 16.2 3 3 197 186
H13 7/21 100 95 0 1 1780 1750 43 31 15.6 16.0 3 3 258 226
  総平均 7/16 97.4 92.4 0.4 2.1 1845 1777 43.5 37.0 12.9 13.2 2.4 3.0 202 144
  140 (100)
 10(無)−5(甚)。
 
 
 
 
7.普及対象地域および普及見込み面積
 普及対象地域:全道のメロン栽培地域
 普及見込み面積:100ha(全道のメロン栽培面積の 約5%)
 
8.保有種子数(平成13年12月現在の保有数)
  「空知交11号」  約70,000粒
  種子親「HM-G52」 約  500粒
  花粉親「DHM-R1」 約  200粒
 
9.栽培上の留意点
1)無加温半促成栽培およびハウス抑制栽培における成績であり、加温半促成栽培および
トンネル早熟栽培では未検討である。
2)えそ斑点病およびつる割病(レース1,2y)に抵抗性を有しないので、発生および発生の恐れ
のある圃場では、 抵抗性台木を使用する等の対策を講ずる。
3)収穫後適食期に達するまでにやや時間を要するため、出荷・流通に当たって留意する。