成績概要書(2002年1月作成)
1.課題の分類 分類番号      整理番号  
2.場所名   北海道立 花・野菜技術センター
3.系統名   メロンえそ斑点病抵抗性台木「空知台交3号」
4.育成経過
 本道における主要な土壌伝染性病害の一つであるメロンえそ斑点病に対する抵抗性を有し、
台木特性に優れていることを育種目標とした。導入品種「Perlita」を種子親、花・野菜技術センター
育成の 「HM-3」を花粉親として育成された単交配一代雑種(F)であり、両親系統に由来する
単因子劣性の メロンえそ斑点病抵抗性遺伝子nsvをホモに有する。平成7年に花粉親系統の
育成を開始し、 平成11年に抵抗性系統「HM-3」の育成を完了した。同年に抵抗性を有する
導入品種「Perlita」を 種子親とするF交配を行い、「空知台交3号」の系統名を付して、
平成12、13年の2ヶ年、花・野菜技術センターにおいて 生産力検定試験等を行い、同時に
地域適応性検定試験を実施した。
 
5.特性の概要
 1)接木に関する特性
 胚軸の太さは「金剛1号」と「どうだい2号」の中間程度で、胚軸長が他品種よりやや短い。
接ぎ木作業性は「金剛1号」と同等である。いずれの穂木品種ともに接合面は正常であり、
接ぎ木親和性に問題はない。
 2)生育特性
 穂木品種の両性花着生率および着果率は、他の台木品種あるいは自根と同等〜やや優る。
着果期以降の草勢は、年次および穂木によって若干の変動が見られるものの、他の台木品種
あるいは自根と同等〜やや優る。
 3)果実品質
 外観、内部品質ともに、メロンえそ斑点病発生、未発生圃場いずれにおいても、未発生圃場
における自根栽培と遜色ない。
 4)収量性
 良果収量については、年次および穂木品種によって若干の変動が見られるものの、
メロンえそ斑点病未発生圃場において他の台木品種および自根と比較して同等〜やや優る。
 5)病害抵抗性
 (1)メロンえそ斑点病抵抗性
 メロンえそ斑点病に対して完全な抵抗性を有し、汁液接種によっても感染が見られない。
また、発生圃場において台木として使用した場合、穂木の発病を著しく軽減する。
ただし、本抵抗性は免疫性ではなく、穂木に全身抵抗性は誘導されない。
 (2)メロンつる割病抵抗性
 メロンつる割病(レース0、レース2)に対して完全な抵抗性を有するが、レース1,2yに対しては
抵抗性を有しない。
 
6.試験成績概要
表1 メロンえそ斑点病幼苗検定1
品種・系統名 発病個体率
(%)
総病斑数
(個/100cm2)
空知台交3号 0 0
HM-3 0 0
どうだい1号 73.3 2.7
どうだい2号 86.7 2.9
ルピアレッド 100 6.8
空知台交3号+ルピアレッド2 100 8.0
PMR 53 0 0
Perlita3 0 0
1平成13年、花野菜技セ、汁液接種による、2「空知台交3号」
に「ルピアレッド」を接いだ状態で、「ルピアレッド」の葉に接種、
3メロンえそ斑点病抵抗性育種素材。

表2 未発生圃場における成績
試験場所1 穂木 年次 比較 定植日 草勢2 成熟日数
(日)
平均一果重
(g)
Brix
(%)
着果期 収穫期
3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4
花・野菜技術センター 赤肉キング系 H12 金剛1号 4/26 3.5 3.0 47.8 47.5 2181 2230 12.4 12.5
自根 -5 3.0 -5 47.0 -5 2190 -5 12.0
H13 金剛1号 4/27 3.5 3.0 51.0 51.5 2424 2193 12.6 12.2
自根 -5 3.5 -5 53.0 -5 2318 -5 12.3
ルピアレッド H12 金剛1号 4/26 2.5 3.0 52.0 52.0 2115 2042 12.3 12.5
自根 -5 3.0 -5 51.8 -5 2212 -5 12.0
H13 金剛1号 4/27 4.0 3.0 54.0 53.5 1851 1843 11.4 11.7
自根 -5 3.0 -5 53.0 -5 1814 -5 12.0
試験地A ルピアレッド H13 自根 4/16 3 3 3 3 51 51 2070 2050 14.5 13.8
試験地G-1 赤肉キング系 H13 改良1号 5/16 41.5 41.5 1480 1370 13.9 12.9
試験地G-2 赤肉キング系 H13 改良1号 5/16 42.0 42.0 1390 1390 12.1 11.6
  総平均 5/1 3.0 3.0 3.3 3.1 48.5 49.4 1930 1968 12.7 12.3
接ぎ木は呼び接で実施、1試験場所のアルファベットは産地を、数字は農家を表す、21(弱)-5(強)、3「空知台交3号」、
4表中の項目「比較」に記載、5「空知台交3号」の成績は同年の「金剛1号」との比較と共通。

表3 発生圃場における成績
試験
場所
作期 穂木 年次 比較 定植日 収穫期
草勢2
成熟日数
(日)
平均一果重
(g)
Brix
(%)
発病株率
(%)
3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4 3号3 比較4
試験地A-1 ルピアレッド H12 自根 4/19 - - - - 1840 1430 15.7 14.1 12 100
ルピアレッド H12 自根 4/26 - - - - 1750 1690 13.2 13.5 2 100
ルピアレッド H13 自根 5/14 4 3 50 50 1570 1570 16.1 16.4 0 100
試験地A-2 ルピアレッド H12 自根 4/12 - - - - 1860 1710 15.2 14.2 15 100
ルピアレッド H12 自根 4/19 - - - - 1930 1840 13.7 15.6 0 100
ルピアレッド H13 自根 4/14 4 3 52 51 2330 2190 14.4 14.6 1 63
試験地A-3   ルピアレッド H12 自根 4/29 - - - - 1480 1260 13.6 13.7 4 100
ルピアレッド H13 自根 5/2 4 3 52 52 2020 1900 14.5 15.1 6 100
試験地A-4 ルピアレッド H12 自根 4/18 - - - - 1750 1750 15.0 14.1 12 100
ルピアレッド H12 自根 4/29 - - - - 1810 1480 13.8 12.1 1 100
試験地A-5   ルピアレッド H12 自根 4/18 - - - - 2060 2150 15.8 14.9 0 33
試験地B デリシィL H12 自根 5/10 - - - - 1945 1361 14.3 14.5 10 41
デリシィL H13 自根 5/175 3 3 50 50 1316 1344 14.0 14.3 0 3
試験地C レッド113U H13 CRCW 4/23 3 4 60 60 2055 2025 16.1 16.9 21 97
試験地D キングルビー10号 H13 健台3号 4/25 3 3 54 51 1412 1505 14.4 14.5 0 12
試験地E パブリレッド H13 自根 4/23 - - - - - - - - 0 3
試験地F パブリレッド H13 自根 4/24 - - - - - - - - 0 2
  総平均   3.5 3.2 53.0 52.3 1809 1680 14.7 14.6 5 68
接ぎ木は試験地Dは挿し接ぎ、他は全て呼び接ぎで実施、1試験場所のアルファベットは産地を、数字は農家を表す、21(弱)-5(強)、
3「空知台交3号」、4表中の項目「比較」に記載、5自根は5月7日定植。
 
7.普及対象地域および普及見込み面積
 普及対象地域:全道のメロン栽培地域に適するが、当面、メロンえそ斑点病の発生が確認された圃場
           および発生の恐れがある圃場とする。
 普及見込み面積:20ha
 
8.保有種子数(平成13年12月現在の保有数)
   「空知台交3号」 約50,000粒
   種子親「Perlita」 約 1,000粒    花粉親「HM-3」  約  500粒
 
9.栽培上の留意点
  1)メロンつる割病(レース1,2y)に対する抵抗性は有しないため、本病の発生が認められた圃場
    および発生の恐れがある圃場における栽培は避ける。
  2)無加温半促成栽培における成績であり、加温半促成栽培、トンネル早熟栽培およびハウス抑制栽培
    については未検討である。
  3)穂木に抵抗性を持たない品種を用いた場合、接ぎ木により全身抵抗性は誘導されないため、
    管理作業等を行う際には接触伝染を生じないように留意する。