課題の分類:作物>夏畑作物>22>1−2−085−2
ばれいしょ新品種候補
                 「北育7号」の概要
                                   北見農業試験場 作物研究部 馬鈴しょ科
1.特性一覧表
系統名 ばれいしょ「北育7号」 交配組合せ アトランチック × Cherokee
特性 長所
 1) そうか病抵抗性が“強”
 2) ジャガイモシストセンチュウ抵抗性
 3) 塊茎の目が浅く、肉色が白である
 4) 煮崩れが少なく、調理後黒変が少ない
短所
 1) 「男爵薯」並の褐色心腐と中心空洞
 2) 亀の甲病類似症状が発生することがある
採用県及び普及見込み面積   北海道  1,000ha
調査地 北見農試 十勝農試 全試験箇所平均
調査年次 平成13〜15年 平成13〜15年 平成13年〜15年
      系統・
項目   品種名
北育7号 男爵薯
(対照)
スタークイーン
(比較)
北育7号 男爵薯
(対照)
スタークイーン
(比較)
北育7号 男爵薯
(対照)
早晩性  中生  早生  中生   
終花期の茎長(cm) 43 32 50 54 39 63 51 40
枯凋期  (月日)  9/15  8/26  9/23  9/15  8/26  9/21   9/8  8/18
上いも数(個/株) 9 8.1 8.1 10.7 10.4 10.1 10.3 10.1
上いも平均一個重(g) 98 87 116 95 85 108 104 92
中以上いも重(kg/10a) 3,690 2,952 4,095 4,045 3,456 4,394 4,135 3,583
対標準比 (%) 125 100 140 117 100 127 115 100
上いも重(kg/10a) 4,085 3,361 4,357 4,498 3,929 4,784 4,665 4,151
対標準比 (%) 122 100 130 114 100 121 112 100
でん粉価  (%) 17.6 16.7 18 16.4 14.9 16.8 16.1 15.2
塊茎の特性     
 形 倒卵形 球形 扁球形 表. そうか病抵抗性品種の甚発生Ⅱ圃場における防除効果
 皮色 白黄  白黄 白黄
場 所 病いも率(%)

北育7号 男爵薯 スタークイーン ユキラシャ
芽室町 8.9 61.5 29.2 18.6
常呂町 8.0 67.8 19.9 1.4
美幌町 3.9 56.3 15.1 5.9
 肉色 黄白
 目の深さ やや浅
 休眠期間 やや短 やや長 やや短
 褐色心腐の多少*
 中心空洞の多少*
 二次生長の多少* やや少
調理特性*     注: 1) 病いも率15%以下で防除対策として有効
     2) 甚発生Ⅱ圃場は「男爵薯」の病いも率が56〜80%
     3) 「ばれいしょの総合防除」より(平成15年:芽室町は
       十勝農試、常呂町、美幌町は北見農試が試験した)












* 確農試の試験結果による。括弧内はばれいしょ種苗特性分類調査報告書(昭和56年)の分類による。
** 特性検定試験の成績による。
 煮崩れ やや少 やや多
 剥皮褐変
 調理後黒変  
 肉質 やや粉 やや粉 やや粉
 舌ざわり   
 食味  中上 中上 中上
病虫害抵抗性**  
 ジャガイモシストセンチュウ 強(H1)  弱(h) 強(H1)
 疫病圃場抵抗性*
 塊茎腐敗
 Yモザイク病
 そうか病 やや強
 粉状そうか病 やや強 やや強


2.ばれいしょ「北育7号」の特記すべき特徴
 ばれいしょ「北育7号」は、中生の生食用系統である。そうか病抵抗性は"強"で、ジャガイモシストセンチュ抵抗性を持つ。熟期は「男爵薯」よりもやや遅く、収量性は「男爵薯」よりも高い。また塊茎の目が浅く形がよい。煮崩れが少なく調理後黒変が少ない。肉色は白である。

3.優良品種に採用しようとする理由
 そうか病は、塊茎の表面にあばた状の病斑が発生し外観品質が大きく低下して、特に生食用途で大きな問題となる土壌病害である。輪作による汚染低減効果が低く、有効な防除法も少ないため、一度発生した圃場では対策が困難である。発生面積・被害面積は昭和50年代半ばを頂点として、連作等の減少により少しずつ減少してきたが、近年ではそうか病の被害面積は全作付け面積の1割前後で安定しており、問題は慢性化してきている。
 また、ばれいしょの最も重要な病虫害であるジャガイモシストセンチュウは、毎年少しずつ発生面積を増やしており、平成15年には十勝支庁管内で初めて発生が確認され、汚染が拡大しつつある。
 これらの病虫害対策として、平成11年に中程度のそうか病抵抗性とジャガイモシストセンチュウ抵抗性を併せ持つ品種「スタークイーン」が育成されたが、多発圃場ではそうか病抵抗性が不十分であり、普及には至っていない。また平成12年には"ごく強"そうか病抵抗性品種「ユキラシャ」が育成されたが、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たない等の短所がある。
 「北育7号」は、そうか病抵抗性を持ち、抵抗性の強さは「スタークイーン」を上回る"強"である。そのため、より多くのそうか病汚染圃場で栽培することができる。またジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つことから、線虫汚染圃場の線虫密度を低下させることが可能である。さらに塊茎品質においても、目が浅く形がよく白肉である、剥皮褐変がない、煮崩れが少なく調理後黒変がほとんどない等、一般の生食用途だけでなく業務用途にも向く特性を持つ。
 以上のことから、「北育7号」をそうか病およびジャガイモシストセンチュウ発生地帯に普及することで、ばれいしょ生産の安定に寄与するものと考える。

4.普及見込み地帯
 北海道の生食用ばれいしょ栽培地帯(主としてそうか病発生地帯)



        普及見込み地帯における「北育7号」の中以上いも重の「男爵薯」対比(%)
5.栽培上の注意
 1)褐色心腐および中心空洞の発生することがあるので、多肥や疎植を避け、培土に留意する。