新品種候補(作成 平成18年2月)
作物>夏作物>22>1-2-085-1
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育種事業課題名:ばれいしょ新品種候補系統「北育8号」の概要
担当研究室:北海道立北見農業試験場・作物研究部・馬鈴しょ科
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キーワード:ジャガイモ、疫病圃場抵抗性、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性、有機栽培
1.特性一覧表
系統名 ばれいしょ「北育8号」 組合せ I-853 × 花標津
 特性  長所  1.疫病圃場抵抗性が“強”であり、疫病無防除栽培が可能。
          2.ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。
          3.「花標津」より一個重が大きく、規格内いも重が多い。
          4.目が浅く、外観品質が優れる。
          5.「男爵薯」並に食味が優れ、コロッケ適性もある。
      短所  1.褐色心腐が「男爵薯」よりやや多い。
          2.休眠期間が短い。

採用県及び普及見込み面積 北海道 100ha

 注:1)*1試験箇所数は、「男爵薯」対比はのべ30ヶ所、「花標津」対比はのべ12ヶ所。
   2)*2中以上いも重の成績
   3)*3各試験地の結果による。
   4)*4北農研センターの結果による。
   5)*5北見農試と北農研センターの結果による。
   6)*6特性検定試験等の成績による。
   7)括弧内は種苗特性分類調査の階級による。

2.ばれいしょ「北育8号」の特記すべき特徴
 ばれいしょ「北育8号」は、中生の生食用系統である。疫病圃場抵抗性が“強”で疫病無防除栽培が可能である。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。枯凋期は「男爵薯」より3週間程度遅く、「花標津」よりやや早い。規格内いも重は「男爵薯」「花標津」より多い。規格内率は「花標津」より高い。上いも平均一個重はほぼ「男爵薯」並で「花標津」より大きい。塊茎の形は扁球で、目が浅く外観品質が優れる。肉色は黄白である。水煮後の肉質はやや粉質で、「男爵薯」より煮崩れは多く、調理後黒変は少ない。「男爵薯」並の良食味でコロッケ適性もある。

3.優良品種に採用しようとする理由
 消費者の食の安全に対する関心の高まりを背景に、減農薬栽培や有機栽培に取り組む生産者が増えている。ばれいしょの慣行栽培では、農薬使用の大部分が疫病防除のためであり、疫病抵抗性品種を導入することで農薬使用の大幅な低減が可能となる。
 現在、減農薬栽培や有機栽培で用いられている品種は、疫病抵抗性を持たない「男爵薯」等の一般品種であり、疫病によって大幅な減収を余儀なくされることが多い。一方、平成9年に育成された、疫病に強い圃場抵抗性を持つ「花標津」は、疫病での減収はほとんどないが、「男爵薯」より上いも平均一個重がかなり小さいために、生食用規格内いも重が収量の割に低いこと、塊茎の目が深い等外観品質が悪いこと、枯凋期がかなり遅いことなど、一般の生食用品種に比べて劣る特性が多く、栽培はごく一部の生産者と家庭菜園に限定されている。
 「北育8号」は、疫病圃場抵抗性が“強”であり、上いも平均一個重がほぼ「男爵薯」並であるため規格内いも重が改善されている。塊茎の外観品質も「花標津」より改善されており、枯凋期もやや早い。また食味が優れ、コロッケ適性も持つ。「北育8号」を優良品種に採用することで、疫病防除を省くことができ、減農薬栽培や有機栽培において、「男爵薯」等の一般品種のように減収することなく高品質で効率的な生産が可能となり、コロッケ適性を生かすことで新たな販路の開拓も可能となるため、多くの生産者に受け入れられることが期待される。その結果、食の安全に関心の高い消費者のニーズにも応えることが出来るものと期待される。

4.普及見込み地帯
 北海道の生食用ばれいしょ栽培地帯

 

5.栽培上の注意
 1)褐色心腐の発生することがあるので、多肥や疎植をさけ、十分な培土を行う。
 2)黄変期に地上部が再生することがあるので、その場合には地上部処理を行う。