水稲新品種候補系統 北海278号の概要

北海道農業試験場 作物開発部 稲育種研究室

1.特性一覧表
系  統  名 水稲 北海278号 交配組合せ マツマエ/上116//北海258号
特     性 長所 1.酒質が良好である
   2.耐冷性が強い
   3.多収である
短所 1.苗質がやや劣る
2.割籾が多い
3.蒸し米の色がやや濃い
採用県および
普及見込み面積
北海道  1,000ヘクタ−ル
調  査  地 北海道農試(育成地) 北海道立上川農試
試 験 年 次 1994年〜1997年(中苗・標肥) 1994年〜1997年(中苗・標肥)
系統名・品種名 北海278号 きらら397 ゆきひかり 北海278号 きらら397 ゆきひかり
    (参考品種) (参考品種)   (参考品種) (参考品種)
早  晩  性 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早 中生の早
草    型 中間 穂数 偏穂数 中間 穂数 偏穂数
出穂期(月日) 8. 5 8. 6 8. 5 7.30 7.29 8. 2
成熟期(月日) 9.23 9.26 9.22 9.17 9.20 9.22
稈 長(cm) 73 69 73 71 64 73
穂 長(cm) 17.0 16.2 17.8 16.4 16.3 17.4
穂数(本/m2) 451 540 482 570 700 620
芒の多少・長短 稀・短 稀・短 中・短      
ふ  先  色 黄白 黄白 黄白      
頴    色 黄白 黄白 黄白      
脱  粒  性      
耐 倒 伏 性 中〜やや強 中〜やや強      
耐  冷  性 極強 やや強      
いもち耐病性
遺伝子型 Pi-k Pi-i,k Pi-a      
葉いもち* やや強 やや弱 やや弱      
穂いもち*      
玄米収量(kg/a) 58.6 54.5 56.4 60.4 55.3 54.2
収量比率(%) 108 100 103 109 100 98
千 粒 重(g) 24.1 22.6 21.2 23.0 21.6 19.6
玄 米 品 質 中上 中上 中上 上下下 上下上 上下上
検 査 等 級 2中上 1中下 1下 2中上 1下 1下
 食  味 中下 中上 中中 中下 中上 中中
蛋白質含有率(%) 5.8 6.0 6.0 6.3 6.6 6.6
アミロ-ス含有率(%) 23.3 21.2 22.2 23.6 21.1 22.0
注)*いもち耐病性評価は暫定評価である。
  蛋白質含有量およびアミロ-ス含有量は1995年〜1997年の平均値。

2.酒造特性一覧表(1997年育成地標肥栽培米)
項目 北海278号 きらら397 ゆきひかり   備考
原料米 吸水率 初添 36.8 40.0 37.2  
仲添 35.6 34.4 33.8
留添 28.4 33.8 31.0
製麹性
試験
グルコアミラ-ゼ活性(乾物換算) 206 183   高い方がよい
プロテア-ゼ活性(乾物換算) 3349 3372   低い方がよい
品温経過 順調 やや遅    
はぜ込み 良好 良好
はぜ廻り やや良
小仕込
み試験
アルコ−ル度(%) 17.9 17.9 17.8 高い方がよい
日本酒度 -3 -2 -4 甘辛度の指標、数字大が辛い
酸度(ml) 2.2 2.2 2.2 低い方がよい
アミノ酸度(ml) 0.9 1.1 1.0 低い方がよい
色度 0.012 0.012 0.013 数字小が色うすい
紫外部吸収 7.08 7.83 8.85 数字小が色うすい
官能評価 2.0 2.7 2.7 数字小が評価高
 注)製麹試験は、70%搗精米10kgを用いて道内B酒造株式会社で実施。
   吸水および小仕込み試験は70%搗精米200gを用い、道内C酒造株式会社で実施。

3.「北海278号」の特記すべき特徴
「北海278号」は中生の大粒・多収系統であり、障害型耐冷性が強く、酒造適性がある。

4.奨励品種に採用しようとする理由
 従来、北海道産米は酒造に不適との見方が根強く、原料米を道外からの移入に頼ってきた。従って、酒造好適米品種がなく、酒造原料用を特定した契約栽培等もほとんどない。しかし、近年の地酒ブ−ムの中で「道産原料を用いた本格的な地酒」の生産のために道内で栽培可能な酒造好適米品種が強く求められている。また、現在、道内の酒造原料米の使用量は年間7,000トン余りで推移しており、大半は道外産が占め、一部で一般生産された1,000トン余りの道産米が使用されているに過ぎない。しかし、一般食用米の食味改善のための品種改良や施肥法の改善によって低蛋白化が進んだことから、酒造原料としての道産米の品質評価も向上しており、今後、北海道に適応する酒造原料米品種の作付けにより一層の品質向上が図られれば、コスト面で有利な道産米の使用量の大幅な増加が期待できる。他方、道産米の一部は安価な酒造原料米として8,000トン余りが道外に出荷されており、販路の拡大のために良質で低コスト生産が可能な品種が求められている。
 「北海278号」は、中生の早の熟期で耐冷性が強い安定多収系統であり、大粒で酒造適性があり、その製成酒の酒質が良好であることから、北海道の酒造米としての適性を備えている。
 「北海278号」を「きらら397」の一部および「ゆきひかり」の一部に替えて普及することによって、北海道の酒造原料米生産を確立し、道産米の販路の拡大を図る。

5.普及見込み地帯および対象品種
1)栽培地帯  上川(士別以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島、檜山支庁管内の低蛋白米生産が可能な良地帯。
2)対象品種  「きらら397」の一部および「ゆきひかり」の一部

6.普及見込み面積  北海道  1,000ha