水稲新品種候補系統 北海280号の概要

北海道農業試験場 作物開発部 稲育種研究室

1.特性一覧表
系  統  名 水稲 北海280号 交配組合せ 道北53号/キタアケ
特     性 長所 1.粘りが強く、良食味である
   2.低アミロ−スで米菓等での
     加工適性が優れる
短所 1.初期生育がやや劣る
2.玄米の色沢が濃い
3.炊飯米の白さがやや劣る
採用県および
普及見込み面積
北海道  8,000ヘクタ−ル
調  査  地 北海道農試(育成地) 北海道立上川農試
試 験 年 次 1995年〜1997年(中苗・標肥) 1995年〜1997年(中苗・標肥)
系統名・品種名 北海280号 ゆきひかり 北海280号 ゆきひかり
    (対象品種) (参考品種)   (対象品種) (参考品種)
早  晩  性 中生の早 中生の晩 中生の早 中生の早 中生の晩 中生の早
草    型 偏穂数 穂数 穂数 偏穂数 穂数 穂数
出穂期(月日) 8. 9 8.14 8. 8 7.30 8. 5 7.30
成熟期(月日) 9.28 10. 7 10. 1 9.20 9.27 9.24
稈 長(cm) 70 69 69 69 71 67
穂 長(cm) 16.7 16.5 16.3 16.2 15.7 16.7
穂数(本/m2) 465 469 488 695 643 714
芒の多少・長短 稀・短 中・短 希・短      
ふ  先  色 黄白 黄白 黄白      
頴    色 黄白 黄白 黄白      
脱  粒  性      
耐 倒 伏 性 中〜やや強 中〜やや強      
耐  冷  性 やや強〜強 やや強      
いもち耐病性
遺伝子型 Pi-a,k Pi-a Pi-i,k      
葉いもち* やや強 やや弱      
穂いもち*      
玄米収量(kg/a) 53.5 48.8 52.4 54.3 46.9 59.3
収量比率(%) 110 100 107 116 100 126
千 粒 重(g) 22.4 23.1 22.7 20.1 21.1 21.4
玄 米 品 質 中上 中下 中上 上下下 上下 上下上
検 査 等 級 2上 2中 1下 2上 2下 2上
 食  味 上下 上下 中上 上下 上下 中上
蛋白質含有率(%) 6.6 6.3 6.3 7.1 7.0 6.6
アミロ-ス含有率(%) 14.1 16.6 20.6 14.7 16.7 21.1
 注)育成地の蛋白質含有率は、1996、1997年の成績である。
   育成地のアミロ-ス含有率は多肥栽培の成績である。
   *いもち耐病性評価は暫定評価である。

2.「北海280号」の特記すべき特徴
 中生の早の熟期の低アミロ−ス(ダル)系統であり、耐冷性、いもち耐病性を有し、栽培特性が優れる。炊飯米の粘りが強く、混米により食味の向上が図れる。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 北海道産米の食味は「きらら397」、「ほしのゆめ」等の良食味品種の育成・普及により著しく改良されてきたが、気象や土壌条件に恵まれない地帯では粘り、柔らかさの不足が指摘されており、これらの地帯の食味改善が急務である。また、近年、米の過剰基調のもとで道産米の在庫が増大し、販売促進のため新たな戦略が求められている。低アミロ−ス米は炊飯米の粘りが強く、柔らかい特性を持ち、混米により食味向上が図れる。また、冷えても硬くなりにくい特性から、持ち帰り弁当や加工米飯等の業務用米としての大きな需要が見込まれ、さらに米菓等の加工原料としての需要も期待される有望な粳米である。道内ではすでに「彩」が低アミロ−ス品種として育成され、高い食味評価を受けているが、熟期がやや晩く、耐冷性不十分、いもち耐病性弱などのため、栽培適地が空知北部の良地帯に限定されており、栽培適地の拡大が可能な低アミロ−ス品種が望まれている。
 「北海280号」は中生の早の熟期の系統であり、耐冷性およびいもち耐病性が「彩」、「きらら397」に優り、道内の広域での栽培が可能である。品質面でも、外観品質は「彩」に優り、炊飯米は、黄色味がやや強いが、単品や混米時の食味は良好で「彩」に近い水準である。
 「彩」の全部および「きらら397」の一部に替えて「北海280号」を普及することによって、道産米の食味向上と販路の拡大を図ろうとする。

4.普及見込み地帯および対象品種
1) 栽培地帯  上川(士別以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島、桧山支庁管内およびこれに準ずる良地帯。
2) 対象品種  「彩」の全部および「きらら397」の一部

5.普及見込み面積  北海道  8,000ha