新品種候補 (作成 平成10年1月)
総合農業 | 作物生産 | 夏作物 | てんさい | − | てんさい-Ⅰ-2-051-3 | |
北海道 | 作物 | 畑作 | てんさい | − | ||
てんさい新品種候補系統「北海70号」の概要 | ||||||
1.特性一覧表 | 北海道農試・畑研セ・甜菜育種研究室 | |||||
系統名 | 「北海70号」 | 組合せ | (「MOMS3901 × MOOT4027」)×「NK-212BR」 | |||
特徴 | 長所 1.そう根病抵抗性が強である。 2.健全畑における収量は既存抵抗性品種より優れる。 |
短所 | ||||
採用県と普及見込み面積 | 北海道一円のそう根病発病地帯 500ha |
調 査 地 | 育成地(北海道農業試験場) | ||||||
品種・系統 形質 |
北海70号 | モノホマレ | リゾール | モノホワイ ト |
マイティ | モノエース ・S |
スターヒル |
倍数性 種子の胚数 葉姿 葉色 葉形 T/R比 抽苔耐性 褐斑病抵抗性 根腐病抵抗性 そう根病抵抗性 耐湿性 |
二倍体 単胚 ヤヤ直立 緑 皮針 ヤヤ低 強 中 弱 強 ヤヤ弱 |
二倍体 単胚 直立 ヤヤ濃緑 皮針 低 強 ヤヤ弱 弱 − ヤヤ弱 |
二倍体 単胚 ヤヤ直立 緑 ヤヤ皮針 ヤヤ低 強 中 弱 強 ヤヤ弱 |
二倍体 単胚 直立 ヤヤ濃緑 皮針 ヤヤ低 強 弱 弱 − ヤヤ弱 |
二倍体 単胚 直立 ヤヤ濃緑 皮針 低 強 ヤヤ弱 弱 − ヤヤ弱 |
三倍体 単胚 ヤヤ開平 緑 楕円 ヤヤ低 強 弱 弱 − 中 |
二倍体 単胚 ヤヤ開平 緑 ヤヤ皮針 低 強 弱 弱 − ヤヤ弱 |
試験場所 | 系統名 品種名 |
根腐症 状株率(%) |
褐斑病 指 数 |
根重 (t/10a) |
根中 糖分(%) |
糖量 (kg/10a) |
対「モノホマレ」比(%) | |||
根重 | 根中糖分 | 糖量 | ||||||||
北海道農試 | モノホマレ 北海70号 リゾール |
0.0 0.2 2.0 |
0.3 0.5 0.0 |
6.08 5.76 5.50 |
16.27 16.79 16.71 |
987 970 924 |
100 95 88 |
100 103 100 |
100 98 89 |
|
同上 | ソウ根 病少発 畑 |
モノホマレ 北海70号 リゾール |
0.4 1.0 5.6 |
0.9 0.0 0.0 |
5.11 6.05 5.80 |
14.45 16.31 15.84 |
746 989 918 |
100 118 114 |
100 113 110 |
100 133 123 |
北海道立 中央農試 |
モノホマレ 北海70号 |
0.3 0.7 |
0.8 0.3 |
7.21 6.63 |
16.78 16.91 |
1,210 1,120 |
100 92 |
100 101 |
100 93 |
|
北海道立 上川農試 |
モノホマレ 北海70号 |
0.0 0.0 |
0.5 0.2 |
7.75 7.34 |
17.04 17.27 |
1,320 1,266 |
100 95 |
100 101 |
100 96 |
|
北海道立 北見農試 |
モノホマレ 北海70号 リゾール |
0.0 0.7 0.0 |
0.3 0.0 0.0 |
5.83 5.81 5.47 |
18.50 18.58 18.46 |
1,077 1,077 1,009 |
100 100 96 |
100 100 98 |
100 100 95 |
|
同上 | ソウ根 病少発 畑 |
モノホマレ 北海70号 リゾール |
0.0 0.0 0.0 |
1.6 0.2 0.3 |
3.30 5.15 4.76 |
12.49 16.77 16.13 |
416 864 769 |
100 156 144 |
100 134 129 |
100 208 185 |
北海道立 十勝農試 |
モノホマレ 北海70号 |
0.0 0.0 |
1.1 0.1 |
6.05 5.91 |
18.06 18.20 |
1,091 1,077 |
100 98 |
100 101 |
100 99 |
|
調査年次 | 平成7年〜9年(健全畑のリゾールのみ平成8年〜9年) |
2.「北海70号」の特記すべき特徴
てんさい「北海70号」は、国際共同研究により育成したもので、ドイツのクラインワンツ
レーベン種子会社が育成したそう根病抵抗性の単胚二倍体単交配雄性不稔種子親系統「MOMS39
01×MOOT4027」に、北海道農業試験場が育成した多胚二倍体花粉親系統「NK-212BR」を交配し
て育成したそう根病抵抗性の単胚二倍体三系交配一代雑種である。
そう根病発病畑では、標準品種「モノホマレ」、そう根病抵抗性品種「リゾール」より収量
性(根重、根中糖分、糖量)が優り、そう根病抵抗性は「リゾール」並に強い。健全畑では
「モノホマレ」より収量性はやや劣るが、「リゾール」より優れ、褐斑病に対しても「モノホ
マレ」より強い。抽苔は「モノホマレ」よりやや少ない。根腐病抵抗性、耐湿性は、「モノホ
マレ」並である。
3.奨励品種に採用しようとする理由
てんさいのそう根病は、ポリミキサ菌により媒介される土壌伝染性のウイルス病で、防除が
困難であるとともに、根重、根中糖分を著しく低下させるため生産現場で大きな問題となって
いる。現在、普及しているそう根病抵抗性品種は収量性が低いことから、そう根病に対して抵
抗性を持ち、かつ健全畑では「モノホマレ」並の収量性を示す品種の早期開発が強く要望され
ている。
「北海70号」は、そう根病抵抗性で、健全畑でも「モノホマレ」に近い収量性を示し、そ
う根病発病畑では「リゾール」より収量性が高い。
以上のことから、北海道一円のそう根病発病地帯に普及することにより、畑作地帯の輪作体
系の維持、農家の収益性向上に貢献することが期待される。
4.普及見込み地帯
北海道一円のそう根病発病地帯
5.栽培上の注意
1)「北海70号」はそう根病ほ場抵抗性を有するが、前回作付したほ場の発病程度を十分考慮して、
汚染程度が高いと思われるほ場での栽培は避ける。
2)根腐病抵抗性、耐湿性が弱いので、これらの発生が懸念される地帯での栽培は避ける。