新品種候補 （作成 平成１０年１月）

課題の分類
新品種候補名 てんさい「ＨＴ １２」
試験場所名 北海道立十勝農試、北見農試、中央農試、上川農試、北海道農試
＜協力＞日本甜菜製糖㈱、北海道糖業㈱、ホクレン農業協同組合連合会

１．来歴および試験経過

１）来 歴
「ＨＴ １２」は、スウェーデンのノバルティス種子会社（旧 ヒレスヘッグ種子会社）が育成した二倍体、単胚の一代雑種である。
二倍体単胚雄性不稔系統「ＭＳ−３５０−Ｏ」と二倍体多胚花粉親系統「２Ｘ／４３」を交配し、平成４年（1992年）に育成された。
２）試 験 経 過
（１）平成５年：北海道糖業株式会社が輸入し、「ＨＭ 93-06」の系統名で輸入品種予備試験を行った。
（２）平成６年〜平成９年：「ＨＴ １２」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場並びに北海道農業試験場において輸入品種検定試験を行った。
（３）平成８年〜平成９年：十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
（４）平成８年〜平成９年：全道１７カ所において現地検定試験を行った。

２．特 性

１）一般的性状：「ＨＴ １２」は、葉長は中で「スターヒル」並、葉姿はやや直立である。葉数は「スターヒル」並、葉形はやや皮針形、葉身の大きさはやや小で「スターヒル」よりやや小さい。クラウンの大きさは「スターヒル」並の小、根形はやや短円錐形、根周が「スターヒル」よりやや大きい。分岐根は少ない。
２）根重：「モノホマレ」並で、「スターヒル」より多い。
３）根中糖分：「モノホマレ」より高く、「スターヒル」並である。
４）糖量：「モノホマレ」、「スターヒル」よりやや多い。
５）品質：アミノ態窒素は、「モノホマレ」より高く、「スターヒル」並である。カリウムは、「モノホマレ」、「スターヒル」並である。ナトリウムは、「モノホマレ」よりやや低く、「スターヒル」より高い。不純物価は、「モノホマレ」、「スターヒル」並である。
６）抽苔耐性：抽苔耐性は「モノホマレ」並の「強」である。
７）耐病性：褐斑病抵抗性は「スターヒル」並の「弱」である。
８）耐湿性：「モノホマレ」、「スターヒル」より強く、「モノエースＳ」並の「中」である。

表１ 各農試における成績（平成６〜９年の４カ年平均）
場 所 系 統 名
品 種 名		 根腐症状
株率(％)		 根 重
(t/10a		 根中糖分
（％）		 糖 量
(kg/10		 対「モノホマレ」比(％)
根重 根中糖分 糖量
十勝農試 ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 0.0
0.0
0.0		 6.41
6.25
6.08		 17.82
17.49
17.90		 1,137
1,092
1,087		 103
100
97		 102
100
102		 104
100
100
北見農試 ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.1
0.0
0.2		 6.22
6.03
6.09		 18.59
18.10
18.66		 1,150
1,089
1,132		 103
100
101		 103
100
103		 106
100
104
中央農試 ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.6
0.6
1.3		 7.38
7.66
7.15		 17.13
16.65
17.14		 1,255
1,272
1,222		 96
100
93		 103
100
103		 99
100
96
上川農試 ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.9
0.2
0.6		 7.23
7.42
7.08		 17.82
17.02
17.79		 1,287
1,265
1,262		 97
100
95		 105
100
105		 102
100
100
北 農 試 ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.2
0.0
1.0		 6.40
6.36
6.13		 16.28
16.19
16.71		 1,043
1,027
1,023		 101
100
96		 101
100
103		 102
100
100
注）北農試は平成６〜８年は札幌市、平成９年は芽室町である。

表２ 特性検定試験・品質調査（十勝、根釧、中央、北見、上川、北農試、平成６〜９年）
系 統 名
または
品 種 名		 褐斑病抵抗性
発病程度(十勝		 抽苔耐性(根釧
抽苔率（％）		 耐湿性(中央)
腐 敗 度		 品質調査(Ｈ6〜9年)
有害性非糖分
(meq/100g)		 不純
物価
(％)
９上 10上 判定 Ｈ８ Ｈ９ 判定 Ｈ８ Ｈ９ 判定 アミノN Ｋ Ｎａ
ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.66
1.35
1.45		 0.94
1.19
0.89		 弱
ヤ
(		 0.0
0.0
-		 0.0
0.0
-		 強
強
(		 51.0
87.2
82.2		 35.0
79.9
60.5		 中
ヤヤ
ヤヤ		 1.84
1.56
1.76		 4.54
4.55
4.47		 0.43
0.48
0.38		 4.20
4.11
4.07
注１）褐斑病発病程度は平成８〜９年の２カ年平均値。（）は平成８年以前の結果。

２）不純物価(％)＝(3.5×Na(%)＋2.5×K(%)＋10×Amino-N(%))÷根中糖分（％）×100
Na：ナトリウム Ｋ：カリウム Amino-N：アミノ態窒素

表３ 現地検定試験成績全道平均（平成８〜９年、１７カ所）
系 統 名
品 種 名		 根腐症状
株率(％)		 根 重
( t/10a)		 根中糖分
（％）		 糖 量
(kg/10a)		 対「モノホマレ」比（％）
根 重 根中糖分 糖 量
ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 1.3(2.6)
0.8(1.0)
-(6.5)		 5.81(5.84)
5.71(5.78)
- (5.52)		 17.31(17.17)
16.74(16.67)
- (17.06)		 1009(1008)
958( 973)
- ( 948)		 102(101)
100(100)
-( 96)		 103(103)
100(100)
-(102)		 105(104)
100(100)
-( 97)
注）（）内は「スターヒル」供試の延べ８カ所の平均値。

表４ 根腐病、黒根病調査（平成９年）
系 統 名
品 種 名		 根腐病発病程度 黒根病発病程度
十勝農試 北 農 試 平均 中央農試 現地７カ所
ＨＴ １２
モノホマレ
スターヒル		 0.64
0.55
0.75		 3.1
2.2
3.6		 1.9
1.4
2.2		 0.29
0.44
0.83		 0.14(0.11)
0.26(0.24)
- (0.64)
注１）根腐病は病原菌を接種、黒根病は無接種。

２）（）内は「スターヒル」供試の延べ４カ所の平均値。

３．配布可能種子量

平成１０年度 ２，０００ｋｇ 平成１１年度以降 ４，０００ｋｇ

４．適応地帯および普及見込面積

北海道一円 平成１０年度 ２，０００ｈａ 平成１１年度以降 ４，０００ｈａ

５．栽培上の注意

１）褐斑病に対する抵抗性は弱なので、適期防除に留意する。