1.課題の分類

2.新品種候補系統名 アカクローバ「KRANO(クラノ)」

3.場 所 名 北海道農試 北見農試 根釧農試 天北農試 新得畜試 滝川畜試

4.来歴および試験経過
1)来歴
アカクローバ「KRANO」は、デンマークの DLF TRIFOLIUM A/S社で育成された。「Bora」×「Monark」のF2世代を基礎集団とし、収量性とステムネマトーダ抵抗性を評価し、選抜、育成された。1973年にデンマークのナショナルリストに登録、1974年にOECD登録された。
2)導入および試験経過
ホクレンが導入し、予備検定試験を昭和59年から昭和61年までと昭和62年から平成2年までの2回行った。地域適応性検定試験は、平成7〜9年に北海道農試、北見農試、根釧農試、天北農試、新得畜試、滝川畜試において第4次アカクローバ品種比較試験として、標準品種を「ホクセキ」、参考品種を「アルタスウェード」とし、チモシー中生品種「キリタップ」との混播条件で行った。また、根釧農試ではチモシー早生品種「ノサップ」との混播試験、北見農試では単播試験を並行して行った。

5.特性
1)早 晩 性 :1番草の開花始は「ホクセキ」より3週間以上遅く、晩生である。「アルタスウェード」との比較ではやや早生である。
2)形態的特性:小葉の大きさは「ホクセキ」及び「アルタスウェード」より大きい。草丈は「ホクセキ」より低く、「アルタスウェード」よりやや高い。
3)混播適性 :チノシーとの混播において、マメ科率が「ホクセキ」より低く、「アルタスウェード」並かやや高い。また、「ホクセキ」に比べ、チモシーの被度を高く維持し、裸地が少ないことからみて、混播適性に優れている。
4)競合力 :マメ科率と被度からみて、競合力は「ホクセキ」より弱く、「アルタスウェード」より強い。
5)越冬性 :「ホクセキ」並である。
6)永続性 :アカクローバ収量の減少程度からみて、永続性が高いことが特徴の「ホクセキ」と大差ない。
7)乾物率 :「ホクセキ」より低く、「アルタスウェード」並である。
8)収量性 :「ホクセキ」より低く、「アルタスウェード」より高い。チモシーとの混播条件では実用レベルである。
9)耐倒伏性 :「ホクセキ」より強く、「アルタスウェード」よりやや弱い。
10)耐病性 :さび病、うどんこ病、輪紋病については「ホクセキ」並である。

6.試験成績
表1 各試験場所における「KRANO」の早晩性
品種名 北農試
 
2年目
1番草
開花期
北見
(混播)
2年目
1番草
開花始期
北見
(単播)
2年目
1番草
開花程度*
根釧
(キリタップ)
2年目
1番草
開花程度
天北
 
3年目
2番草
開花始期
新得
 
3年目
1番草
開花程度
滝川
 
2年目
1番草
開花始期
KRANO 1.8** 未着蕾 未着蕾
ホクセキ 6.24 6.3 9.0*** 開花期 8.23 着蕾 6.24
アルタスウェード 1.3 未着蕾 未着蕾
調査日 6.26 7.01 7.22 7.15 9.16 6.25 7.01
 注)標準品種:ホクセキ 参考品種:アルタスウェード 未:調査項目のステージに達していないことを示す。
 1)1:少、無 〜 9:多 2)開花始に至っていない。 3)開花始は7月1日

表2 混播試験における「KRANO」の諸特性
試験場所 品種名 マメ科率(DW%) 総収量比1) 3/2年目
RC収量比
(DW%)
RC乾物率(%) RC草丈(cm)
2ー3年平均 (TY+RC DW%) 2ー3年平均 2ー3年平均
1番 2番 1年 2年 3年 合計  1番   2番  1番 2番
北農試 KRANO 29 49 86 104 104 105 73 18.0 19.0 95 52
ホクセキ 30 65 10 119 119 247 67 18.0 22.2 98 63
アルタス 27 36 77 96 93 94 59 16.3 17.6 89 36
北見農試 KRANO 36 30 90 81 81 82 104 11.1 17.0 86 78
ホクセキ 38 58 51.4 125.4 135.5 312.2 102 13.0 20.8 90 82
アルタス 32 21 93 81 78 82 159 11.0 18.1 85 60
根釧農試 KRANO 35 19 97 90 97 94 55 12.4 16.4 87 48
ホクセキ 36 44 48.9 125.1 107.3 281 69 14.8 18.9 90 71
アルタス 27 13 100 92 88 92 61 12.6 15.9 84 40
根釧農試
(ノサップ)
KRANO 31 29 96 100 97 98 91 11.4 13.1 67 63
ホクセキ 29 40 59.7 105.3 98.7 263.7 85 12.4 14.6 68 72
アルタス 29 20 94 92 96 94 69 11.7 12.7 69 56
天北農試 KRANO 19 13 97 103 94 98 70 12.2 16.3 79 41
ホクセキ 24 29 27.2 84.5 90.5 202.3 113 15.0 17.9 80 43
アルタス 19 14 92 100 90 94 90 11.1 16.2 74 38
新得畜試 KRANO 23 8 96 101 93 97 16 10.6 13.5 88 47
ホクセキ 26 24 43.9 102.3 115.4 261.6 20 12.8 15.2 93 75
アルタス 22 4 100 94 90 93 16 10.5 12.5 81 43
滝川畜試 KRANO 25 12 59 109 99 98 45 15.9 17.3 81 53
ホクセキ 33 37 53 111 120 283 86 16.2 22.5 89 72
アルタス 25 6 56 105 89 92 24 14.5 18.8 74 46
平均 KRANO 28 23 89 98 95 96 65 13.1 16.1 83 55
ホクセキ 31 43 42 110.4 112.3 264.7 77 14.6 18.9 87 68
アルタス 26 16 87 94 89 92 68 12.5 16.0 80 45
 注)標準品種:ホクセキ 参考品種:アルタスウェード 1)ホクセキは実数(kg/a)で示した。品種名でアルタス=アルタスウェード。

表3 「KRANO」の形態的特性、越冬性、被度、耐倒伏性および耐病性等
調査項目 KRANO ホクセキ
(標準)
アルタス
(参考)
調査回数
小葉の大きさ(長さ・幅mm) (60・37) (56・32) (57・35) 3
萌芽良否(1:不良〜9:良) 4.8 4.7 4.3 10
越冬性(1:〜9:強) 5.4 5.5 5.4 6
アカクローバ被度(3年目%) 33 40 24 17
チモシー被度(3年目%) 63 55 71 12
裸地率(3年目%) 14 17 11 12
倒伏程度(1:無〜9:甚) 3.5 4.4 3.2 19
さび病発生程度(1:無〜9:甚) 3.0 2.9 3.5 10
うどんこ病発生程度(1:無〜9:甚) 2.5 2.2 2.3 14
輪紋病発生程度(1:無〜9:甚) 1.9 1.8 2.2 9
 注)品種名でアルタス=アルタスウェード。

7.配布しうる種子量 10t (増殖中)

8.普及対象地域および栽培利用上の留意点
北海道一円。主として、チモシー中生品種との組合せで利用する。なお、チモシー早生品種との組合 せでは、競合力の穏やかな品種として利用できる。