成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 研究課題名:十勝地方における小豆のピックアップ収穫技術 小豆のピックアップ収穫技術確立試験 豆類等の高品質・省力収穫技術と高収益輪作体系の確立 (イ)小豆機械化適応栽培法と高品質収穫技術の開発 担 高規格豆類の生産調整技術の開発 予算区分 道単(豆基)、国補(地域基幹)、受託(十勝圏機構) 研究期間 平6〜9年度 担当科:十勝農試研究部豆類第二科,農業機械科 中央農試農産化学部品質評価科 協力分担関係:道立十勝圏地域食品加工センター 十勝管内農業改良普及センター畑作部会 |
1.目 的
十勝地方における小豆のピックアップ収穫技術について検討する。
2.方 法
1)試験の構成
試 験 内 容 | 担当場および研究科 | 試験年次 |
ピックアップ収穫の機械化体系 | 十勝農試研究部農業機械科 | 1994〜97 |
小豆のピックアップ収穫の品質、製餡試験 | 十勝農試研究部豆類第二科 中央農試農産化学部品質評価科 道立十勝圏地域食品加工技術センタ− 十勝管内農業普及センタ−畑作部会 |
1994〜96 1994〜96 1994〜96 1994〜96 1997 1995〜97 |
収穫時期による品質変動要因 | 十勝農試研究部豆類第二科 | 1997 1995〜97 |
ピックアップ収穫における栽培方法 | 十勝農試研究部豆類第二科 十勝農試研究部農業機械科 中央農試農産化学部品質評価科 |
1995〜97 |
2)供試品種 「エリモショウズ」
3.結果の概要
1)完熟期(熟莢率100%)以降に収穫した子実の外観品質(検査等級、屑粒率)は成熟期(熟莢率70〜80%)収 穫のニオ積みと明確な差は無かった。また、製餡試験では差異は明らかに出来なかった(表1、表2)。
2)ピックアップ収穫した子実の種皮色は、内部温度が外気温より高いビニ-ル帽子のニオ積みに比べて、やや淡い。
このため、登熟が遅延した場合は、ピックアップ収穫では"色浅粒"と判定される子実がやや多く、検査等級は やや劣る場合があった(図2)。
3)小豆の熟莢では気温が15℃以上で降雨が続いた場合、子実の吸水、発根による屑粒率が増加し、地干し乾 燥は立毛より屑粒率が多かった(図4)。
4) 熟莢率100%における小豆のピックアップ収穫による機械収穫体系では圃場損失が5%以下と少なく、残さ処理 を含む体系の投下労働量は6.1〜10.9人時/haであった(図1)。
5)茎、子実水分は完熟期以後漸減し、1~2週間で子実水分は農協等受け入れ水分(16~18%)となった(図3)。
6)密植栽培(60×10cm、2本立て)では標準播(60×20cm、2本立て)より10%以上多収となり、完熟期は3日 以上早まり、特に低温年では登熟が進んだ(表3)。また、密植栽培等で倒伏した場合でも、ピックアップ収穫 での圃場損失の増加は認められなかった。
[ピックアップ収穫の要点]
作 業 | 内 容 | |
播 種 | 密植栽培が望ましい。 | |
管 理 | 中耕時の培土は最小限とする。 | |
収穫 | 作物条件 | 熟莢率100%で、子実水分16〜18%[通常では完熟期後1〜2週間程度] 茎水分は50〜60%以下。 |
刈取作業 | 晴天が予想される日の朝に行う。 晴天が続く場合には2〜3日の地干し期間をとってもよい。 |
|
拾い上げ 脱穀作業 |
土壌表面が乾燥している時に行う。 ピックアップ用の爪は土に深く入れないように調整する。 |
|
残さ処理 | シートまたは集積排出装置等を利用して圃場に集積し、適切な処理を行う。 |
表1 ニオ積みと完熟期以降収穫子実の品質、製餡試験結果
表2 製餡業者による製餡加工評価
表3 栽植密度試験(十勝農試:1995〜97年)
処理 | 開花始 (月日) |
成熟期 (月日) |
完熟期 (月日) |
倒伏程度 | 主茎長 (cm) |
主茎節数 | 子実重 (kg/10a) |
標準比 | 百粒重 (g) |
屑粒率 (%) |
品質 |
疎植(60・5cm) 標準(60・0cm) 密植(60・0cm) |
7.30 7.30 7.30 |
9.29 9.28 9.24 |
10. 5 10. 5 10. 2 |
1.3 1.6 2.1 |
54 56 57 |
12.8 12.6 11.2 |
319 332 367 |
96 100 111 |
15.1 15.3 15.2 |
1.8 1.9 1.6 |
2下 2下 2下 |
4.成果の活用と留意点
1.小豆のピックアップ収穫技術は十勝地方の初霜害の受ける恐れが少ない地域に適用する.
2.密植栽培では完熟期が3日以上早まり、収穫適期がニオ積みより遅いピックアップ収穫に適する。
3.小豆のピックアップ収穫の適期は子実水分が農協等受入れ水分(16〜18%)となる完熟期後1〜2週間である。
4.低温年で完熟期が遅れた場合は初霜害を受ける恐れがある。
5.高温年で9月の上中旬に完熟期となった場合、降雨害が懸念されるので、適期に速やかに収穫する。
6.小豆のピックアップ収穫では落葉病対策として収穫後の茎葉残さは集積し、十分な処理を行う。
5.残された問題とその対応
1.大規模小豆栽培に対応した冷害年での初霜害防止対策の開発。
2.小豆の乾燥調製技術の開発。
3.小豆の種皮色の決定時期と要因の解明。
4.良質、早生、多収、落葉病抵抗性品種の育成。