成績概要書(作成10年1月)
課題の分類 研究課題名:束どりによるほうれんそうの (ホウレンソウの省力高収益生産法の確立 予算区分:道単 担当科:上川農試研究部園芸科 担当者: 研究期間:平7〜9年度 協力分担関係: |
1.目的
収穫調製の作業を軽減化するために、従来の収穫した個体をばらし調製し、計量して再度束にする栽培法ではなく、収穫する時点でFG袋に入るまたは結束できるように、ある程度の束を作りながら栽培し、収穫後子葉の除去程度の調製ですむような栽培法の開発をめざした。
2.試験研究方法
1)栽植様式の検討
平成7年:2モデル(すじ播き、丸播き)×一束個体数(8、10、12個体)
2)栽植密度の検討
平成8年:条間2段階(15㎝、20㎝)×一束個体数(5、8、10、12個体)
3)束どり栽培と慣行栽培との比較検討
平成9年:束どり(条間20㎝、播種長20㎝、個体数8〜10)
慣行栽培(条間20㎝、個体間5㎝)
播種日:6月3日(トニック)、7月8日(晩抽ジュリアス)
3.結果の概要
1)栽植様式の検討
①一定の長さに播種し隣り合う畦の播種部分と隣り合わない栽植様式すじ播きと、一カ所の植え穴に播種し植え穴を一定間隔で配置する栽植様式丸播きを検討した。束重は両栽植様式で大差がなかったが、すじ播きは束内の草丈の揃いが比較的よく、収穫調製作業などが容易であった(表1)。
②すじ播きについて、束と束の間隔、隣り合う畦との間隔および束内の個体数ついて検討した結果、条間20㎝、播種長20㎝が収穫調製作業性などから適しており、束内の個体数は8、10個体で束重の揃いも比較的よく、個体の充実程度も同程度であった(表2)。
2)束どりの栽植様式・密度
条間20㎝、播種長20㎝に播種粒数は12粒とし、無間引き栽培で束内個体数は8〜10個体を目標とする。隣り合う畦の播種部分とは、隣り合わないようにする。収穫時期は、束重200g以上を目処とし、200g未満の束には不足分を加える(図1)。
3)慣行栽培との比較、検討
束どりは、シードテープ加工することで慣行栽培と同様の播種が可能となった。束どりによって間引き作業が不要となり、収量(束数)は慣行栽培の166%であり、省力により収穫調製時間は慣行栽培の63%であった(図2)。
表1 異なる栽植様式における束重、草丈および個体重(平成7年)
栽植 様式 |
一束 個体 数 |
収穫 到達 日数 |
平均 束重 (g) |
変動 係数 |
収量1) (kg/a) |
束内個体の | |||
草丈 (cm) |
変動 係数 |
個体重 (g) |
変動 係数 |
||||||
すじ 播き |
8 10 12 |
31 31 31 |
190 227 245 |
19.7 21.5 18.8 |
105 125 135 |
25.8 27.1 26.9 |
8.8 9.4 8.1 |
33.7 26.9 18.8 |
41.3 43.8 39.5 |
丸播き | 8 10 12 |
31 31 31 |
204 248 225 |
13.8 20.0 16.0 |
226 275 250 |
25.5 26.4 26.0 |
13.1 13.4 10.2 |
24.1 23.1 16.4 |
45.9 48.9 51.4 |
表2 異なる栽植密度における束重、草丈、個体重および束の品質の2作期の平均(平成8年)
条間 | 一束 個体 数 |
平均 束重 (g) |
変動 係数 |
個体内の | GM1) | 個体重 / 草丈 |
束内 規格内2) 個体率(%) |
||||
草丈 (cm) |
変動 係数 |
個体重 (g) |
変動 係数 |
||||||||
15cm | 5 8 10 |
104.5 111.5 117.1 |
13.6 16.5 15.5 |
25.4 25.4 24.7 |
14.0 16.6 17.8 |
22.3 15.6 12.6 |
38.8 47.8 54.1 |
43.2 38.5 40.1 |
0.88 0.62 0.51 |
59.3 49.0 53.0 |
|
20cm | 8 10 |
186.0 186.3 |
14.1 9.9 |
27.1 25.9 |
13.4 16.9 |
23.4 20.4 |
38.3 44.4 |
40.2 40.2 |
0.86 0.79 |
69.8 59.6 |
図1 束どり栽植様式図
4.成果の活用面と留意点
1)雨よけハウス夏まき(7〜8月播き)作期に適用する。
2)束内には草丈22〜30㎝(M、Lサイズ)が混在するため、契約栽培が可能な場合のみ採用する。
3)発芽勢、発芽率が高く、晩抽性の品種を使用する。
5.残された問題点とその対応
1)束重200g以上への揃い及び束内個体の揃いの向上
2)適応作期の拡大