成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 北海道 作物 園芸
研究課題名:ヒートポンプ利用による地温制御,電照によるアルストロメリアの開花調節
      (環境制御による花きの周年栽培確立試験)
予算区分:共同研究
研究期間:平成6〜8年度
担当科:道南農試研究部園芸科,(株)北海道電力総合研究所
協力分担関係:

1.目 的
 北海道電力株式会社で開発・改良を行っているヒートポンプを利用し,冬季は地中暖房,夏季は地中冷房を,また秋冬季に電照を行うことにより開花時期を調節し,アルストロメリアの周年的に安定した栽培法を確立する。

2.方 法
1)試験実施場所:農試内温室(鉄骨ポリカーボネート樹脂波板張り)
2)試験年次および試験規模:平成6〜8年度 1品種6株,1反復
3)供試品種:「アモール」,「ウィルヘルミナ」,「ティアラ」,「ピンクトライアンフ」,「ラパーズ」,「ロジタ」
4)栽培法
 a.定植期:平成5年12月25日
 b.栽植密度:床幅90cm,2条植え,条間40cm,株間45cm,2.4株/㎡
 c.夏季の遮光:7〜9月にかけて黒寒冷シャ,50%
 d.冬季加温条件:最低温度9℃に設定
5)試験処理
 a.ヒートポンプによる夏季の地中冷却法
   パイプの埋設本数の影響(平6):無処理,ベット当たり3,4本埋設
   地中冷却効果の品種間差(平6〜8):無処理,地中冷却(冷却期間6〜9月)
   地中冷却時間による効果の差(平7,8):昼夜冷却,深夜冷却(23〜7時)
 b.ヒートポンプによる冬季の地中加温法
   パイプの埋設本数の影響(平6):無処理,ベット当たり3,4本埋設
   地中加温効果の品種間差(平6〜8):無処理,地中加温(加温期間6〜9月)
   地中加温時間による効果の差(平7,8):昼夜加温,深夜加温(23〜7時)
c.秋冬季の電照法
   光源の種類:白熱灯(平6〜8),高圧ナトリウムランプ(平6),メタルハライドランプ(平6) 植物育成用蛍光灯(平7),赤色蛍光灯(平7,8),青色蛍光灯(平8)
   電照と地中加温の相乗効果:無処理区,地中加温区,電照区,地中加温+電照区
 d.ヒートポンプ・電照システムの経済評価 中央農業試験場経営部に依頼

3.結果の概要
1)夏季の地中冷却により早期開花,処理期間の収量増,品質向上効果が認められた。
2)冬季の地中加温により処理期間の収量増加効果が見られた。葉芽の減少は全ての品 種で認められた。
3)秋冬季の電照により早期開花,処理期間の収量増,品質向上効果が認められた。葉 芽の減少は全ての品種で認められた。処理終了後に採花のピークが遅れる傾向であった
4)電照+地中加温で電照,地中加温単独処理より早期開花,処理期間の収量増効果が 認められた。
5)地温制御により年間の収量増が認められた。処理終了後に採花のピークが遅れる傾 向であった。
6)地温制御+電照で地温制御,電照単独処理より収量増効果が認められ,従来の栽培 法に比べ夏秋季の収量が増加し,年間で最も採花の多い春季の採花のピークが遅れた。 また葉芽の発生も減少した。
7)以上の処理については品種により,効果が低いものや認められない品種もあった。
8)経済性の評価では供試品種の平均で従来の栽培法よりやや収益性が高かった。

 表1 地温制御(昼夜地中・冷却加温)、電照(白熱灯)が年間収量に与える影響
品種 処理 収量(本/株・年※※) 無処理区(100)に対する比
平成6年  7年   8年   平均  平成6年  7年   8年  平均※ 
アモール 無処理 16.8 47.7 45.8 36.8 100 100 100 100
電照 23.2 53.5 56.8 44.5 138 112 124 121
地温制御 30.0 50.4 45.2 41.9 178 106 99 114
地温制御+電照 35.5 45.5 41.8 40.9 211 95 91 111
ウィルヘルミナ 無処理 37.5 62.8 37.0 45.8 100 100 100 100
電照 35.2 58.3 44.2 45.9 94 93 119 100
地温制御 34.8 48.7 31.5 38.3 93 77 85 84
地温制御+電照 33.7 59.0 35.3 42.7 90 94 95 93
ティアラ 無処理 10.3 60.2 57.3 42.6 100 100 100 100
電照 26.4 65.8 70.0 54.1 255 109 122 127
地温制御 16.5 60.3 71.5 49.5 160 100 125 116
地温制御+電照 27.8 72.7 80.5 60.3 269 121 140 142
ピンクトライアンフ 無処理 11.7 54.0 33.O 32.9 100 100 100 100
電照 12.3 50.3 51.5 38.1 106 93 156 116
地温制御 16.6 52.3 64.1 44.3 142 97 194 135
地温制御+電照 21.3 54.0 54.0 43.1 183 100 164 131
ラパーズ 無処理 18.5 72.0 56.5 49.0 100 100 100 100
電照 29.0 78.5 90.2 65.9 157 109 160 134
地温制御 19.7 67.9 74.7 54.1 106 94 132 110
地温制御+電照 40.8 77.5 97.0 71.8 220 108 172 146
ロジータ 無処理 22.5 52.2 42.3 39.0 100 100 100 100
電照 23.8 47.6 50.0 40.5 106 91 118 104
地温制御 22.6 51.6 73.3 49.2 100 99 173 126
地温制御+電照 36.2 80.8 77.9 65.O 161 155 184 167
 *平均※:3カ年合計収量に対する比、年※※1平成6年:8月〜翌年3月、平成7・8年:4月〜翌年3月

 表2 年間の収量に対する処理効果
品種 電照+
地温制御
電照 地温制御  冷却  加温
年間  11〜3月 年間    8〜11月 12〜3月
アモール
ウィルヘルミナ
ティアラ
ピンクトライアンフ
ラハパーズ
ロジタ
 *無電照・無地温制御区に対する収量比
 ◎:130%<,○:130〜1lO,〜:11O〜90,△:70〜90

 表3 処理時期における切花品質
品種  電照  地中冷却 地中加温
アモール
ウィルヘルミナ
ティアラ
ピンクトライアンフ
ラパーズ
ロジタ
 *無電照・無地温制御区に対して,○:良い,〜:変わらない,△:悪い

 表4 10a当たり農業所得試算(円)および分岐点売り上げ収量
  4品種平均*
無処理区 深夜処理 昼夜処理
収入 施設投資額 429,000 31,218,914 131,218,914
出荷本数 118,300 11,453,001 156,773
販売単価 77.1 88.3 90.3
販売額 9,125,200 12,829,530 14,153,635
費用 流動費小計 5,928,271 6,528,339 7,757,841
費用合計 6,752,245 10,318,676 11,565,287
差引労働所得 2,372,955 12,510,854 2,588,348
    4品種平均*
無処理区 深夜処理 昼夜処理
分岐点売り上げ 4,468,832 7,189,107 8,028,060
分岐点収量 57,934 81,420 88,923
分岐点販売単価 37.8 49.5 51.2
 *4品種:アモール、ティアラ、ピンクトライアンフ、ロジタ
 出荷収量:採花2,3年目の切花長 80㎝以上、花梗数3以上の収量
 販売単価は東京都中央卸売市場における道産品の単価(全品種込み)
 深夜処理:深夜のみ地温制御十電照
 昼夜処理:昼夜地温制御十電照

4.成果の活用面と留意点
品種によっては地温制御,電照効果が低い場合や認められない場合があるので品種の選定に留意する。

5.残された問題点とその対応
新品種に対する地温制御,電照効果の把握