成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 北 海 道 農村計画 農業物理
研究課題名:電話回線を用いたファームポンドの水位遠方監視システム
予算区分:経常
担当者:秀島好昭 中村和正 大野隆
研究期間:平6−9

1.目 的
 畑地潅漑事業で造成された、農業用水利施設の水管理の円滑化と、管理労力・管理コストの低減を図るため、有効な水管理システムの開発を行う。

2.方 法
 国営かんがい排水事業余市地区で造成された、仁木ファームポンド(以下ファームポンドはFPと略す)で水利用実態調査を行った。調査結果から明らかとなった水利施設管理の問題点を改善するため、簡易なFP水位遠方監視システムを開発した。本システムは、1996年より、仁木FPで試験運用を開始した。

3.結果の概要
1) 仁木FPでの水利用実態調査の結果、作物が生育用水を必要とするピーク時期に干天が続いた場合、FPの調整水位(貯留残量)が0になる日があった(図−1)。
2) 水需要が高まると、施設管理者は、施設の安全確保と公平な用水配分のために、FPの水位を日夜監視する必要が生じる。テレメータ施設のない仁木FPでは、直接現地へ足を運んで水位の目視確認を行わなければならず、多大な管理労力を強いられていた。
3) 用水需要の大きなFPには、何らかのテレメータ施設が必要であるが、従来のシステムは、①高価である、②情報を受ける場所が管理所などに限られる、といった課題があった。これを解消するために、一般の電話回線を通じて電話機やFAX、ポケットベルなどに水位情報を伝達できる簡易なFP水位遠方監視システムを開発した。
4) 仁木FPに設置したシステム(図−2)は、①過去24時間の水位変化のFAX送信(図−3)、②水位異常低下時の警告発信、③任意時刻の水位の音声応答(システムに電話をかけると、その時の水位が音声で聞ける)、④システム自体の誤作動の監視、という4つの機能を有している。
5) このシステムにより施設管理者は、いつでも、どこにいてもFPの水位情報が得られるようになり、管理労力の省力化ができた。また、個々の農家にもシステムの電話番号が知らされていることから、実際に水位情報を得るために、一部農家がシステムを利用するようになり、水管理に対する理解と協力が得られるようになった。
6) 本システムの維持費用は、通常の使用を想定した場合、約33,000円/年と試算され、既存の遠方監視装置に比べ安価である。2年間の試験運用で、センサーの絶縁不良防止のために、定期的な清掃が必要であることがわかったが、その他には故障がなかったことから、本システムが簡易な水管理システムとして有効であると確認できた。

4.成果の活用面と留意点
1) 本システムは、製品化されれば約200万円弱程度での提供が可能であると考えられる。これは、テレメータ等を活用した既存の管理システムに比べ非常に安価である。
2) 他地区の水利施設で本システムを応用するにあたっては、地区毎の水利用ルールや水利用実態を検討し、各種機能を取捨選択して必要十分なシステムを設計することが望まれる。

5.残された問題とその対応
1) 仁木FPに設置した水管理システムは、一般の商用電源の使用を前提として考えられている。他地区への応用の際にも、可能な限り同様の電源手当がなされることが望まれる。
2) 商用電源を用いることができない場合の安価な電源確保方法は、今後に残された課題である。