成績概要書(作成 平成10年1月)
課題の分類 北 海 道 農村計画 農業物理
研究課題名:水田パイプライン系での取水量変動と調整池の容量算定法
予算区分:経常
担当科:開発土研 農業開発部 土壌保全研 農業土木研
担当者:秀島好昭 中村和正 児玉正俊 大野隆 矢野真人
研究期間:平6−8

1.目 的
 水稲の遅延型冷害の回避のために、夜間や早朝の間断取水が行われている。このため、配水系にパイプラインが導入されると水需要の特定時間帯への集中が顕著になり、時間的な水配分の不均等や水源水量の不足を生じることがある。そこで、水田パイプラインでの流量変動の実態を調査し、配水系パイプラインの上流端に調整池を設置する場合の必要容量の算定例と、水利施設計画で活用できるパイプラインへの取水量モデルを示した。

2.方 法
 上川管内北部の剣和幹線用水路(図1)において、支線パイプラインに携帯用超音波流量計を設置し、30分あるいは60分間隔の流量測定値を解析した。

3.結果の概要
(1)移植後〜出穂前にかけて、圃場での水需要が早朝に極端に集中する(図2)。午前4:30〜6:00頃の短時間に流量は急増し、管の通水能力の上限に達する。
(2)移植後〜出穂前にかけての水需要変動を調整池で緩和する場合の必要容量は図3の考え方で求められる。調査地区での計算結果では必要調整容量は配水系パイプラインの規模が小さいほど大きい(図4)。またこの地区のパイプラインの施設構成では、50〜100ha規模の配水系パイプラインに対して、普通期用水量の6〜7時間分程度の調整容量が必要であると考えられる。
(3)移植後〜出穂前の期間で水需要の大きかった日の流量は、午前4:30頃から急増し、管の通水能力にほぼ等しい値が一定時間続いたあと、数時間をかけて減少している。このような流量変動をみると、多くの圃場で早朝に一斉に取水が始められ、需要を満たした圃場から順に止水していることが推察される。他の地区でも、給水栓の開閉が農家の水まわりによる場合には、図2と同様の水需要が生じると考えられる。図2から整理した配水系管路の取水量モデルが図5である。取水量減少に要する時間は、配水系の動水勾配等で固有に決まると考えられるが、このモデルでは図2をもとに4時間とした。このモデルは、パイプラインを含む水路系で、水管理や施設計画を図上シミュレーションや数理シミュレーションで検討する場合、支線分水量条件の設定に活用できる。

4.成果の活用面と留意点
(1) 図5のモデルは、配水系にパイプラインを含む水利施設での施設計画や送配水管理方法を、図上シミュレーションや数理シミュレーションで検討する場合、各管路への分水量条件の設定に利用することができる。
(2) 他の地区で調整池容量の検討や取水量モデルの作製をする場合、そこでの消費水量を把握し、計画に反映することが望ましい。

5.残された問題とその対応
水需要集中への水管理上の対応方法としては、ここで述べた調整容量の増強とともに、自動・半自動給水栓による集中の緩和が考えられる。今後、各種給水栓の情報収集を行う。