新品種候補(2006年1月作成)
作物>夏畑作物>11>1−2−083−1
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育種事業課題名:だいず新品種候補「十育241号」の概要
担当研究室:十勝農業試験場 作物研究部 大豆科
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キーワード:ダイズ、やや早、高イソフラボン、低温抵抗性、低温着色抵抗性、豆乳、味噌
1.特性一覧表
系統名:だいず十育241号  組合せ:十系793号/十系817号
特性 長所 1.イソフラボン含量が「トヨコマチ」より1.5倍程度高い。
        2.低温抵抗性が強である。
        3.豆乳、味噌、煮豆、納豆に適する。
    短所 1.裂莢性が易である
        2.わい化病抵抗性が弱である。
採用県と普及見込み面積:北海道 150ha
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特性表

障害抵抗性、コンバイン収穫特性および加工適性(十勝農試:平成15〜17年)

 注1) 調査場所のⅠ〜Ⅳは「道産豆類地帯別栽培指針(平成6年3月農政部)」による地帯区分を、( )は支庁名を示す。
 注2) 粗蛋白および遊離型全糖含有率は近赤外分析法による測定値(乾物当たり%、窒素蛋白質換算係数は6.25)。

 

2.だいず「十育241号」の特記すべき特徴
 「十育241号」は、「トヨコマチ」並の熟期の白目中粒系統である。イソフラボン含量は「トヨコマチ」より1.5倍程度高い。低温抵抗性が強く、臍周辺着色抵抗性が強いため外観品質に優れる。遊離型全糖が「トヨコマチ」よりやや低いため、甘み、こくが劣る傾向にある。加工適性は豆乳、味噌、煮豆、納豆に適する。

3.北海道で優良品種に採用しようとする理由
 健康志向の高まりのなかで、大豆の機能性成分、とりわけ骨粗鬆症改善、更年期障害緩和、ガン予防などに効果があるとされるイソフラボンが注目されており、豆乳など飲料を中心とした加工食品分野などで大豆の消費が伸びている。大豆のイソフラボン含量は、品種間で明らかに差があるが、登熟期間の気温も影響し冷涼であるほど高いとされ、北海道は気象条件において有利であり、一般に道産大豆は高イソフラボンと認識されている。府県においては、高イソフラボン品種として平成14年に福島県で奨励品種に採用された「ふくいぶき」が順調に普及しつつあり、加工業者の関心は高い。
「十育241号」は、「トヨコマチ」並のやや早の熟期の白目中粒系統で、収量性も同品種並である。イソフラボン含量は、「トヨコマチ」の1.5倍程度で、北海道優良品種のなかで最も高含量の「音更大袖」並から高い。低温抵抗性は強で「トヨコマチ」のやや強より強く、低温による臍・臍周辺着色粒の発生が少ないため、収量、外観品質が安定している。最下着莢節位高は「トヨコマチ」並であるが、裂莢しやすいためコンバイン収穫適性は同品種よりやや劣る。粗蛋白含有率、粗脂肪含有率は「トヨコマチ」並で、全糖および遊離型全糖含有率は同品種よりやや低い。加工適性は、豆乳、味噌、煮豆、納豆については総じて適、豆腐は可との評価である。豆乳等飲料や味噌の加工業者からは、高イソフラボンを活かした商品の原料として、品種化を要望されている。

これらのことから、高イソフラボン大豆「十育241号」を北海道の登熟期間が冷涼であることも活かして、地域特産品種として普及することにより、道産大豆の高付加価値化に寄与することが期待される。

4.普及見込み地帯
北海道の大豆栽培地帯区分Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの地域およびこれに準ずる地帯。

5.栽培上の注意
 1)主茎長が長く倒伏することがあり、密植しても増収効果が低いため標準密度で栽培する。
 2)「トヨコマチ」より裂莢しやすく収穫適期が短いため、茎水分低下後は速やかに収穫する。
 3)葉色が「トヨコマチ」より淡いが、品種の特性であるため慣行の肥培管理で良い。
 4)ダイズわい化病抵抗性は“弱”なので、適切な防除に努める。
 5)ダイズシストセンチュウ・レース1発生圃場への作付けは避ける。