成績概要書(2006年1月作成)

1.課題の分類
2.場所名 北海道立 花・野菜技術センター  北海道立中央農業試験場
3.系統名 花ゆり新品種候補「Li−26」
(花ユリの新品種育成試験)(道産ブランド花き品種の育成)

 

4.来歴および育成経過
 北海道立中央農業試験場で平成10年にクリーム色のアジアティック系品種「アラスカ」を種子親とし、花蕾が小さい場内保有系統95AA69-3を花粉親として交配・育成された。この交配組合せは通常の交配では種子の獲得が困難であることから、花柱切断受粉法による交配と胚珠-胚培養技術を用いて雑種を獲得した。5花に交配し、肥大が認められた4個の子房から胚珠を摘出して培養したところ262個が発芽した。それらのうち、正常に生育し鉢上げに至った246個体を圃場に定植し個体調査を実施した。平成12年に花色・花形や草姿に優れた6個体を一次選抜し、北海道立 花・野菜技術センターにおいて球根の増殖を行った。球根の生産性が高かった3系統のうち1系統を、平成15年から「Li−26」の系統名を付して生産力検定試験を実施した。生産力検定試験圃場において求評会を実施し、外部評価を受けた。

5.特性の概要(標準品種「モナ」 比較品種「きたきらり」)
 特徴:鮮やかな黄金色で斑点の少ない良花色小輪系統。小球根でも花蕾数が多く、一年球を切花生産に利用できる。
 (1) 生育特性
  ①早晩性:冷凍貯蔵球を用いた5月定植栽培での採花までの日数(在圃日数)は約53日であり、「モナ」より6日、「きたきらり」より4日短い。
  ②草姿等:草丈は「モナ」より短いが「きたきらり」より長く、実用的に十分な切花長を有する。
 (2) 切花特性
  ①花容:花弁色は「きたきらり」の鮮橙色に対して、鮮黄橙色で「モナ」より濃い。斑点は「モナ」より多く「きたきらり」より少ない。花形はいずれもスカシユリ型であるが、花弁の反りが「モ
   ナ」や「きたきらり」よりやや大きい。花径は「モナ」より明らかに小さく、「きたきらり」よりわずかに大きい。花粉は赤褐色で香りはない。
  ②花房:花蕾数は「モナ」や「きたきらり」より多く、球周8-10cm未満の球根で約4.0個、同10-12cm未満で約6.0個、同12-14cm未満では約8.5個である。
   花房の形は「きたきらり」と同様の総状で、花の向きは垂直方向に対して約25度である。
  ③茎葉:茎径は「モナ」と同程度で「きたきらり」より太く、十分な硬さを有する。葉形は被針形で「きたきらり」と同型である。
  ④日持ち性:「モナ」よりわずかに短いが、実用的に十分な日持ち性を有する(成績省略)。
 (3) 切花栽培に適する球根の大きさ
  小球開花性が高いため、花蕾数3,4個程度の規格の切花栽培には球周8-10cm未満、同5,6個程度には同10-12cm未満の球根が適し、より花蕾数の多い規格の栽培や高温となる
  作期では同12-14cm未満を使用する。
 (4) 増殖性
  増殖性は「モナ」とほぼ同程度で「きたきらり」よりやや低い。りん片挿しではりん片1枚から約1.3個の子球を形成し、一年球の約3割が球周8cm以上となり切花栽培用に利用できる。
  二年球はほぼ全てが球周8cm以上となり、2芽など多芽球の発生も認められない。

6.求評会における評価
 生産力検定試験圃場での求評会において、外部のゆり関係者ら(生産・市場・小売り・種苗 販売・農協・市町村農業センター等)にアンケートによる評価や意見を聴取したところ、花色 と小輪性についての評価が特に高く、室内における花色評価も良かった。総合評価としても半数以上の回答者から「良い」または品種化を要望する回答が得られ、生産を希望する参加者もいた。そのほか、汎用性が高い良い色で商材として使いやすいなど品種として普及を期待する意見もあげられ、実用品種として高い評価が得られた。

7.試験成績概要

8.普及対象地域および普及見込み面積
 普及対象地域:全道一円(施設栽培)    普及見込み面積:0.4 ha

9.配布しうる種苗量
  養成球:1300 球             組織培養球:40 球

10.栽培上の留意点
 (1) 凍結貯蔵球利用5月定植作型での成績であり、長期抑制および促成作型は未検討である。
 (2) 球周12cm以上の球根は花蕾数がやや多くなるので、作期や市場性を考慮して使用する。
 (3) 防除管理等はアジアティック系品種に準じて行う。