成績概要書(2006年1月作成)
1.課題の分類 2.場所名 北海道立 花・野菜技術センター 北海道立中央農業試験場 3.系統名 花ゆり新品種候補「Li−30」 (花ユリの新品種育成試験)(道産ブランド花き品種の育成) |
4.来歴および育成経過
北海道立中央農業試験場で平成10年に濃赤色のアジアティック系品種「紅胡蝶」を種子親とし、花蕾が小さい場内保有系統95AA69-3を花粉親として交配・育成された。この交配組合せは通常の交配では種子の獲得が困難であることから、花柱切断受粉法による交配と胚珠-胚培養技術を用いて雑種を獲得した。5花に交配し、肥大が認められた5個の子房から胚珠を摘出して培養したところ218個が発芽した。それらのうち、正常に生育し鉢上げに至った202個体を圃場に定植し個体調査を実施した。平成12年に花色・花形や草姿に優れた1個体を一次選抜し、北海道立 花・野菜技術センターにおいて球根の増殖を行った。球根の生産性が高かったことから、平成15年から「Li−30」の系統名を付して生産力検定試験を実施した。生産力検定試験圃場において求評会を実施し、外部評価を受けた。
5.特性の概要(標準品種「モナ」 比較品種「きたきらり」)
特性:淡い黄色で花弁先部が濃い桃色となる2色咲きで斑点のほとんどない小輪系統。小球根でも花蕾数が多く、一年球を切花生産に利用できる。
(1) 生育特性
①早晩性:冷凍貯蔵球を用いた5月定植栽培での採花までの日数(在圃日数)は約56日であり、「モナ」より3日短く「きたきらり」と同程度である。
②草姿等:草丈は「モナ」と同程度で「きたきらり」より長く、実用的に十分な切花長を有する。
(2) 切花特性
①花容:花弁色は「きたきらり」の鮮橙色や「モナ」の明緑黄色に対して、浅〜淡黄色(花弁基部・中肋・縁部)と黄桃色(花弁先端部)の2色咲きである。また、開花後徐々に色調が変化
し、縁部から先端部にかけては桃色が濃くなる傾向が認められる。花弁の斑点は「モナ」と同程度で「きたきらり」より明らかに少ない。花形はいずれもスカシユリ型である。
花径は「モナ」より明らかに小さく「きたきらり」と同程度である。花粉色は赤褐色で香りはない。
②花房:花蕾数は「モナ」や「きたきらり」より明らかに多く、球周8-10cm未満の球根で約6.2個、同10-12cm未満で約9.7個、同12-14cm未満では約12.7個と小球開花性が高い。
花房の形は「きたきらり」と同様の総状で、花の向きは垂直方向に対して約20度である。
③茎葉:茎径は「モナ」と同程度で「きたきらり」より太く、十分な硬さを有する。葉形は被針形で「きたきらり」と同型である。
④日持ち性:「モナ」と同程度であり、実用的に十分な日持ち性を有する。(成績省略)
(3) 切花栽培に適する球根の大きさ
小球開花性が高いため、花蕾数5,6個程度の規格の切花栽培では球周8-10cm未満の球根が適し、より花蕾数の多い規格の栽培や高温となる作期では同10-12cm未満を使用す
る。
(4) 増殖性
増殖性は「モナ」よりやや高く「きたきらり」よりやや低い。りん片挿しではりん片1枚から約1.5個の子球を形成し、一年球の約3割を切花栽培用に利用できる。二年球の肥大性は「モ
ナ」と同程度で「きたきらり」より低かった。
6.求評会における評価
生産力検定試験圃場での求評会において、外部のゆり関係者ら(生産・市場・小売り・種苗 販売・農協・市町村農業センター等)にアンケートによる評価や意見を聴取したところ、評価
はやや分かれたが、花色についての関心が非常に高く、個性的で最近の消費傾向にも適し、花色が変化するなど有望な特徴を持つ系統であることが評価された。
普及を期待する意見や生産を強く希望する参加者もいたことなど、実用品種として十分な評価が得られた。
7.試験成績概要
図1「Li-30」の草姿と花形
図2 色調の変化が認められる「Li-30」の花房
8.普及対象地域および普及見込み面積
普及対象地域:全道一円(施設栽培) 普及見込み面積:0.4 ha
9.配布しうる種苗量
養成球:1000 球 組織培養球:20 球
10.栽培上の留意点
(1) 凍結貯蔵球利用5月定植作型での成績であり、長期抑制および促成作型は未検討である。
(2) 小球開花性が高いため、切花栽培では球周8-10cm未満の球根を使用し、高温となる作期や市場の要望によっては同10-12cm未満を使用する。
(3) 防除管理等はアジアティック系品種に準じて行う。