成績概要書 (2006年1月作成)

1.課題の分類

分類番号

 

整理番号

 

2.場所名  北海道立中央農業試験場

3.系統名  花ゆり新品種候補「細育4号」    (道産ブランド花き品種の育成) 

 

4.育成経過
  ロンギフローラムハイブリッドの有する小球開花性と大輪性、アジアティックハイブリッドの有する多様な花色を兼ね備えた切花あるいは鉢物向き品種の育成を育種目標とし、平成9年、中央農業試験場において場内保有個体94LA191-16 (シンテッポウユリ品種「ホワイトランサー」×アジアティック系品種「クレテ」)を種子親に、「クレテ」を花粉親として花柱切断受粉法により戻し交配し、胚珠-胚培養法により得られた雑種6個体より選抜、育成した。平成10年、培養苗のポットへ鉢上げ時に「97LA108-1」の個体番号を付し、平成11年に初開花、平成12年に一次選抜し、平成13年より球根の増殖を開始するとともに特性の安定性を確認した。平成15年に二次選抜し、平成16年および平成17年の2ヵ年間、「細育4号」の系統名を付して特性調査を実施した。また、求評会を開催し、外部による評価を得た。

5.特性の概要(標準品種「ファンギオ」、比較品種「クレテ」)
 長所:花は鮮赤紫色、中輪でややカップ咲きの切花向きの系統で、少数の斑点を有するが目立たない。一年養成球における肥大性および花蕾数の揃いが良好で、一年養成球を切花
    栽培に利用できる。
 短所:


 1)形態的特性
   草丈および茎長は「ファンギオ」よりかなり短い。葉長および葉幅は「ファンギオ」並である。葉数は「ファンギオ」よりやや少ない。花序は「ファンギオ」が散形花序であるのに対して総状
  花序である。
 2)生態的特性
  萌芽期は「ファンギオ」よりやや遅い。開花始は「ファンギオ」よりやや遅く、開花の早晩性は「ファンギオ」と同じ早である。葉枯病の発生は見られない。
 3)花に関する特性
  花弁表面の色は鮮赤紫色で少数の斑点を有するが目立たない。花の形はややすぼんだスカシユリ型で、着生角度は斜上向き、花径は「ファンギオ」より小さい中輪である。
  花蕾数は「ファンギオ」よりやや少ない。柱頭の色は白〜灰で「ファンギオ」の紫赤と異なる。
 4)増殖性および球根肥大性
  りん片挿しによる子球形成数は1りん片当たり2.0個で「ファンギオ」(1.6個)と同程度である。一年養成球の平均球重は24.5gで「ファンギオ」(23.0g)より重く、10gを超える割合は98.6%で
  「ファンギオ」(79.1%)より高い。一年養成球の翌年摘蕾時の花蕾数は4.2個で、「ファンギオ」(4.8個) よりやや少ないが、4〜5輪の占める割合が75.6%で輪数の揃いが良く、一年養成球を
  切花栽培に利用できる。二年養成球の平均球周は17.7cm、平均球重は60.7gで「ファンギオ」(18.6cm、73.5g)よりやや劣る。
  二年球での多芽球割合が86.7%と高く、「ファンギオ」(71.1%)よりもやや多い。

6.求評会における評価
 平成16年および17年の二ヵ年間、特性調査圃場において求評会を開催し、外部の参加者(生産者、流通・小売、種苗販売、地域農業センター、農協、ゆり育種家等)からのアンケートによる本系統に対する評価を得た。本系統の鮮赤紫色、カップ咲きの特性が比較的高い評価を受け、総合評価において「非常に良い」と「良い」を合計した割合は、平成16年65.2%、平成17年42.9%であった。


7.試験成績概要

8.普及対象地域および普及見込み面積
 
普及対象地域:北海道   普及見込み面積:0.5ha

9.配布しうる種苗量
 
組織培養球:3,000球  養成球:40球

10.栽培上の留意点
 
1)秋植え、無加温ビニールハウス栽培での成績であり、抑制栽培および促成栽培での調査は行っていない。