成績概要書(作成 2007年1月
研究課題:春まき小麦新品種候補「北見春67号」 (道央以南の転換畑地帯における春まき小麦品種育成) (道央以南向け高品質春まき小麦の開発促進) (障害耐性に優れる道央以南向け高品質春まき小麦の選抜強化) 担当部署:北見農試・作物研究部・麦類科 中央農試・作物研究部・畑作科 予算区分:道比、指定試験 研究期間:1994〜2006年度(平成6〜18年度) |
1. 特性一覧表
系統名 小麦「北見春67号」 組合せ C9304/Katepwa//春のあけぼの
特性 長所 1. 穂発芽性が“難”である。
2. デオキシニバレノール汚染が少ない。
3. 多収で、千粒重が大きい。
4. 製パン性が優れる。
短所 1. 粗蛋白含量がやや少ない。
2. 成熟期がやや遅い。
2. 「北見春67号」の特記すべき特徴
穂発芽性は、「ハルユタカ」、「春よ恋」より明らかに優れる。赤かび病発生時のDON濃度が「ハルユタカ」「春よ恋」より低い。千粒重は「ハルユタカ」、「春よ恋」より大きい。収量性は「ハルユタカ」より優り、「春よ恋」並かやや優る。製パン性は「ハルユタカ」より優れ、既存の北海道産パン用小麦と同様に使用できる。
3. 優良品種に採用しようとする理由
北海道における春まき小麦の作付面積は1995年には9,000ha以上あったが、穂発芽や赤かび病の発生により生産量が安定しないことから作付が敬遠され、1999年には5,000haを下回った。穂発芽や赤かび病など雨害の発生は1995年から2002年の8年間に渡って続き、反収が100kgを下回る極めて低収の年もあった。この間、2000年には「春よ恋」が育成され、また、初冬まきによる前進栽培により「ハルユタカ」が一定規模栽培されるなど、品種や栽培技術により生産の安定化が図られてきた。また、国産パン用小麦に対する需要の高まりもあって、作付面積は近年増加傾向にある。しかしながら、春まき小麦の生産では、常に穂発芽や赤かび病の多発、およびこれらを含む規格外率の高さなどの不安定要因が大きな問題となる。穂発芽については、収穫期の天候に比較的恵まれた2003年以降も常に規格外の要因としてあがっている。赤かび病については、2002年に赤かび病菌の産生するかび毒の一種であるデオキシニバレノール(DON)について暫定基準値(1.1ppm)が定められ、これを超える生産物の流通ができなくなった。このため、DON汚染に対する危惧から春まき小麦の生産を見合わせている地区もある。また、登熟期が高温に推移する地域では、細麦が発生しやすく、粒厚選別時の歩留の低下や落等につながっている。これらのことから、春まき小麦の安定生産には、穂発芽耐性に優れ、子実のDON汚染が少なく、千粒重が大きく粒厚の厚い品種が重要な役割を果たす。
「北見春67号」は、「ハルユタカ」、「春よ恋」に比べ穂発芽耐性が明らかに優れ、赤かび病発生時の子実中のDON濃度が低い。千粒重が大きく、粒厚が厚いため、2.4mm篩上の整粒歩合が高い。収量性は「ハルユタカ」より多収で「春よ恋」並かやや優る。製パン性は「ハルユタカ」より優れ、既存の北海道産パン用小麦と同様に使用できる。原粒蛋白質含量が「ハルユタカ」、「春よ恋」よりやや少ないが、開花期以降の葉面散布(2%尿素 1001/10a)などの追肥技術により「春よ恋」並に高めることが可能である。また、初冬まき栽培も可能である。
以上により、「北見春67号」を、「ハルユタカ」と、一部の「春よ恋」に置き換えるとともに、穂発芽やDON汚染、あるいは細麦の発生により春まき小麦の生産性が不安定な地域に普及することにより、需要の高まっている北海道産春まき小麦の生産性の向上と安定化が図られる。
4. 普及見込み地帯 北海道 春まき小麦栽培地帯
5. 栽培上の注意
1)粗蛋白質含量がやや少ないため、開花期以降の尿素葉面散布を基本とする。
2)赤かび病発生時のDON汚染は少ないが、赤かび病抵抗性は“中”であるため、適切な防除に努める。