農業研究本部

ゆり・ねぎのジャガイモクロバネキノコバエ

 平成4年から15年にかけて、道央以南の各地において食用ゆりの鱗茎を加害するクロバネキノコバエが発生し、これは同定の結果ジャガイモクロバネキノコバエPnyxia scabiei (Hopkins)であることが判明した。発生場所・時期は以下の通りである:恵庭市(平成4年11月、平成15年11月)、北檜山町(平成13年10月)、真狩村(平成15年10月)。

いずれの事例についても、ゆりの鱗片の出根部周辺や鱗片表面が黒変・陥没し、被害部には白色センチュウ状で黒色の頭殻をもつ幼虫が認められた(写真上)。幼虫や蛹の形状は、ゆりから既報告のチビクロバネキノコバエとよく似ている。被害鱗茎を放置すると、幼虫は被害部表面に糸を張る。成虫は体長約1.5mm、雌成虫は無翅で、雄成虫の翅は短く尾端に達しない(写真下)。いずれも飛翔せずに地表面をすばしこく歩き回る。北檜山町での発生事例では、被害は水はけのよい高台では少なく、転換畑や粘土質で排水不良ぎみの圃場で多い傾向があった。

平成15年11月には、長沼町の中央農試内ほ場で収穫したねぎの葉鞘部に、本種幼虫による被害が認められた。茎盤より約10cm上方の葉鞘側部に、径1mm程度の孔が開き、内部には幼虫と淡褐色の喰い屑が見られた。調整後の葉鞘は侵入孔を中心に径1cm程度褐変していた。

(防除所予察課)