農業研究本部

多量要素の欠乏症状

リン欠乏

症状の特徴

1)生育初期のリン欠乏は初め下位葉の葉先側より黄化症状を現すが、株は全体的に窒素欠乏症に比べて緑色を保つ。この症状は葉先から葉身基部へと進行し、暗褐色の壊死斑へと変化し、焼けたように枯死する(写真5)。この症状は次第に中位葉へと進行する。

2)発症初期の中下位葉には葉身基部側の葉脈に暗紫色〜紫紅色を帯びた症状も現れる(写真6)。

3)生育初期からのリン欠乏では窒素欠乏と同様に新葉は小型化し、節間は短く、生育は抑制される。さらに、雄穂は抽出するが、雌穂の抽出は不全となる。同様に、生育中期以降の欠乏でも雌穂が抽出しない場合がある。

4)生育中期以降のリン欠乏では下位葉の葉先縁から白色化し、それは葉身の内側にも進行する(写真7)。さらに症状が進むと、その部分は帯状に枯死する(写真8)。

5)リン欠乏には次の3つの特徴がある。①葉が小さくなり、草丈や分げつが抑えられ、下位葉から黄化症状を生じるが、窒素欠乏とは異なりすぐにその葉は枯死する。②葉色は光沢の少ない濃緑色になり、紫色様の色素が葉脈中心に観察される。③子実の成熟が遅延し、欠乏がひどいと全くの不稔となる。スイートコーンの場合はこれら全ての症状が混在するタイプである。

発生しやすい条件

1)一般にリンを固定しやすい火山性土壌や水田転換畑圃場では、作物に吸収されやすいリンが少ないことから、リン欠乏の発生頻度が高い。

2)リン吸収が抑制される低温時に起こり易い。

3)土壌pHが極めて低い酸性化した土壌で発生する。

リン欠乏の症状(画像をクリックすると拡大されます 原図16〜26KB)


葉先が焼けたように枯死(下位葉)

写真5 下位葉の葉先より淡緑化し、暗褐色の壊死斑を発現する。
順次中位葉へ進行する。(4葉期−P6.5週目)



葉脈基部の暗紫色化(中下位葉)

写真6 中下位葉の葉身基部側の葉脈が暗紫色〜暗紅色化する。
(4葉期 −P3週目)



葉先縁から内側への白色化(下位葉)

写真7 下位葉の葉先緑から白色化する。
(9葉期 −P1.5週目)



葉身の帯状枯死(下位葉)

写真8 やがて下位葉の葉身は帯状に枯死する。
(9葉期 −P4週目)

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