農業研究本部

微量要素の欠乏症状

銅欠乏

症状の特徴

1)生育初期の銅欠乏は新葉の葉先が小さく切り裂けた症状を現す(写真39)。やがて、下位葉の葉鞘部には亀裂が観察される(写真40)。

2)中下位葉の葉脈間には不規則な赤褐色斑点が現れ(写真41)、亜鉛欠乏を誘発する。

3)生育中期以降の銅欠乏では、新葉の奇形が僅かに見られるが、生長に伴い緩和される。また、中下位葉には生育初期の欠乏と同様に赤褐色斑点が現れる。

4)さらに欠乏が続くと、中下位葉にはリンの過剰供給で誘発されたカリウム欠乏症(写真31)に類似した葉先縁枯れ症状が現れ、葉中のリン濃度の上昇とカリウム濃度の低下が起きる(写真42)。ただし、銅欠乏の場合には葉身の濃緑色を呈していた部分に照りが見られない。

5)銅欠乏の雌穂は穂長が短く、中央部が太く、穂柄側がやや細くなると共に、著しい先端不稔や一部に裂粒の発生が見られる場合がある(写真43)。

発生しやすい条件

1)以前に小麦の銅欠乏が発生した圃場では、発生する可能性がある。

2)銅含量が少ない土壌。とりわけ、腐植に富む砂壌土地帯および酸性腐植質の黒ボク土(火山性土)地帯では発生することがある。

銅欠乏の症状(画像をクリックすると拡大されます 原図11~39KB)


淡緑化と葉先の裂け(上位葉)
写真39 上位葉は淡緑化し、新葉の葉先がやや切り裂ける。
(4葉期 −Cu3週目)



葉鞘部の亀裂(下位葉)
写真40 下位葉の葉鞘部に亀裂を生じる。(4葉期 −Cu6.5週目)



不規則な赤褐色斑(中下位葉)
写真41 中下位葉の葉脈間に不規則な赤褐色斑点が発現する。
(亜鉛濃度が低下する)。(4葉期 −Cu6.5週目)



葉先縁枯れ(中下位葉)
写真42 中下位葉に発現した葉先縁枯れ症状
(リン濃度が上昇しカリウム濃度が低下する)。
(9葉期 −Cu4週目)



短穂と著しい先端不稔
写真43 穂長が短く、中央部が太く、穂柄側がやや細い。
著しい先端不稔や一部に裂粒が観察される。
(9葉期 −Cu6.5週目)

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